赴任に必要な手続・届出
海外赴任時の公的手続きはどうする?社会保険のチェックリストなどもご紹介
自分や家族の海外赴任が決まったときに、公的手続きなどがどうなるのか不安に感じる方は多いでしょう。海外赴任の際は、さまざまな住民登録・保険制度・納税・免許など公的制度の変更手続きが必要です。今回は、住民票や健康保険・厚生年金などの保険制度、退職した妻の雇用保険がどうなるのか解説していきます。役所での手続き方法や注意点などもまとめていますので、海外赴任や海外移住の予定がある方は準備の参考にしてください。
この記事で書かれていること
海外赴任時の国外転出届に関する手続き一覧
1年以上日本を離れ、海外に居住する場合、市区町村に国外転出届を提出します。これにより転出証明書が発行され、住民登録が抹消されます(住民票の除票)。
受付は出発の2週間前から可能です。手続きに必要な書類は市区町村に必ず確認してください。また住民票の除票に伴い、以下にも注意しましょう。
印鑑証明書|取得できなくなる
住民登録とともに印鑑登録が抹消され、印鑑証明書は取得できなくなります。車の名義変更など急に必要になる場合もあるので、抹消前に取得することも考えおきましょう。有効期限は、印鑑証明を請求する側が定めるので注意が必要です。
また、渡航後なら代替となる署名証明が在外公館で取得できます。
選挙権|在外選挙人名簿への登録が必要
国外転出届を提出すると、4ヶ月後に国内の選挙人名簿から抹消されます。海外から投票するには在外選挙人名簿に登録する必要があり、国外転出届と同時に登録申請ができます。出国前に申請しなかった場合は、渡航後に現地の在外公館にて登録申請を行いましょう。
マイナンバーカード|返納が必要
マイナンバーは国外に転出しても変わりませんが、マイナンバーカードは返納します。国外転出届と一緒に提出し、返納の旨が記された状態で返却してもらいます。これは、本帰国して新たに発給を受ける際に必要なので大切に保管しましょう。
海外赴任時の公的保険制度・社会保険に関する手続き一覧
国外転出届を提出して海外居住となっても、企業で加入している社会保険の被保険者資格は、海外赴任中の雇用関係によって継続の可否が判断されます。基準となるのは、給与の支払い元や金額、その割合などです。人事担当者に確認しておきましょう。
また、資格を喪失する場合には個人での手続きが必要です。海外居住者となるため、限定される部分もあるので、詳細に確認しましょう。(表①)
健康保険|加入できない場合がある
海外居住者は、国民健康保険に加入できません。組合健保は、企業との雇用関係の継続により被保険者資格があれば継続可能です。
厚生年金/国民年金|思っていた受給額がもらえない可能性も
厚生年金は被保険者資格が継続する限り、海外赴任中も継続できます。国民年金は海外居住者の場合、強制加入被保険者ではなくなります。継続加入したい場合は、市区町村で任意加入手続きをしましょう。
年金保険料は国内の親族が代理で支払う、または国内口座からの引き落としを選びます。なお、海外赴任中に国民年金に加入しない場合、その期間は受給資格期間の合算対象になりますが、受給額には反映されません。
介護保険|適用されない
海外居住者は適用除外です。保険料の支払いについては「介護保険適用除外等該当・非該当届」を提出することで、免除されます。
帯同に伴い妻が退職した場合の雇用保険|受給期間を延長できる
配偶者が帯同に伴い退職する場合、雇用保険受給期間の延長を申請できます。制度上、離職後30日を過ぎてから4年以内に申請します。
ただし、申請が遅くなると受給期間に影響する可能性があるので、赴任前に手続きしましょう。必要書類は、海外赴任命令書、海外渡航を証明できるものなどです。申請する場所によって異なる場合があるので、事前に管轄ハローワークに確認してください。
お役立ちコラム~社会保障協定~
海外で就労する場合、基本的にはその国の社会保障制度に加入しなければなりません。この場合、2カ国分の保険料を負担することになります。ただし「社会保障協定」を結んだ国で就労する場合には、どちらか一方の国の社会保険制度に加入することで、一方は免除可能です。詳細な制度や手続きは各国共通のもの・それぞれ個別に定められたものがあるので確認しましょう。以下のWEBサイトで、国ごとの条件等を確認できます。
参考Webサイト:日本年金機構「社会保障協定」
※こちらは、2023年12月1日発行の「海外赴任ガイド2024年版」を元に作成しています。紹介内容が原文と異なる場合もあります。