帰国後の子供の教育
海外帰国生の高校入試
帰国枠入試のイメージは安易な形で流布されがちですが、実情はほとんどの学校で3科目(英語・数学・国語)の国内一般入試と同じ学科試験が課されています。ここでは海外帰国生の高校入試について解説しています。
この記事で書かれていること
海外帰国生の高校入試
帰国枠入試のイメージは「一般枠より易しい」「英語だけできれば」「学校成績さえ良ければ」「面接・作文が重視され、教科試験は免除されるか、課されない」等々、安易な形で流布されがちですが、実情はほとんどの学校で3科目(英語・数学・国語)の国内一般入試と同じ学科試験が課されています。
また、東京都および神奈川県の私立進学校では、中高一貫化に伴い高校募集を停止している学校が多いため選択肢が少なく、大学附属校では、中学部を新設している場合は高校からの募集定員を減らしているのが現状です。
その中で、受験校の選択の幅を広くするならば、3科目の対策が基本と考えておいた方がよいでしょう。
3科目の学科試験を課してない学校の中で、現地の学校成績を合否基準にしている国際基督教大学の推薦入試などは英語の資格を出願の条件としているので、出願期間までにその条件のクリアが必要になります。
また「適性試験」や「基礎学力試験」の形態で総合的な学力を測る場合の科目は、青山学院や中央大学杉並が3科目(英語・数学・国語)、早稲田大学本庄高等学院のI選抜入試(帰国生自己推薦入学試験)の2次試験は2科目(数学・国語)と学校により異なります。
また「適性試験」や「基礎学力試験」以外に面接が課され、提出書類の学校成績を含め総合的に審査されています。
早稲田大学本庄高等学院のI選抜入試(帰国生自己推薦入学試験)は、面接も課されるが、1次試験として書類選考があり、現地の学校成績の他、英語力を証明するもの(TOEFL・TOEIC・英検)の提出が求められているので、国際基督教大学の推薦入試と同様に出願時までに資格試験の結果が必要となります。
大学入試で広く実施されているAO入試のように、現地でのボランティア活動などを含めた活動面に一生懸命取り組み、学習面でも成績的にもよい結果を残している生徒を評価の対象とした入試として帰国枠はありませんが、日本人学校生が出願可能な早稲田大学高等学院の自己推薦入学試験などがその顕著な例と言えます。
これらの入試形態も前述したように、安易な考えでは合格に繋がりません。
志望する高校が入学試験で帰国生に求めていることを正確に把握し、その準備が必要になります。
必要な情報は、インターネットの普及により学校案内をはじめとして、昨年度の入試結果や来年度の入試要項など各自で調べることが容易な時代になっていますので、正確な情報をいち早く入手し受験態勢をしっかり整え、志望校合格に向けたスケジュールを組んでください。
帰国枠入試の資格・条件
帰国生入試が国内一般入試と大きく異なる点は、帰国生としての出願における資格・条件です。
その資格・条件は、海外滞在年数や帰国後の期間制限などが細かく決められています。
特に気をつけておかなければならないのは、現地校や国際校から直接受験する場合に、原則としてその国の学校教育9年の課程を修了または3月末までに修了見込みであることが条件になっています(一部の私立学校では次年度の6月終了見込みも可)。
海外滞在年数は2年以上が一般的で、帰国後の制限は高校によって異なります。
各高校については、入試要項の受験資格を参考に。
資格・条件に合わない場合には帰国枠での受験はできませんが、資格・条件が近い場合には個別で相談に応じてくれる場合もあるので、各高校に直接お問い合わせてみましょう。
帰国生の受け入れ校
帰国生の受け入れを主たる目的として設置された学校
現地校(国際校)出身者と日本人学校出身者とでは異なる入試や入試形式を選べるなど帰国生に配慮した選考が行われています。
また、帰国生の特性を十分に考慮し、入学後もその長所を伸ばすために計画的な教育が行われているので、現地校や国際校に長年在籍した帰国生に適した学校といえます。
・国際基督教大学(東京都)
・南山国際(愛知県)
・同志社国際(京都府)
・関西学院千里国際(大阪府)
帰国生に対して、特別な受け入れ枠や受け入れ体制を持つ学校
国立大学附属
・筑波大学附属(東京都)
・筑波大学附属駒場(東京都)
・東京学芸大学附属(東京都)
・愛知教育大学附属(愛知県)
・名古屋大学教育学部附属(愛知県)
・大阪教育大学附属池田(大阪府)
※このうち、筑波大学附属と筑波大学附属駒場は一般入試同様の問題を5教科で実施しますが、残り4校では科目数が軽減されて、国語・数学・英語の3教科入試になっています。
公立高校
帰国生の多い都道府県では、帰国生であることを考慮して選抜方法に配慮し、一部の学校を受け入れ校に指定し受験科目を軽減した特別選抜を実施しています。
募集学科、募集人数、出願資格や条件、出願書類や手続き、選抜方法などは、都道府県によって異なります。
私立学校
国語・数学・英語の3教科入試で、一般入試と同一問題によって入試を実施する高校がほとんどですが、青山学院や中央大学杉並のように、一般入試とは異なった適性検査や基礎学力検査を課す高校もあります。
一般入試と同一問題の場合でも、入学審査の際に「特別な配慮」をすることになっています。
帰国生の受け入れに際し、特別な配慮をする私立の学校
国語・数学・英語の3教科入試で、一般入試と同一問題によって入試を実施することがほとんどです。
上述の学校と同様に入学審査の際に「特別な配慮」をする学校から、特別な配慮はなく国内一般生と同じ扱いで進学実績を目指す学校まで様々です。
帰国生入試選抜方法
国内の国公立高校の一般入試科目は、国語・数学・英語・社会・理科の5教科。
帰国生入試では、5教科を課している高校は「帰生に対して、特別な受け入れ枠や受け入れ体制を持つ学校」に含まれる国立大学附属のうち2校と、少数の県立高校に限られます。
それ以外の国公立・私立の大半の帰国生受け入れ高校では、国語・数学・英語の3教科の学科試験や面接によって選考。
中には、国語・英語の2教科と面接、英語の1教科と面接、作文と面接、面接だけといった選考法をとる高校もあります。
通常は入学試験(筆記試験)の総合点で合否が決定されることが多いですが、海外・帰国生入試においては、その特徴を考慮して各学校で様々な観点から選考が行われています。
以下、具体的なパターンを紹介します。
出身学校の特徴を考慮する主な高校
・東京都立国際(東京都)
・かえつ有明(東京都)
・啓明学園(東京都)
・国際基督教大学(東京都)
・聖学院(東京都)
・桐朋女子(東京都)
・鎌倉学園(神奈川県)
・同志社国際(京都府)
・立命館宇治(京都府)
・関西学院千里国際(大阪府)
現地校・国際校出身者は国内中学校と異なる言語、制度やカリキュラムで教育を受けているため、現地校・国際校の学校成績を重視し「面接」「作文・面接」や「英語・面接」だけで選考します。
一方、日本人学校出身者は3教科の入試で選考。
「国語」に「作文」などが加わり、一般入試とは別問題を課す別枠の募集・選抜方法を採用しています。
現地の教育制度やカリキュラムで学習している生徒にとっては、現地校の学習に専念できるという点で受験しやすくなっています。
そのために応募が集中して、入試の実質倍率や現地校・国際校の学校成績の基準も高くなり、一概に有利であるとは言い切れません。
英語力を重視する主な高校
・早稲田大学本庄高等学院(Ⅰ選抜)(埼玉県)
・渋谷教育学園幕張(千葉県)
・桐蔭学園(神奈川県)
・慶應義塾湘南藤沢(神奈川県)
出願条件に英語の資格(英検・TOEFL・TOEICなど)、書類選考時に学校成績の他に前述の英語の資格などを考慮し、学科試験は「国語・数学」もしくは「英語」のみ。
また「国語・数学」は一般入試と同一の問題で「英語」のみ帰国生には別問題を課す場合や、3教科の中で「英語」のみ2倍の配点にするなどのパターンがあります。
英語力を最重視しているため、英語の出題は難度が非常に高いものになっているため、現地校・国際校に通っている生徒でもしっかりした英語の学習が必要になってきます。
国内一般生と同等の学力を要求する主な高校
・慶應義塾志木(埼玉県)
・早稲田大学本庄高等学院(埼玉県)
・慶應義塾女子(東京都)
・早稲田実業(東京都)
・早稲田大学高等学院(東京都)
・慶應義塾(神奈川県)
などの多数の私立。
帰国生も国内一般生も同一日・同一内容の入試を実施。
国内一般入試で「難関校」と呼ばれる高校は全てこのパターンに含まれています。
選考審査段階で、帰国生に対しては選考基準がやや緩くなっているようですが、現地校出身者であっても国内一般生と同程度の入試学力が要求されます。
受験アドバイス
過去問演習の方法
「過去問演習は、第一志望からやっている」という声をよく聞きますが、得てして第一志望の入試問題のレベルは高いことが多いので、自信喪失の原因になることもあります。
まずは、自分の学力で受け易い学校の過去問の3年間分を終わらせ、第二・第一志望の順にこなすのがよい方法です。
この場合は過去3年分程度をやって、出題傾向や問題を解く順番などを時間配分も考えてできれば理想的です。
その後、自分の弱点補強をジャンル別に行い、万全の体制を整えておく必要があります。
12月下旬から1月頃に集中的にやるのが、最も効果的。
作文の評価ポイント
・文章表現分野
①原稿用紙の使い方:句読点・記号・符号が適切か、字数制限が守られているか等
②文字の書き方:仮名づかい・送りがな・漢字等が正確か、文字が読みやすく丁寧か等
③語句の使い方:主述の呼応や修飾語と被修飾語の関係が適切か、文体の統一等
・文章構成分野
①取材の仕方:課題に合っているか、材料・資料が適切に取り上げられているか等
②構成の仕方:段落区分・段落の順序・展開は適切か、書き出し・結びの工夫等
③論旨のまとめ方:筋道の明確さ、主題がまとまっているか、説得力があるか、そして何よりも本人独自の考え方が表現されているか等
※こちらの記事は、海外・帰国子女教育専門機関JOBA より資料提供・編集協力をいただきました。
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