海外滞在中の子供の教育
子どもを伸ばす「親力アップ法」
この記事で書かれていること
Question
アメリカでバレエを習っている中学生です。将来はプロのバレエダンサーを目指しています。
数年以内の日本帰国が決まっており、怪我などで夢が叶わなかった場合には、日本の大学に進学することも考えています。高校選びでは、どんな選択肢があるでしょうか?
Answer
バレエと学業の両立
バレエは大好きだけれど、将来バレエ団に入団できる確証は無いし、ひょっとすると怪我で踊れなくなってしまうのではないか――。
このように、スポーツの世界で本気でプロを目指す青少年の皆さんは、将来に対する不安が尽きないと思います。そこで今回は、「バレエ」を例に、「スポーツでプロを目指すことと、学業(高校)の両立」について取り上げます。万が一のケースを想定した学校の選び方や学習方法を知ることで、ゆとりをもって練習に打ち込むことができるはずです。
さて、アメリカでバレエを学ぶ場合、アメリカは日本と異なり高校までが義務教育ですので、バレエに専念していても高校の授業は必ず受けなければなりません。少数ながら高校を併設しているバレエ学校もありますが、多くの場合、現地校に通って帰宅後にレッスンを受けるか、バレエ学校に通いながら高校は通信課程で学ぶことが多いようです。
そしていずれのケースも、レッスン時間の増加やコンクールへの参加などで、バレエと高校との両立は相当ハード。そのため、英語の習熟度が相当高くないと両立はかなり難しいと言わざるを得ません。
一方、日本に帰国してから、日本のバレエ学校で学ぶ場合も、プロのダンサーを目指すのなら相当量の練習が必要で、帰宅が深夜になることも多々あります。コンクールなどに参加するため、学校を休まなければならないこともあるでしょう。そのため、通学時間や、欠席について学校側の理解を得られるか、予め調べておくことが賢明です。
Advice
高校中退のリスク
それでは日本帰国後、高校との両立が無理なら、「中退」という選択肢もあるのでは?――、以前は、高校を中退してバレエだけに専念する日本人もいたようですが、昨今の状況を鑑みても、私はこれについてはおすすめしません。なぜなら、将来海外での活躍を考えた場合、「高校卒業資格取得」はビザの審査に影響するからです。
そして近年は、欧米のビザの審査自体が大変厳しくなっているのが現状です。特にアメリカのように「高校までは義務教育」という国では、バレエ団のオーディションに合格していても、アメリカで仕事をするためのビザが下りないなどのリスクがあるのです。
事実、世界的に有名なバレエ団から入団許可をもらいながら、高校を卒業していなかったためにビザが下りず渡航出来なかった、というケースもあるようです。
一例として、通信制のアメリカンハイスクールである当校在学中に、アメリカの最高峰といわれるバレエ団から入団オファーをもらった生徒への入団条件は、「ビザを取得すること」でした。そのため当校では、同バレエ団の指示によって、詳細な経歴ファイルブックを英文で作成し、英文推薦レターを何通も添えて提出し、無事にビザの取得が許可されました。
ご相談者様は現在アメリカにお住まいとのことですが、日本へ帰国後、再び海外でバレエを学ぶことになっても「通信課程」であれば途切れなく学習を続けることが出来ます。ここでの注意点はスクーリング(一定期間、学校へ通うこと)が義務か否か。当校を含め、スクーリングが義務ではない海外の通信高校であれば世界中どこにいても学習が可能ですが、日本の通信高校はスクーリングの義務が生じます。そのため、入学前にあらかじめチェックしておく必要があるでしょう。
バレエと睡眠
また近年は、バレエだけでなく、フィギュアスケートやテニス、サッカーなどで活躍するスポーツ生徒が高校の「通信課程」を選択する理由として、「忙しいスケジュールと学習の両立」以外に、「睡眠時間の確保」も大きな理由となっているようです。
バレエ団への入団に際しては、ダンサーに対して身体的な基準が設けられているケースがほとんどです。中高生の場合、バレエと学業の両立は肉体的にも時間的にもハードですが、成長期のこの時期に充分な睡眠時間を取って身体を休ませ、筋肉や骨をしっかりと成長させることは、バレエや学業と同じくらい大切です。
大学進学へ進路変更
さて、とはいえ、バレエダンサーを目指す方にとって、怪我のリスクは常に隣り合わせです。考えたくはありませんが、アクシデントで踊れなくなる程の大怪我をすることもあります。また、ダンサーとしての限界を感じることや、他の分野への興味や適性を見つけることもあるかもしれません。
そのため、高校を選ぶ際には、「大学の合格実績」に加え、「どのようなバックグランドの生徒がどのような入試システムで合格したのか」をしっかり確認しておくことも大切です。特に、生徒数の多い通信高校の場合は、大学合格者の割合やサポート体制などもしっかり確認しておきましょう。
大学へは、当校の「英検」や「TOEFLR」対策の学習によって得意な英語力をさらにレベルアップさせて「AO入試」で受験をすることも可能でしょう。現在、日本国内の多くの大学ではAO入試が実施されています。
このように、プロを本気で目指す場合、学業(高校)との両立は大変ですが、感受性豊かで吸収の早い高校時代は、芸術家としての素養を身につける為の大切な機会でもあります。そのため、これから高校に進学する際には、適切な情報を収集し、大学受験も視野に入れた進路の選択肢を知ることが、心理的なゆとりに繋がることでしょう。
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東京インターハイスクール
西田絵里子
2人の子どもを育てながら国際交流事業および英語翻訳業務に長年携わり、2009年より東京インターハイスクールの学習コーチ。海外名門バレエ団・バレエスクールで活躍する多くの生徒たちを指導している。芸術・バレエをこよなく愛し、バレエ留学と高校の両立を目指す生徒にマンツーマンのサポートを行っている。
東京インターハイスクール:東京都渋谷区にある通信制インターナショナル・スクール