赴任先での生活
「トロピカル時間」が教えてくれた完璧主義の捨て方
海外で暮らしていると、日本にいた頃には当たり前だと思っていたことが、少しずつ変わっていくことがあります。
そのひとつが、「時間」との付き合い方でした。
日本にいた頃の私は、どちらかというと「ちゃんとしなきゃ」が強いタイプ。
約束の時間には遅れない。
予定はできるだけ前もって準備する。
子どものことも、家のことも、できるだけ抜け漏れなく。
もちろん、それが悪いわけではありません。
むしろ、日本で生活するうえでは「時間を守る」「予定どおりに進める」ことは、とても大切なことだと思います。
でも、海外で暮らし始めると、そんな私の「当たり前」が、少しずつ揺らいでいきました。
公開日:2026年8月28日
この記事で書かれていること
「え、まだ来ないの?」から始まった

現地で生活を始めたばかりの頃は、ちょっとしたことでも戸惑いました。
「○時に来ます」と言われたら、私はその時間に合わせて予定を組みます。
ところが、待っても来ない。
「そろそろかな?」と思って待っていると、予定より少し遅れて、何事もなかったかのように登場する。
最初は、
「どうして時間どおりじゃないの?」
「こちらの伝え方が悪かったのかな?」
「このあと予定があるのに……」
と、モヤモヤしていました。
日本の感覚で考えると、「遅れる=困ること」だったからです。
でも、そんなことが何度か続くうちに、あることに気がつきました。
みんな、思っていたより焦っていない。
もちろん、すべての人や場面がそうというわけではありません。
ただ、日本ほど「予定どおりに進むこと」を前提にしない場面があり、多少のズレがあっても、それを受け入れているように感じることがありました。
私は、その「ゆるさ」に最初は振り回されていたのに、いつの間にか少し救われていたのです。
「ちゃんとできない自分」も、まあいいか

海外生活では、時間だけでなく、いろいろなことが予定どおりに進みません。
言葉がうまく伝わらない。思っていたサービスと違う。予定していたことが延期になる。子どもが急に「イヤ!」と言い出す。
そして、自分自身も思うように動けない。
日本にいた頃なら、
「もっとちゃんとしなきゃ」
「私の準備不足だったのかな」
「また失敗しちゃった」
と、自分を責めていたかもしれません。
でも、異文化の中で暮らしていると、自分の力だけではどうにもならないことがたくさんあります。
最初は、それがストレスでした。
でも、少しずつ、
「まあ、こういう日もあるか」
と思えるようになりました。
そして、その「まあ、いいか」が、思っていた以上に心を軽くしてくれたのです。
「完璧にする」より「戻ってこられる」こと

子育てをしていると、完璧に一日を終えることなんて、ほとんどありません。
朝から予定どおりにいかない。
子どもが着替えない。
ご飯を食べない。
出発直前にトイレに行きたいと言う。
予定していた家事ができない。
そんなことの連続です。
それなのに私は、
「今日はこれができなかった」
「もっと効率よくできたはず」
と、できなかったことばかりを数えてしまうことがありました。
でも、「トロピカル時間」のゆったりした感覚に触れてからは、少し考え方が変わりました。
一度予定から外れても、また戻ればいい。
全部を完璧にこなさなくてもいい。
予定どおりにいかなかったとしても、それで一日が失敗になるわけではない。
そう思えるようになりました。
これは、私にとって小さいけれど、大きな変化でした。
「日本の基準」を手放すということ

海外で暮らしていると、「日本だったらこうなのに」と思うことがあります。
時間の感覚も、サービスも、コミュニケーションも、子育ての常識も。
でも、ずっと「日本なら」と比べ続けていると、今いる場所での暮らしが苦しくなってしまいます。
そこで私は、
「どちらが正しいか」ではなく、
「今の私にとって、どちらが心地いいか」
と考えるようになりました。
もちろん、日本の「きちんとする文化」には素敵なところがたくさんあります。
時間を守ること。
約束を大切にすること。
相手を思いやって準備すること。
それらを捨てる必要はありません。
ただ、それと同時に、
「少しくらい遅れても大丈夫」
「予定が変わっても大丈夫」
「失敗しても大丈夫」
「今日できなかったことは、明日やればいい」
という「ゆるさ」も、自分の中に取り入れていい。
そう思えるようになりました。
異文化の「ゆるさ」をセルフケアにする

セルフケアというと、何か特別なことをするイメージがあります。
美容のために時間を使う。
ひとりでカフェに行く。
運動をする。
ゆっくりお風呂に入る。
もちろん、それも大切。
でも私が海外生活で見つけたセルフケアは、もっと簡単なものでした。
自分に対して「まあ、いいか」と言ってあげること。
予定どおりにできなかった自分に。
子どもにイライラしてしまった自分に。
家事を後回しにしてしまった自分に。
うまく伝えられなかった自分に。
「今日もよく頑張ったよ」と言ってあげること。
それだけでも、少し呼吸がしやすくなります。
異文化の中で暮らしていると、自分の「当たり前」が良い意味で壊されることがあります。
私にとって、「トロピカル時間」はそのひとつでした。
時間に追われない人たちを見て、
「もっとちゃんとしなきゃ」
ではなく、
「私も、もう少し力を抜いていいのかもしれない」と思えるようになったのです。
これから海外へ行く方へ

これから海外で暮らす方は、きっとたくさんの「日本との違い」に出会うと思います。 最初は「なんで?」と思うこともあるでしょう。 イライラすることもあると思います。 私もそうでした。
でも、もし余裕があれば、その違いを「正しい・間違っている」だけで判断せず、 「この中から、自分の暮らしに取り入れられるものはないかな?」という目で見てみてください。 もしかしたら、現地の「ゆるさ」が、あなたの心を少し軽くしてくれるかもしれません。
完璧じゃなくてもいい。 予定どおりじゃなくてもいい。 失敗しても、またやり直せばいい。 海外生活が教えてくれたのは、そんな当たり前だけれど忘れがちなことでした。
そして今では、何かが予定どおりに進まないとき、 「まあ、いいか。これも海外生活だもの」と、少し笑える自分がいます。 日本の「ちゃんとする」を大切にしながら、異文化の「まあ、いいか」も少しだけ取り入れる。 そのくらいが、私にはちょうどいいのかもしれません。
◾️Rina (ケアなびアンバサダー)
元薬剤師でシンガポール駐在帯同をへて、2カ国目となる南アジアの国に赴任中。
教育マガジンのライターに加え、夫婦会議アンバサダーなど幅広く活躍。自身の駐在帯同経験を軸に、家族ケアについてもセルフケアなびで発信中。
セルフケアなびは、「海外生活をセルフケアでもっと楽しむ」をモットーに、海外生活の土台となる心と身体を整えるための活動を行っています。
セルフケアなびのワークショップ・イベント情報は公式ラインで発信中。

