帰国後の子供の教育

帰国子女のための外国語保持

帰国後、赴任地で身につけた外国語は、どのようにフォローすれば良いでしょうか。
外国語保持、という言葉が示すように、一度身につけた言語を維持するには、通常の学習法とは違った視点が必要です。
家庭でできる工夫から、各種サービスの利用まで、検討しておきましょう。

帰国子女の外国語保持って重要?

帰国子女の外国語保持って重要?

帰国後、子どもの言語環境はガラリと変わり、話す英語も徐々に、海外にいた時のような流暢さが失われていきます。
もちろん、帰国後も英語教室や塾に通うことで、英語を学び続けることはできます。
しかし、日本語の勉強もあるので、かなりの負担になることを考えると「しばらくは日本語だけに集中して、またそのうち…」と迷う方もおられるのではないでしょうか。

●英語は子ども自身の大切な力

受験のため、あるいは将来的に英語で仕事をするなど、明白に赴任地で身につけた外国語をこれからも必要と考える場合は、ぜひ、帰国後も英語に触れる機会を作っていきましょう。

「一旦、英語はストップしてもいいかな…」と迷っている場合、ちょっと立ち止まって、子ども自身にとって英語がどれくらい重要なツールになっているか見つめ直してみましょう。

赴任地の生活で、子どもが英語を使って、周囲とコミュニケーションしたり、自分を表現していたならば、やはり英語は自分の一部になっています。
帰国後も、自分を表現する手段の一つとして、英語を伸ばし続けられる場所を是非、用意してあげましょう。
着任当時は、慣れない環境でも英語を学ぶべく努力を重ねてきたはず。
その上で身につけた力です。
日本語と一緒に勉強することはなかなか大変ですが、家族で一緒に学ぶ姿勢を作って、支えてあげましょう。

●専門的な情報収集も

また一度、子どもが身につけた言語は、「流暢さ」と「語彙」については、かなり早く忘れていきますが、「発音」と「聞く力」はなかなか衰えないと言われています。

以下の海外子女教育振興財団のWEBサイトで閲覧できる「お子さんの外国語保持のために」では、このような専門家による外国語保持に関するQ&Aが紹介されています。

【参考】海外子女教育振興財団

赴任者先輩はどんな外国語保持をしていた?

●本・DVDなど自宅で鑑賞

帰国時に現地で英語の本を買っておき、自宅で手軽に英語を読むことができるようにしておきます。
新しい本は通販などで購入。
また、英語の番組や映画を見ることも自宅で簡単にできる方法です。

●赴任地の友達と電話

ネットで世界中と電話ができる時代。
赴任地で仲が良かった友達と電話できると、英語を使う練習になる上、モチベーションの維持にもつながります。

●教室に通う

英語に触れる機会を日本でも定期的に作るためには、英会話教室などの利用が便利。
現地校に長く通っていて、話すことにだいぶ慣れているならば、マンツーマン英会話が自分のペースで話すことができます。

また帰国子女の外国語保持を目的とした専門の教室もあり、年齢相応の英語力をネイティブの先生と学んでいくことができるので、効果的です。

●読む・書く・聞く・話すのバランス

映画鑑賞や英語教室など、英語に触れる機会を作ることは各家庭で工夫しています。
しかし難しいのは、読む・書く・聞く・話すのバランスをうまくとりながら学習すること。
また、読む本や鑑賞するDVDの英語レベルが、子どもにとって適切かどうか、なかなかご家庭では判断ができません。

バランスをとるための工夫として、赴任地の友達や、同じく帰国子女の友達とおしゃべりなどを通して、こんな本を読んだ、こんな映画があった、とお互いに会話することが挙げられます。
良い刺激になれば「次は、ちょっと難しい本を読んでみよう」と子ども自身でチャレンジしていくことができます。

その点、外国語保持を目的とした教室や教育サービスは、子どもの年齢や英語レベルに合わせて、授業を展開してくれますし、一緒に勉強する子どもたちとも切磋琢磨できる環境があることがメリットです。

外国語保持教室とはどんなところ?

帰国子女向けの英語教室、外国語保持教室、インターナショナルスクールの英語教室など、帰国子女の外国語保持を目的とした教育を行う各種教室があります。

●雰囲気は「現地校」

レベルや教育スタイルは各教室で異なりますが、基本的には、ネイティブの先生が現地校と近しいスタイルで授業を進めていくのが特徴です。
言うなれば、補習校の英語版、のイメージです。
読む・書く・聞く・話すをバランス良く伸ばし、子ども自身の知能の発達に合わせたテーマや、表現の伸長を目指します。
学年が上がればディベートや論文など、相手に自分の意見をうまく伝えるためにはどう表現するか、といったテーマにも取り組みます。

●いわゆる「塾」の英語と何が違う?

目的に大きな違いがあります。
塾で学ぶ英語は、受験合格を目的としています。
そのため、語彙・文法・読解など各分野で志望校の出題スタイルに合わせてトレーニングします。
あまりコミュニケーションを目的とした学習はありません。

一方、外国語保持教育では、学校の「国語」の授業のように英語を学習します。
英語を用いて自分の考えを述べたり、思考する力を身につけていく事が目的です。
そのため、読む・書く・聞く・話すの4技能についてバランスよくトレーニングします。

外国語保持教室に入る資格は?

●年齢?渡航歴?受験のような条件は?

帰国生枠試験などでは、帰国後●年以内・現地滞在●年以上…といった条件が課されます。
一方、英語保持教室は、滞在年数・帰国後年数に制限がないものの、試験に合格した場合のみ入れる、あるいはレベルチェックテストによって受けられるレッスンが定まります。

●申し込み時期は?

通年で募集されています。
試験が必要な教室では、まず試験日程が公開されていますので、申し込みましょう。
その他、体験レッスンを随時受け付けているところもあります。

帰国子女のための外国語保持Q&A

英語以外にもありますか?
フランス語の外国語保持教室が海外子女教育振興財団で実施されています。
外国語保持教室は時間が合わないので、マンツーマンのオンライン英会話を利用しようと考えています。
マンツーマンの英会話の場合、「話す・聞く」が中心になります。
ご家庭で本を読んだり、あるいは赴任地の友人に手紙を書くなど、「読み・書き」について家庭でフォローしてあげましょう。
インターの幼稚園に通っていました。帰国後の英語教育について迷っています。
小学校に入る前の段階は、母国語をしっかり身につける時期です。
英語の前に、母国語としての日本語はどのくらい身についているか、冷静に見つめましょう。
現地では同年齢の日本人の子どもが少なく、どれぐらいのコミュニケーションが適切なレベルかが判断しにくいです。
帰国後に一度、専門教育機関やボランティア窓口に相談しましょう。
複数の言語を学習したものの、母国語が年齢相応に身につかない状態をダブルリミテッド、あるいはセミンリンガルと言います。幼児期は、特に気をつけて言葉の学習環境を判断しましょう。

帰国子女のための外国語保持まとめ

①子どもの外国語力を見つめ直し、家庭でフォローしてあげましょう。
②本を読む、DVDを見るなど、家庭でできる工夫があります。
③通常の英会話教室とは違う外国語保持教室。特徴をよく捉えて教室選びを。
④試験やレベルチェックは必要。

※取材協力:海外子女教育振興財団
HP:http://www.joes.or.jp/kojin/hoji

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