赴任先での生活
海外赴任に英語はどこまで必要? 現場で感じたリアルと乗り越え方
海外赴任や海外業務にあたり、「英語はどの程度必要なのか」と不安に感じていませんか?私も最初はとても不安でした。自分の英語がどこまで通じるのか?学生の時とは違い、仕事ですから責任もあります。そんな私がドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールと4度も海外赴任することになりました。今回は、私の実体験をもとに「英語はどこまで必要なのか」についてお伝えします。
公開日:2026年5月7日
この記事で書かれていること
英語に自信がなくても海外業務は始まる

「君は英語とドイツ語とどっちができるの?」
これは入社面接の時の質問です。私は大学でドイツ語を専攻したものの今一つで、英語も同じようなレベルでした。ただ、質問は「どっちができる?」ということでしたので、ここは希少価値を示した方がいいと思い、「ドイツ語です」と答えました。その結果、欧州部に配属されました。
海外関係の仕事に就いたものの、英語がそれほどできない私は不安がありました。ドイツ語も頼りになりません。仕事は欧州から送られてくる納期の問い合わせやオーダー処理に関する英文メールに返事をしたり、こちらから質問を投げかけたりすることでした。英国からは納期を急かす内容が多く、厳しい英語が毎日飛び交いました。
初出張で何かが剥がれ落ちた

入社2年目、出張のチャンスが訪れました。メールではいつも厳しい表現で納期を煽ってくるシルビアさんと初めて会った時、「How are you ? Thank you for your support and cooperation.」と笑顔で握手してくれました。「えっ、これがほんとうにあのシルビアさんなの?」と拍子抜けしたことを今でも覚えています。
帰国してからは、メールを読んでもシルビアさんの顔が見えるようになり、こちらもメールにジョークを入れる余裕も生まれました。不思議なことに「苦手だ」と感じていた気持が剥がれ落ちるようでした。それまでは納期遅れで怒っているのではないかと疑心暗鬼になっていましたが、相手の顔や人柄がわかると安心感が生まれ、英語の文章にも気持ちが入るようになりました。
相手が困った時こそチャンス!

こうして英語への抵抗感は少なくなりましたが、言葉よりももっと大切なことを気づく出来事がありました。
日本で勤務していた時、「来週火曜日に展示会が始まるが、カタログがない。助けてくれ!」と金曜日、強面のドイツ人マネジャーから緊急のメールが入りました。当時、カタログは日本で制作し、印刷してドイツに送っていたのです。「そりゃ、無理だ!」と叫びましたが、諦める前にやるだけやってみようと思い直し、その日のうちにカタログをかき集め、自ら梱包して何とか三千部を午後一に送りました。
月曜日の夕方、ドイツから電話が入り、「Sie sind Spitze!」(英語のYou are great!)といきなり言われました。最初は何を言っているのかわかりませんでしたが、どうやら月曜日に出社したらデスクにカタログが届いていたと言うのです。私も驚きました。そんなに早くカタログが届くとは思ってもみなかったからです。
これをきっかけに、ちょっととっつきにくかったドイツ人マネジャーからよくメールや電話が来るようになりました。「相手が困った時はとことん助けろ!」と上司に言われていたことがよくわかりました。信頼関係を築くのに言葉は要りませんでした。
実践で大切な心がけがある
入社4年目の終わりにドイツ出向の辞令が出ました。英語に対する抵抗感はなくなりましたが、英語への自信はまだまだでした。ただ、ドイツは何度も出張に行き、現地法人のドイツ人とも信頼関係が築けていましたので、不安な気持ちは相当薄らいでいました。
実際に出向して、大切だなと思ったことが二つあります。一つは、相手の英語がわからない時、わからないまま流さないことです。流してしまうと益々わからなくなります。私は、「今言ったことはこういうことか」と白板にポイントを箇条書きにして発言内容を自分の言葉で理解するように心がけました。また、ビジネスでは数字を聞き間違えると大変なことになるので、「フィフティ」と言われた時には、「ファイブゼロか」と必ず確認するようにしました。
もう一つは、自分のアイデアを常に持つことです。有力ディーラーに「どういうプロモーションすれば売れる?」と聞いた時、「自分の会社の商品をどう売ればいいかアイデアもないのか。そんなベンダーは話にならない」と言われました。そう思うのは、この失敗体験からきています。日本では上司や関係部門とのコミュニケーションの中で何となく解決策のアイデアが生まれるのですが、海外では個人個人が問われます。まして、私はマネジャーという立場でしたので、常に考え、アイデアを持つことが問われました。逆に、何かあればあいつに聞いてみようとなれば、情報もどんどん入ってきますし、信頼関係も益々強くなります。
キーワード
- 言葉がわからない時、そのまま流さない
- 自分のアイデアを常に持つ
グローバル化は言葉ではなく姿勢の問題

私は今でも「英語ができる」と胸を張れるわけではありませんが、英語でコミュニケーションがとれることを楽しく感じます。
海外で仕事を進める際、英語は必要かと問われれば、「もちろん必要です」と答えます。しかし、大切なことは、相手の考え方や価値観を尊重し、自分の意見を発信したいという気持ちではないかと思います。通訳者ではないのですから、英語が完璧である必要はありません。シンガポール人などは、「できるの、できないの?」と聞く時、「Can ? No can?」と言います。それでコミュニケーションがとれているのです。できる時は、「Can can」と犬のように吠えます。
仕事でもオンラインが進む今日、出張や出向は信頼関係を築く絶好のチャンスです。対面でコミュニケーションできる機会を大切にしたいものです。必要なのは、英語ではなく、「相手を尊重し、コミュニケーションをとろう」という姿勢だと思います。英語はあくまで手段です。相手を尊重するマインドを持ち、コミュニケーションを進めていけば、自ずと相手の顔や人柄が見えてきて、関係が深まっていきます。グローバル化は英語の問題ではなく、姿勢の問題だと私は思っています。
– 寄稿 –
仲 栄司(「国際人をめざす会」理事、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに赴任経験あり)
【国際人をめざす会】

NPO法人「国際人をめざす会」(会長:山田清實)は、世界のグローバル化が急速に進展する中、日本及び日本人のさらなる国際化を図ることを目的に平成11年8月、豊かな国際経験を有する58名の発起人によって設立され、平成13年8月には石原都知事よりNPO(特定非営利活動法人)に認証されました。
海外生活の経験豊かな元ビジネスマンや技術者などがボランティア講師となって、次代を担う小学生・中学生・高校生など若者を主たる対象に、実体験に裏打ちされたリアルな話を数多く実施しております。
会の概要は下記リンクから↓

