海外赴任の準備

海外赴任心得十ヵ条(よりよい海外生活を願って…)

海外生活を考える会「COSMOS」海外生活アドバイザーによる、妻の目線・母の目線から考える赴任へ向けた心得をまとめております。

第一条 さあ大変!どうする?という前に

海外旅行ではつまらない、とLONGSTAYを求める人も増えています。
旅行もLONG STAYも自ら望んで行くものですから、思わぬ困難や我慢できない事に出会い「もういやだ!」と思えば、さっさとその場を去れるのですからコトはカンタン!

しかし望んでもいないのに、考えたこともないのに、あるいはいつかそんなときがくると分かっていたとしても、いざ「外国に住め」といわれたら「やったー」というより戸惑いの方が先行することでしょう。
「主人だけ行けばどうかしら」 「何で他の人でなく私たちなの?」と思ったりするかもしれません。

そんなときこう考えてみたらどうでしょう。
日本から海外には、およそ75万人の人が170余カ国に散らばって生活しています。
大変な数ですが日本の人口から見れば、まだまだ少数派。

そこで「私たちは海外で色々な体験ができる選ばれた家族なのだ」と考え、私たちの海外体験で得たものを点から線に、そして流れにしていけば、日本はすばらしい国に成長することでしょう。
私たちはその役割の一端を担うのです。

第二条 日本は最高?それが落とし穴

アメリカでよく言われるのが「日本人は他の国の人に比べて何年アメリカに住んでも日本人だ」ということです。
「そうですか?まあ日本はそれだけいい国なのですよ」とニッコリして答えますか?
現地で生活を仮住まいと考え、何でも日本と比較しながら、日本人社会の中だけで過ごしていればそう答えて当然。

でもちょっとスタンスを変えて現地に積極的にかかわり、何人かの親しい友人ができるようになると、自然に日本を見る目は客観的なものに変わってゆきます。
そしてその目で日本を見ると我が祖国は、日本という大家族が皆、ぬるま湯につかっているかのように見えます。

女性たちは、家が狭い、人が多すぎる、物価が高いと文句を言いながらも家計をしっかり握り、開き直りとはいえ「亭主は元気で留守がいい」とけっこう、毎日を楽しくやっています。
そんな日本は世界でも珍しい国なのだと気付くかもしれません。

「本当に日本はこれでいいの?日本は最高なの?」と疑問を持つようになる頃、私たちは大きく成長し、同時に現地の良さがしっかり見えてくるのだと思います。

第三条 緊張はあなたのパートナー

一足先に赴任する夫を送り出すと、いっそう緊張は高まります。
でも本当の緊張は飛行場を飛び立った瞬間からともいえます。

このときから自分が外国人といわれる立場になることなど考えもしないで「乗員も乗客も外国人ばかり……子供が泣いたり騒いだりしてとなりの外人さんに迷惑をかけたらどうしょう……」
やっと現地に到着してみれば何だか変なニオイ、文字も言葉も方向も何が何だかわからない!迎えに来てくれた夫も別人のよう……。

日本を飛び立ったときからすべてが緊張の上に成り立っている。
それが私たち日本人にとっての海外生活なのです。
であれば、緊張感を追い払う努力をするよりうまく付き合っていく努力をする方が余程賢明といえます。
この緊張感と自分とのバランスを上手にとることこそ、海外生活の基本となります。

第四条 トンネルの向こうに青空が……

私たちが海外生活を始めてまずくぐるのはトンネルだと思います。
長いトンネル?すぐ抜ける短いトンネル?それは人によって違うのは当然ですが、どんなトンネルであってもその中にいる間は何も見えないから不安が募ります。

でもトンネルは必ず抜けるからトンネルなのです。
そしてこのトンネルをくぐるからこそ、異文化の中で周りを理解しながら自分を見失うことなく生きる力が生まれるといえます。

私は二年余りもこのトンネルの中でウロウロしましたが、どんなにもがいてもこの寒いニューヨークで今日も明日も、ずっとやってゆくしかないのだ!とはっきり認識したとき、トンネルを抜け出たようです。
できるだけ短いトンネルをうまく抜けるためには、私たちの体験、実感から考えて次のようなルートをたどることをしっかり頭に入れておいてください。

着任期

疲れと不安の中にも物珍しさと期待感で大人も子供も元気、時には興奮状態になることも……いわばカラ元気でポキンと折れやすい状態ともいえます。

不満期

周りの状況が一応把握でき、落着きを取り戻した頃に始まります。
意識しないまま、あれもこれも日本と比較しては不満が募ります。
身体的にもドット疲れがでる頃で悪くするとそのまま不適応となって残念ながら任期途中で帰国ということにもなりかねません。

この時期は「トンネルだから必ず抜けられる!」 ことを思い出し自分を責めたりしないことです。

諦観期

不満で爆発しそうになる一方で「まあ日本ではないからしょうがない」という気持ちも生まれ、積極的に何かをするまでには至らないながらも日々のことはなんとかこなします。
今はトンネルのどのあたりかな?と考えるゆとりも生まれる頃です。
何でも話せる友人が1人でもいれば大きな支えになります。
しばらくは時の流れに身を任せて……と考えてください。

適応期

あんなにいやだった雪かき、夏の芝刈り、秋の落ち葉掃除等もトンネルを抜けてみれば楽しい自然との、そして近所の人たちとの触れ合いの場に変身!
もう逃げることなく周りの動きや自分への働きかけを素直に受け入れ自然に力がわいてきます。
色々なことに興味を持ち、今までの自分が信じられないくらい積極的になるかもしれません。
どんな場合もあまりムリをせず自然体でいられる人ほど、トンネルは短いようです。

望郷期

海外生活も3年を過ぎる頃から日本のことが気になり始めます。
現地の生活も軌道にのり、それなりに楽しいけれど、日本語があやしくなってきた子供のことが心配……夫は本社の動きが不安……両親は……etc.

長期の滞在になる場合、やせ我慢しないで必要と思うときに、自費ででも一時帰国して望郷の思いは、発散!バランスキープの妙薬です。

第五条 NOがいえれば一人前

自分はYES MANだと思っている人はあまりいないでしょうけれど、はっきりNOといえる日本人は、少ないようです。
日本でなら、まぁまぁといいながら何となく事は納まってしまうのですが、海外では、YES、NOを明確にしないと様々なトラブルが生じます。

YES、NOをはっきりいう国の人には、失礼になるのでは?傷つけるのでは?などと考えず、むしろいうのがエチケット。
言葉が全くできなくても言葉が続かなくても相手の目をしっかり見て、NO!といえばいいのです。

どうして?と聞かれたら、I DON’T LIKE ITだけでもポイントは充分に伝わります。

第六条 親は子のお荷物に

海外生活も長くなり、現地校に通う子供たちが現地の言葉を自由にあやつるようになれば、親の方が子供に色々聞いたり、教わったりするようになるのはよくあること。
中にはそんな子供に頼りきってしまい、自分にとって面倒な現地との関わりは極力避け、もっぱら日本人グループの中だけで楽しい日々を過ごしている親たちも……。

その場合現地で成長しごく自然に現地を受け入れ、理解している子供たちと、表面的なことだけ分かっているつもりの親との間のギャップが思いがけない形で出てくるかもしれません。
たくましく自分の道を生きていこうとする子供たちに「どうしたの?どういうことなの?こんなはずではなかった」といいながら追いすがる親たち……。

そんなことにならないためにも親は子供の成長に合わせて一回りも、二回りも大きくならないとバランスがとれません。

第七条 女性の実力発揮のチャンス!

海外にあって、女性、特に主婦はいつも輝く太陽であってほしい……でないと誰に頼ることもできない、自分たちの足で立つしかない超核家族になる日々を乗り越えることはできません。

海外生活のよさの一つは、日本では感じられない心身ともに開放されている自分を時間とともに実感することです。
その実感をバネにやってみたいと思うことは、思いきってやってみることです。
そのうちに的が絞られ、目的に向かって賢明に努力している自分を発見し、自分にこんな力があったのかと驚くかもしれません。
充実した日々によってあなたは輝き、すべての意味で海外生活が実りあるものとなるはずです。

第八条 気楽にパーティー、パーティー!!

海外ではパーティーという言葉はあまり使われません。
ランチにどうぞ、ディナーはいかが?など、活字に出てくるのはENTERTAINING、つまりおもてなしです。

私は、日本でも昔からやってきた“楽しいお集まり”と解釈しています。
私が自宅でやっているホームパーティー講座も、日本語でいえば家でのお集まり講座でお金をかけず身近なものを活用していかに楽しむかがモットーです。

海外では家に招くのは最高のおもてなしとされます。
フォーマルなテーブルで豪華なご馳走であっても、ささやかなお茶とクッキーであっても「心を許した友人であるか、友人になりたい」という気持ちがベースだからです。

大切な自分の場所に好意を持たない人をわざわざゲストとして招く物好きはいません。
であれば招かれたら行くことです。

多くのことを学んだら、世界が大きく広がるきっかけになります。
そして招く方だけでなく招かれた方も楽しい集まりにするための責任があり、お互いのさりげない努力があることを学んだら適当なときにお招び返しをします。

現地を知り理解する一番良い方法で、私たち女性の実力発揮の最高の舞台です。

第九条 思いやりは世界の共通語

世界のどの国でも無言で通じるのは思いやり、やさしさ、笑顔だと思います。

自分がしてもらってうれしいことはまず誰にしてあげてもよろこばれるでしょう。
文化も習慣も関わらない基本的なこと、人間、物そして自然にも通じる、思いやり、やさしさ、これは立派な世界の共通語です。

そうそうもう一つ立派な共通語となるものが日本にはあります。
折り紙です!

第十条 日本こそ異国

「さぁ、やっと日本へ帰ってきた!あっちも悪くないけどやはりこっちがいい!」と即、大好きなぬるま湯にスッポリ……という人はそれでよしてとして「でも、あの熱めのシャワーで手早く心身ともシャキッとさせ緊張の中で生きていた自分は充実していた」と思う人にとって、日本は少々異国……。

そして日本をほとんど知らない子供たちにとっては少々どころか全くの異国であって当然です。
海外に出たとき、子供たちが何とかその地に根付くよう私たちは細心のケアーをします。
帰国のときもそれと同じ、いいえそれ以上のケアーをしてください。
子供たちが将来また世界に向かって大きく羽ばたけるように願って……。

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