赴任時の子供の教育
障害のある子どもを海外に帯同させるとき、確認すべきポイントとは?
障害のある子どもを海外に帯同させるのは不安も大きいことでしょう。「同じ行動を繰り返す」「常同行動が見られる」などの発達障害や医療的かかわりを必要とする子どもが安心して海外で教育を受けるためには、事前の情報収集が欠かせません。今回は、障害がある子どもを海外に帯同するとき、チェックしておくべきポイントを解説します。
この記事で書かれていること
情報収集と判 がカギになる
障害のある子どもを帯同する場合、教育や医療など現地の状況をよく把握した上で、帯同が適切な環境か否か、判断する必要があります。十分な情報がより良い判断の手助けになるため、根気よく情報を収集しましょう。
まず、学校を選ぶ際は、必ず学校・教育委員会等に直接連絡して、障害のある子どもの受け入れ状況を具体的に確認します。
日本人学校の場合は、直接学校に問い合わせましょう。運営は現地の日本人会や在留邦人であるため、受け入れ体制・ノウハウなどは各校で異なります。また現地校の場合は、現地の居住地域の教育委員会等に問い合わせてください。公式WEBで得られる情報もあるので、まずは検索をしてみましょう。インター校の場合は、直接学校へ問い合わせてください。
加えて障害のある子どもの場合、環境の変化が情緒の不安定さに現れることがある点も学校選びの際は念頭に入れておきましょう。
<問い合わせるポイント>
- ・障害のある子どもの受け入れ状況
- ・どのような教育が行われているか
- ・学校の支援体制
- ・施設・設備の状況
- ・学校に対する家庭の協力
- ・入学時の基準・条件
- ・支援を受けるための手続き
- ・持参した方が良い書類 等
現地の医療情報もチェックする
海外赴任者が多い一部の国や地域では、日本語対応可能な医療機関があるので、事前に調べておくと良いでしょう。また、現地の医療機関を利用する場合に言語に不安があれば、費用はかかりますが通訳を利用してください。薬や検査は日本と異なることが多いので、診断書や処方箋の翻訳したものを必ず準備しておきましょう。
また、表①・②は発達段階別に注意点をまとめたチェックリストです。準備や情報収集の参考にしてください。
表①子どもの発達段階別チェックポイント
乳幼児期 |
親子のかかわりが重要な時期です。家族が揃って生活することが大切ですが、お子さんが医療的な対応を必要とする場合は、現地の医療機関情報を特に注意して集めることが重要です。病院に定期的に受診している場合や投薬がある場合などは、主治医に相談しましょう。 また、滞在中は、母親にのみ子育てを任せないような父親の配慮が必要であり、日本人会等に母子の子育てサークルなどがあるかどうかも確認することも必要かも知れません。 |
幼稚園段階 |
親子のかかわりを基盤に、子ども同士のかかわりを作っていく時期です。また、母語となる言語の基礎もこの時期にできるので、子どもが将来的にどの言語を母語として生活していくのかを考えておくことが必要です。 また、幼稚園は集団生活になります。お子さんの状態は、集団生活に十分参加できる状態なのか、支援が必要な状態なのかを考えることも必要です。医療的な対応が必要な場合は、乳幼児期と同様の確認が必要です。 |
義務教育段階 |
子ども同士のかかわりを深めると共に学習を積み重ねていく時期です。滞在予定年数や義務教育段階終了後の進路を考えておきましょう。居住地域に日本人学校がある場合、お子さんの状態、あるいは学校の状況によっては、日本人学校への転入学も可能です。 実際は日本人学校と話し合って行くことが重要になります。医療的な対応が必要な場合は、乳幼児期と同様です。 |
義務教育段階終了後 |
自立に向けて、社会とかかわることが重要になってくる時期です。日本では、特別支援学校の高等部や総合高校などで職業指導等が行われていますが、海外では国によって制度が異なります。 言語の問題や生活習慣などの違いを踏まえ、お子さんの状態に応じた判断が必要になります。医療的な対応が必要な場合は、乳幼児期と同様です。 |
表②赴任する際の準備・情報収集チェックリスト
乳幼児期 |
幼稚園段階 |
義務教育段階 |
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医療 |
□ 日本で受診した医療機関と検査結果の英訳 □ 英文の診断書等の作成 □ 渡航先の医療に関する情報の収集 |
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相談 機関 |
□ 日本で受けた相談の整理 □ 心理・発達検査などの結果の英訳 □ 渡航先の相談機関に関する情報の収集 |
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教育 機関 |
□ 今まで通っていた幼稚園での支援内容の整理 □ 渡航先の幼児教育の現状に関する情報収集 □ 渡航先の幼稚園に関する情報の収集 |
□ 在籍証明書(英文)の取得 □ 個別の支援計画、個別の教育支援計画や個別の指導計画の整理と英訳 □ 渡航先の日本人学校に関する情報収集 ・日本人学校の有無 ・障害のある子どもへの指導に関する情報 □ 渡航先の補習授業校に関する情報収集 □ 渡航先のインターナショナルスクールに関する情報収集 □ 渡航先の現地校に関する情報収集 |
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その他 |
□ 帰国の予定時期と卒業資格 □ 海外在留証明書の発給申請(海外子女枠の受験で、学校に求められた場合) |
国立特別支援教育総合研究所「障害のあるお子さんを連れて海外で生活をするご家族へ」
主な問い合わせ先
ここからは、主な問い合わせ先を紹介します。
海外の学校の連絡先等
- 公益財団法人海外子女教育振興財団 http://www.joes.or.jp/
医療関連
- 公益財団法人母子衛生研究会 http://www.mcfh.or.jp/
- JAMSNET http://jamsnet.org/
海外で日本語での医療を提供するネットワーク。北米やアジアなどで活動。
ボランティア相談機関
- Group With http://www.groupwith.info
受け入れ状況なども紹介。
- フレンズ 帰国生 母の会 http://fkikoku.sun.bindcloud.jp/
- 関西帰国生親の会「かけはし」 http://www.ne.jp/asahi/kakehashi/kikoku/
※こちらは、2023年12月1日発行の「海外赴任ガイド2024年版」を元に作成しています。紹介内容が原文と異なる場合もあります。