渡航前の医療
海外の病院を利用する前に知っておきたい事
赴任地で心配なのは、現地の医療機関をちゃんと利用できるかどうかです。
居住する地域の医療機関を調べる時は、予約が必ず必要か、いつでも受診できるか、どれぐらいの症状に対して利用するものか、といったところも確認が必要です。
ここでは、海外の医療機関を利用するための注意点を紹介します。
この記事で書かれていること
まさかの時に備えた海外に発つ前の心得
出発前だからこそ、赴任先での万が一のことは考えておくべきです。
だからといって不慮の事故やケガを100%回避することは不可能ですが、必要な準備を怠ったことで起こる障害は少しでも防ぐに越したことがありません。
そのためには海外へ発つ前に下記の準備をしておくことをお勧めします。
出発前の準備
- 荷物がなくなったり、飛行機が遅れたりしても大丈夫なように、常用している薬があれば必ず余分に携行しましょう
- 現地の医療事情について事前に調べましょう。宿泊先に近い病院はどこか、また救急の場合の搬送サービスがあるかどうかなども大切です
- 海外旅行保険は出国前に必ず加入してください。ほとんどの海外旅行保険はいったん出たら、適用されません。搬送費用も適用されるかどうかの確認も忘れずに
- 自分に必要と思われる医療情報(診断書など)を持参してください。また主治医には事前にどこにどれくらいの期間行くのかを知らせておきましょう
- 自分の血液型を知っていますか?必要な場合、医療従事者やその他関係者におしえなければなりません
一般的なクリニックと救急について確認を
日本では、急に発熱したときや骨折などですぐ治療が必要な時は、かかりつけ医や専門外来に直接行き予約なしで受診できる場合が殆どですが、赴任地ではどのようなシステムになっているか確認しましょう。
特に欧米では、かかりつけ医などの一般的な診療所でも予約制が主流です。
そのため、急な発熱や怪我の場合は、ER(大病院の救急)を利用します。
日本で救急というと、心筋梗塞や脳卒中など一刻を争う事態をイメージしますが、それ以外の症状でもすぐに治療を受けたい場合にはERを利用する、ということになります。
この違いを把握していないと、例えば「ちょっとした発熱だから」と思ってかかりつけ医を予約したものの、予約が数日先になりその間に症状が悪化する、ということもありえます。
赴任地では、どのような医療機関をどれぐらいのスピードで受診できるか確認しておきましょう。
なお、Walk-in Clinicと呼ばれる予約なしで受けることができる診療所もカナダなどで増えつつありますので、合わせて赴任地の事情を確認しましょう。
旅行用英文診断書を作成しておく
英文診断書は必ず出発前に用意しておきましょう。
万が一、赴任中で救急搬送されたときに、自分自身の既往症やアレルギーの有無などを医師に伝えられないと適切な判断が困難となり、治療ができないあるいは対応が進まず手遅れになってしまう、という可能性もあります。
英文診断書を持っていると、こういった場合にも的確に医師に自分の健康状態を伝え、治療をしてもらうことができます。
英文診断書は主治医に作成を依頼しましょう。
既往歴、服薬や治療の経過を簡潔にまとめて作成します。
また持病がない場合にも作成しましょう。
持病がない、ということは重要な情報となります。
救急の対応
自国から遠くはなれた地で何かが起ったら、どうしたらよいかわからずパニックに陥ってしまうかもしれませんが、先ずは冷静になることが重要です。
もし事故に遭っても、自分でできる状態なら、救急対応してくれる人に何が起ったのか、どうしてほしいのかを落ち着いて説明しましょう。
重篤な病気の場合でも、医療関係者が何を聞きたいのかを把握できるよう落ち着いて対処することです。
以下は緊急対応のポイントです。
緊急対応のポイント
- 速やかに保険会社担当者にコンタクトし、状況を説明しましょう
- 地球のどこにいるかによりますが、自分が受けている治療のクオリティや内容を詳らかに説明するようにしましょう
- 急な病気やケガをした時は、遠慮なく他人に助けを求めてください。病院に連れて行ってくれたり、世話をしてくれる人はとても大切な存在です
- 容態が悪化したり、今受けている医療が十分でないと思ったら、赴任先の責任者や人事担当へ相談し、場合によっては日本への医療搬送をしてもらうよう要請しましょう
- 外国の病院では保険に加入していない(無保険)だと受入れを拒否されることもあります。無保険の場合、受入れ時に手術費用、入院費用など高額のデポジットを請求されることが多いので、保険には必ず加入してから渡航しましょう
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ERシステムを上手に利用する
骨折や発熱など命には関わらないもののすぐ治療したい怪我も、心筋梗塞など一刻も早く治療を受けなければならない症状も、いずれもER(救急)で対応している国もあります。
この場合、赴任中にERを利用する可能制は十分ありますので現地のERシステムを調べておきましょう。
ERに行くときは、自分自身で動けない場合は救急車を利用し、自分で動けるあるいは家族がいる場合は自家用車やタクシー、徒歩で行くことも可能です。
到着したら、まず最初に「トリアージ」がおこなわれます。
これは患者の症状を分類し、救急性の高いものから診断できるよう順序を決めるものです。
国によって色の分け方などに多少の違いがあります。
これによって心筋梗塞などはすぐに治療を開始し、骨折などすぐに命に関わらないものは順次治療を待ちます。
自分の症状を的確に伝えられないと、適切なタイミングで治療を受けられません。
そのためにも、英文診断書など自分の健康状態を示すことができる書類は常に持っておくようにしましょう。
赴任先で日本語が分かる病院を調べる
緊急の場合には、日本語にこだわらず専門の治療が受けられる病院に行く必要がありますが、日頃の健康診断や健康に関する相談にはやはり日本語のわかる病院や相談機関があると安心です。
監修
バムルンラード・インターナショナル病院
田村優子 様
オンライン医療相談
オンライン医療相談とは自宅などからPCやスマホアプリを利用して、日本人医師と顔を見ながら相談できるサービスです。海外生活において不安の大きい健康をサポートしてくれる心強い存在です。
人に話しにくいメンタルに関する相談を自宅などから人目を気にせず日本人医師に相談ができたり、現地の病院で治療を受けた際の医療レベルに不安を感じたり、手術や高額な医療費がかかる場合などに海外経験の豊富な医師のアドバイスを受けたりできます。
オンライン医療相談は、駐在員だけでなく帯同する家族の医療や健康の相談も可能な場合もありますので、気になるときは早めに相談して重症化リストを回避するなど活用していきましょう。
邦人医療支援のサービス・団体
JAMSNET
JAMSNETはニューヨーク周辺の医療系邦人支援グループ同士の情報交換、相互連携の構築を目的として設立されたネットワークです。現在では医療団体のほかに、教育団体・福祉団体など様々な団体が参加しています。海外在留邦人の皆さまの心と体の健康をサポートします。
体調不良を外国語で伝える症状翻訳アプリ”Dr.Passport”
「Dr.Passport」は、母国語で症状、既往、体質などを入力し、外国語に翻訳表示する、症状伝達に特化した翻訳アプリです。
身体部位別の症例を選び、2,000以上の症状と発症状況・経過・程度・想定される原因、が表現可能です。症状のほか、個人データとして身長、体重、血液型、既往歴、アレルギー、予防接種暦、常用薬種などを保存し、症状と併せて問診表レベルの情報を翻訳表示することが出来ます。通信が出来ない施設内や、通信費の高額な海外地域でもご利用いただけるよう、オフラインで動作します。主言語を外国語に設定し、外国人の方にもご利用いただけます。
本冊子をご覧の方に、期間限定でお試しいただける試用IDを差し上げます。dpinfo@mais.co.jpまでご連絡ください。
対応言語 | 日本語、英語、中国語簡体字、韓国語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、タイ語、インドネシア語、ロシア語、ベトナム語、マレー語に対応します。日本語、英語を標準とし、その他の言語は追加購入いただけます。 | |
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利用シーン | 医療機関のみならず、薬局で薬を購入するとき、宿泊施設でフロントに体調不良を伝えて対応を依頼したいときなど、様々なシーンでご利用いただけます。 | |
製品バリエーション | 個人の方が購入いただく「パーソナル版」海外赴任や出張するスタッフ、国内の外国人スタッフに提供するなど、法人契約でご利用いただく「コーポレート版」をご用意しています。 | |
価格 | パーソナル版 840円(日本語・英語)他の言語追加購入 240円/1言語 コーポレート版 ご契約によって異なります。詳しくはお問い合わせください。 |
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企業・団体名 | 株式会社 マイス |
海外で病院にかかった体験談
- 子どもが自転車でころんで頭をうった。外傷はないけど心配なので現地の救急へ。/シンガポール
- 小学1年生の子どもが自転車でころんで頭をうってしまって。
外傷はないものの、やはり心配なので、最寄りの現地病院の救急へ行きました。
いつもは少し遠い日系のクリニックに通っていましたが、夕方なので、混んでいればすぐ診てもらえないし、何より遠い。
やっぱりすぐ診てもらうのが大事と思い、救急に行きました。
結局、そのまま入院。翌日、検査でも問題なかったので退院しました。
食事が、マレー系、中華系、とか3種類程度から選べたんですが、どれも辛すぎたりして、子どもが食べられなくて。食事を自分で用意して持っていきましたね。
ほかにも、子どもがドアに指を挟んで、つめが割れたこともありました。
この時は、まだ日系のクリニックが開いている時間だったので、そちらに行きました。
子どもはやっぱり、急な病気や怪我が多いので、数カ所病院は知っておくと安心です。
海外で病院にかかる為のまとめ
①一般的なクリニックと救急(ER)の利用方法に注目を。どの症状で、どちらを使うか、日本の感覚とは違う場合があります
②英文診断書は必ず用意を。自分の健康状態を伝えなければ治療を受けられない場合があります
③日本語の通じる医療機関も知っておきましょう。ただし、救急の場合は言語にこだわらず急いで専門病院へ
④海外旅行傷害保険、その他の保険には渡航前に必ず加入してください。またクレジットカード付帯保険の場合、事前に適用限度額も把握しておくことをお勧めします