赴任先での生活や文化
アメリカ帯同で働けない?働かない?帯同期間中のキャリアと過ごし方
アメリカに帯同して最初に戸惑うことの一つが、「自分は働けるのか?」という現実です。
ビザの種類によってはすぐに働けなかったり、就労許可の取得に時間がかかったりするだけでなく、配偶者の勤務先の規定によって帯同者の就労が制限されるケースもあります。
日本にいたときのように「働くのが当たり前」という前提が崩れ、周囲を見るとあえて仕事を持たない選択をしている人もいます。
「働けない」と「働かない」が混在する環境の中で、自分はどうするのか。本記事では、アメリカ帯同ならではのキャリアの選択肢について整理していきます。
公開日:2026年6月15日
この記事で書かれていること
ビザや会社規定に左右される就労可否の現実
アメリカ帯同において、キャリアを考える上で避けて通れないのが、ビザや各種制度の問題です。
配偶者ビザの種類によっては就労が認められていなかったり、労働許可証(EAD)の取得に数ヶ月以上かかることもあります。また、配偶者の勤務先の規定によって、帯同者の就労が制限されるケースもあります。
日本でも制度や家庭の状況によって働き方が左右されることはありますが、日本で生活している場合は「働くかどうか」を自分の意思で選べる余地が比較的大きいと感じる方も多いかもしれません。
一方でアメリカ帯同では、ビザや会社規定によって働くこと自体が制限されることもあり、その前提の違いに戸惑いや不安を感じる人も少なくありません。こうした状況から、「キャリアが止まってしまった」と感じる方もいます。
ただし、この状況は個人の能力とは切り離して考える必要があります。まずは制度としての制約を理解し、「今はそういうフェーズにいる」と受け止めること。その上で、今できることに目を向けることが、次の一歩につながります。
多様な価値観の中で「働かない」選択を考える
アメリカで生活していると、「働いていないこと」に対する空気感が日本と異なると感じる場面があります。
専業主婦(夫)として家庭を支える人や、一度キャリアを離れて学び直しや自己投資に時間を使う人など、多様なライフスタイルが当たり前に存在しています。
そのため、「仕事をしているかどうか」だけで人の価値が決まるわけではないという考え方に触れる機会も増えます。
こうした環境の中では、働ける状況にあっても、あえて仕事をしないという選択も現実的なものになります。
特に帯同直後は、生活の立ち上げや子育て、言語や文化への適応など、見えない負荷が大きい時期です。このタイミングで無理に仕事を探すのではなく、生活基盤を整えることを優先するのも合理的な判断です。
「働かない期間」をネガティブに捉えるのではなく、人生の中の一つの選択として位置づけることが重要です。
アメリカだから広がる柔軟なキャリアの可能性
一方で、アメリカという環境は、従来の働き方にとらわれない選択肢を広げてくれる側面もあります。オンラインでの学習環境は充実しており、専門スキルの習得や資格取得に取り組みやすい点は大きな特徴です。
また、日本とつながりながらリモートで仕事をしたり、個人で小さなビジネスを始めたりといった選択肢を検討する人もいます。
実際に、私が運営に関わっている非営利団体Hub Parkでも、ボランティアとして私たちの活動に関わったり、プログラムに参加したりしながら、アメリカの大学院に進学したり、フリーランスとして仕事を始めたり、英語学習に力を入れたり、趣味を深めたりと、それぞれのペースで新しい一歩を踏み出している方々が多くいらっしゃいます。
ただし、こうした選択肢を考える際には、ビザの種類によって収益を伴う活動が制限される場合がある点にも注意が必要です。実際に何かを始める際には、自身の就労可否をあらかじめ確認しておくことが大切です。
その上で、ボランティアやコミュニティ活動、学び直しなど、今の環境で無理なく取り組めることに目を向けることで、帯同期間を将来につながる時間として活かすことができます。
帰国後を見据えて今からできる準備とは
アメリカ帯同が決まった段階で、「帰国後にまた働きたい」と考えている方は、日本に帰国した後にどのような働き方をしたいのか、現時点での仮の方向性として整理してみましょう。正社員として再就職したいのか、フリーランスや副業に挑戦したいのか、あるいはしばらく働かない選択をするのかによって、帯同期間中に意識したいことも変わってきます。
とはいえ、この時点で決めたことは、あくまでも「今の自分の考え」です。アメリカでの生活を通じて価値観が変わったり、新たな興味や可能性に出会ったりすることもあります。実際に、現地での経験をきっかけに、当初とは異なる働き方を選ぶ方も少なくありません。
そのため、渡米前に必要なのは「絶対にこの道に進む」と決めることではなく、「今の自分はどのような方向に関心があるのか」を把握しておくことです。これまでの職務経験や強みを棚卸しし、どのようなスキルや経験を積みたいかを考えておくことで、アメリカでの時間をより目的意識を持って過ごしやすくなります。
帯同期間は、将来の選択肢を狭める時間ではなく、むしろ広げていくための準備期間と捉えることができるでしょう。
アメリカ帯同中の「働けない」「働かない」という状況は、ビザ制度だけでなく、配偶者の勤務先の規定や家庭の状況など、さまざまな要因のもとで多くの人が直面する現実です。
一方でアメリカでは、キャリアのあり方や時間の使い方に多様な価値観があり、日本とは違う視点に触れる機会でもあります。
帯同期間をどのように過ごすかに、決まった正解はありません。途中で考え方や価値観が変わることも自然なことです。大切なのは、「今の自分はどうしたいのか」をその都度見つめながら、自分なりのペースで選択していくことなのかもしれません。
– 寄稿 –
上野真衣子
アメリカの非営利団体Hub Park共同設立者。海外にルーツを持つ人々や駐在帯同者を含む、海外で暮らす人々のキャリアや生き方をテーマに、プログラム運営や情報発信に携わる。米国・日本での人事経験やキャリア支援の経験をもとに、個々の状況に応じたキャリアの考え方について発信している。
【公式サイト】https://hubpark.org/
【Instagram】https://www.instagram.com/hubpark_washingtondc/
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