海外滞在中の子供の教育
子どもを伸ばす「親力アップ法」
この記事で書かれていること
Question
日本語力が弱い我が子。帰国後、日本語を身につけ、日本で進学していくことができるでしょうか。
Answer
帰国後、日本語を習得できるのか
さて、帰国後に日本語力は身についていくのかどうか？ という質問ですが、答えは「Ｙｅｓ」です。海外滞在中と異なる点は、日々の生活や街中に否が応でも日本語が溢れているということです。ですので、上手に利用しつつ漢字を一から復習していくなど努力を重ねることで、日本語能力は着実に上がっていきます。
帰国後の学校においては、お子さんの語学力や性質、性格と真摯に向き合って、家族内で相談した上で、学校の先生にも相談されると良いでしょう。日本語が苦手なお子さんが無理に日本語のみの環境に置かれることは苦痛でしょうし、不登校になってしまうケースや再度転校をせざるを得なくなったケースもあります。
また、海外で育ったお子さんの中には、日本文化や日本語に関心がない、海外の方が性に合っていると感じるお子さんもいます。
言語学上では、その国の文化に興味があり、好きであることが語学力上達に直接繋がります。親御さんの意志とは一致しないかもしれませんが、日本語が十分に身につかなくても選択肢は必ずあります。お子さんの語学力、性質、性格を考慮して、慌てず無理をせず学校選びをしてください。
日本で大学進学ができるのかどうか
帰国後の学校選びをされる際に、その先の大学進学まで視野にいれる親御さんも多いと思います。「大学に入って日本語で学べるのか」、「英語圏の海外大学が良いのだろうか」、「日本の大学のうち、英語で学ぶことができる大学はあるのだろうか」など、さまざまに考えてしまうことでしょう。
昨今では、日本の大学も選択肢が広がっています。国際教養学部系、グローバル学部系、国際ビジネス系、留学生受け入れ人数の多い大学、米国大学日本校など多くの選択肢ができてきました。英語優勢の環境で教育を受けて来た帰国生も英語で学べる日本の大学が多くなってきています。
本校の卒業生たちの傾向を見ると、多くの卒業生が日本の大学に進学しています。
理由は、①日本の大学の国際学部に関心を持ったため（英語過程の増加と海外大学との交換留学の充実）、②日本人としての日本語力アップとアイデンティティの確立のため、③アジア社会とビジネスに魅力があるため、④学費が比較的安いためなど、卒業生たちは現状と自分の将来を見据えて進路を決めているようです。
そのため、まずは上記に上げた「○○系学部」等のキーワードで大学・学部を探しつつ、ご家庭で話し合ってみると良いでしょう。
「そんな先のことは分からない」と言う中高生は多いですが、その多くが選択肢を知らない無知からくるものです。是非、お子さんと一緒に考える機会を持ってください。
Advice
「Code Switching」と「Code Mixing」
親子で話しあわれる際、意見が対立することもあるでしょう。「日本人たるもの、まずは日本語がしっかりできないと」というご意見もお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
日頃、「Code Switching（文章毎に英語になったり日本語になったりする）」や「Code Mixing（一文の中で日本語と英語が混在する）」の状態で話しているお子さんを見ると、不安になってしまうかもしれません。ですが、まずは立ち止まり、お子さんが発しているその言葉がSwitchであろうがMixであろうが、その子の置かれている環境、言語を理解して、そこからご自分が「何ができるか」を考えてあげてください。
島国で生きる日本人だからこそ気になるところであって、SwitchやMixは海外では普通です。「Identity Crisis（アイデンティティの危機）」という言葉もありますが、これをお子さんのCrisis（危機）ではなく、まさに国際化への一歩と考えても良いかもしれませんCode SwitchingやCode Mixingにより、必ずしも語力が低下することはないというデータも存在します。
アメリカ滞在中からぜひ家族で話し合いを
海外赴任では急に帰国が決まったり、帰国の時期を選べなかったりと、時間と情報との戦いになりがちです。それ故に、日頃から進路や言語を意識しておくことが大切です。
お子さんの言語のことや大学のこと、好きなことや将来について話す場を常に持つことで、お子さんを「理解する」、「承認する」、「長所を伸ばす」という子育ての基本を実践してください。
急速に進むグローバリゼーションとインターネットの普及の結果、日本も含めた世界の教育事情が大きく変革しています。親自身の経験や固定観念にこだわらずに新しい情報を収集して、親子で話し合うことが、今ほど重要なときはないでしょう。
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三好陽子
成蹊大学卒業後、カナダ留学して現地の大学教育学部卒業。
帰国後、大手英会話学校や外資系企業に勤務。
2000年から東京インターハイスクールで学習コーチとして活動、主に帰国子女をサポートする。
東京インターハイスクール：東京都渋谷区にある通信制インターナショナル・スクール
