海外赴任の準備
キャリアブレイクは「ブランク」ではない~駐在同行期間を「前向きな再構築期間」として捉えるには~
共働き世帯が年々増加している今の時代。夫婦どちらかの海外赴任が決まり、家族で渡航することになった時、多くのパートナーが直面するのが「自分の仕事をどうするか」という問いです。渡航する国やビザの種類によるとはいえ、現地での就労は決して簡単なことではなく、会社を辞める、休職する、という選択を迫られる方が多いのではないでしょうか。
その選択に伴い「これまで積み上げてきたものが無駄になるのではないか」「履歴書に空白ができてしまうのではないか」という不安を抱く方も少なくありません。新しい場所で、必死になって家族のサポートに徹し、新生活が落ち着いてきた頃にふと「今、働けていない」と後ろめたく感じ、漠然とした焦燥感にさいなまれる方もいるかと思います。
こうした不安や焦りがぬぐえない背景として、パートナーの駐在に同行するにあたって、駐在同行によって退職もしくは休職し、キャリアが中断したことを、“ブランク”と捉えている方が多いことが考えられます。しかし、本当にそうなのでしょうか。
駐在員パートナーのキャリア支援を行う非営利団体、Career Cafe Connect(以下CCC)スタッフであり、元人事担当でパートナーの駐在に同行中の浅野藤子が、そもそものキャリアの考え方、駐在同行期間に得られる力について、お話します。
公開日:2026年2月26日
この記事で書かれていること
1.キャリアは「直線」ではなく「曲線」
日本ではいまだに、学校を卒業し、就職し、同じ会社や業界で経験を積み上げていく「直線型」のキャリア観が根強いと考えられます。そのため、一度そのレールを外れると「遅れてしまった」「取り戻さなければならない」という感覚になりがちです。一方で、欧米など海外に目を向けると、キャリアを「曲線」や「螺旋(らせん)」として捉える考え方が広がっていることがわかります。
時には立ち止まり、方向転換したり、別の分野を経験したりしながら、その人なりの軌跡を描いていく、という考え方です。そしてもう一つ大切なのは、実際に直面しているその時には点にしか見えなかった経験も、後から振り返ると、未来としっかりとつながっているということです。「この期間はブランクだった」と感じていた時間が、後になってから「実はここで身につけた力が、次の仕事に活きていた」と気づく。キャリアは、そうやって後から意味づけされていくものでもあります。

実際に、私たちが出会った駐在員パートナーの中には、こんな方がいます。
駐在同行期間中に日本語教師のボランティアを始め、帰国後に日本語教育に関わる仕事に就いた方。現地で日本人向けのコミュニティ運営に携わった経験が評価され、人材育成や研修企画の担当になった方。また、海外での生活や子育ての経験をブログで発信したことがきっかけで、ライターとして活動を始めた方もいます。
さらに、外務省のデータなどによると、海外に暮らす日本人は129万8170人(2025年10月1日時点)で、日本人人口の約1%にすぎません。つまり、海外で暮らすという経験そのものが、すでに希少で貴重なキャリア資産なのです。
渡航前には見えなくても、駐在同行をめぐって悩んだことも含め、全ての経験は必ず自分の中に蓄積され、どこかで次の選択につながっていきます。この視点に立つと、駐在同行によるキャリアブレイクは「空白」ではなく、次のキャリアにつながる準備期間、再構築期間と捉えることができるのではないでしょうか。
2.海外生活で身に付く力=多くの企業で求められる「ポータブルスキル」
駐在同行期間中、仕事をしていない場合でも、実際には多くのスキルが培われているものです。例えば、
・言語や文化の異なる環境で生活していく適応力
・情報が限られた中で調べ、判断し、行動する力
・家族の生活や子どもの教育環境を整え、支えていく調整力、マネジメント力
・多様なバックグラウンドを持つ人とのコミュニケーション力
これらはどれも、多くの企業や組織で求められる「ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)」です。ただし問題は、本人がそれをスキルだと認識していない場合が多い、という点です。自分の得意なことは、呼吸でもするように自然に行っていて、それが自分の強みだとは気づいていなかった。そんな声を聞くこともあります。
「たいしたことはしていない」
「専業主婦(主夫)だっただけ」
そう感じてしまう方も多いですが、海外生活という特殊な環境においては、それは誰にでも簡単にできることではありません。
3.小さな「試してみる」が未来をつくる
そうはいっても、渡航前の段階で、完璧なキャリアプランを描く必要はありません。むしろ大切なのは、「現地で何ができるか」を柔軟に探ってみる姿勢でいることです。

例えば
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・語学学習に力を入れてみる
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・ボランティアやコミュニティ活動に参加してみる
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・オンライン講座を受けてみる
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・ブログやSNSで発信してみる
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・これまでの経験を言語化してみる
こうした小さな一歩は、今すぐに何かの結果につながるものではなくても構いません。「やってみた」という事実そのものが、自己理解を深め、将来の選択肢を増やしてくれるはずです。
4.キャリアを「積むもの」から「編むもの」へ
これからの時代、キャリアは勤続年数や肩書だけで評価されるものではなくなっていきます。経験してきたことの組み合わせや、そこから何を学び、どう活かしているかが問われます。つまり、積み上げていくだけではなく、自分自身で編み広げ、様々な形へ変化させていくことができるものなのです。
駐在同行という経験は、決してブランクではありません。むしろ、自分の人生や働き方を見つめ直し、自分なりの軸を育てる貴重な時間です。渡航前の今だからこそ、ぜひ知っておいてください。キャリアブレイクはブランクではありません。それは、あなた自身のキャリアを見つめ直し、未来のために再構築する、大切なプロセスなのです。
私たちCCCは、駐在員パートナーが「何者かにならなければ」と焦るのではなく、「今の経験も、未来につながっている」と感じられるような、小さな一歩を踏み出せる環境づくりを行っています。もし、「一人で考えるのは不安」「同じ立場の人の話を聞いてみたい」と思ったら、CCC公式サイトで詳細をご確認ください。
▶Career Cafe Connectとは
駐在員パートナーのキャリア支援を目的とした非営利組織。駐在員パートナー個人の皆さまへ、再就労に役立つセミナーやキャリアに役立つ情報の提供、コミュニティ運営を行い、「納得感のあるキャリア選択」をサポートしています。開催したイベントの延べ参加人数は3,000人以上。(2018年~2026年1月)中国、アメリカ、シンガポール、メキシコ、日本に在住する約55名の駐在員パートナー経験者が中心となり運営しています。
Career Cafe Connect 公式サイト: https://careercafe-sha.themedia.jp/
◆運営・企画 Career Cafe Connect
◆編集・ライティング 浅野 藤子、畑 史
◆監修 一般社団法人キャリアコネクト
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|---|---|---|
| 入学試験なし | 入学試験や書類選考はありません。高等教育水準の日本語能力があれば証明書は不要で国籍も不問です。教養学部と大学院の両方に出願することも可能です(ただし、入学料はそれぞれ必要です)。 | |
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| 企業・団体名 | 放送大学 | |
ユーザーの声
- 「南極で学ぶ」という大胆な発想に惹かれ、受講してみようと思いました。ブリザードや天候が悪く外に出られない日などに時間を見つけて、学びを積み重ねたいです。(南極地域観測隊員)
- 海外にいながら日本語で大学の授業が受けられるのは、本当に価値のあることだと思います。勉学を通して成長できるという点で、放送大学での学びは私にとって心の支えでもありました。(自営業・マレーシア)

