海外赴任の準備
海外赴任前に夫婦で話したい「キャリア会議」
海外赴任が決まると、手続きなど“目の前のこと”に意識が向きがちです。
しかし、その中で見落とされやすい大切な準備があります。そのひとつが、夫婦でキャリアについて話し合う「キャリア会議」です。
海外赴任は、本人だけでなく家族のキャリアにも影響を与えます。特に配偶者が同行する場合、仕事を辞めたりキャリアを中断したりすることもあり、不安を抱えたままで後になって不公平感が生まれるケースも少なくありません。
こうしたすれ違いは、夫婦のどちらかが悪いのではなく、話し合う機会がないまま海外生活が始まることが原因となっているかもしれません。
この記事では、渡航前に夫婦で確認しておきたい「キャリア会議」のポイントを紹介します。
公開日:2026年6月5日
この記事で書かれていること
キャリアを「家族」という単位で考える
キャリアというと、多くの人が「個人の仕事の歩み」を思い浮かべます。しかし近年は、家族全体でキャリアを考える「ファミリーキャリア」という考え方が注目されています。
「ファミリーキャリア」は、家族それぞれのキャリアを切り離して考えるのではなく、家族という単位で人生の選択を考えるという視点です。
例えば
- ある時期は夫のキャリアを優先する
- 別の時期には妻のキャリアを優先する
- 子どもの教育や生活環境を優先する
このように、人生の長い時間軸の中で、家族の状況に応じて選択する方向性やそのバランスを調整していく発想です。
海外赴任は、このファミリーキャリアを考える大きな転機になります。
「誰か一人のキャリアのための海外赴任」ではなく、家族全体のキャリアの中でどう位置づけるのか。
それをしっかりと話し合うことが大切です。
同行する側のキャリアをどう考えるか
海外赴任は、同行する配偶者にとっても、キャリアの分岐点になり得る一大イベントです。
特に共働き家庭では、同行する配偶者が「キャリアを手放した」感覚になってしまう場合も少なくありません。
そのため、渡航前に次のような視点で話し合っておくことが重要です。
例えば
- 仕事を辞めるのか、休職するのか
- 海外で働く可能性はあるのか
- オンラインで仕事を続けられるのか
- 勉強や資格取得に取り組む時間にするのか
ポイントは、
「働くか・働かないか」の視点だけで考えないことです。
海外生活を
- キャリア準備期間
- スキルアップ期間
- 新しい働き方を試す期間
として位置づけることもできます。

例えば実際には、
- オンラインで日本の仕事を続ける
- 語学や資格取得に取り組む
- 現地コミュニティやボランティアでの活動に参加する
- 副業やフリーランスを始める
といった形でキャリアにつながる経験を積む人も増えています。
夫婦で話し合う時にはぜひ、次のような問いを共有してみてください。
- 海外生活の数年間を、キャリアのどんな時間にしたい?
- 挑戦してみたいことはある?
- 帰国後に役立つ経験は何だろう?
海外生活そのものをキャリア資産にする視点
実は、駐在同行の経験そのものが、見方を変えれば、大きなキャリア資産になります。
しかし、その価値は、それを意識して行動するかどうかで大きく変わります。
例えば海外生活では
- 外国語に親しむ
- 異文化交流ができる
- 海外でのネットワークが広がる
- 新しい価値観と出会う
など、日本では得られない経験をすることができます。
さらに
- 現地コミュニティへの参加
- ボランティア活動
- 教育活動
- SNSや発信活動
なども、将来のキャリアにつながる経験になります。

帰国後に就職活動をすることになった場合、
「海外で何をしていましたか?」と聞かれた時に
「こういう活動をしていました」と言える経験があると、自信にもつながります。
そのためにも、夫婦で
- 海外生活で挑戦したいこと
- 期間中に積み上げたい経験
を話しておくことが大切です。
帰国後のキャリアも視野に入れて考える
ただ、同行した配偶者にとっては、帰国後のキャリアが大きな課題になる場合もあります。
帰国後に「何から始めればいいかわからない」 「ブランクが不安」と立ち止まってしまう人も少なくないでしょう。
だからこそ、帰国してから考えるのではなく、渡航前から意識しておくことが重要です。
例えば
- 帰国後にどんな働き方をしたいか
- どんなスキルを身につけておきたいか
- 海外経験をどう活かしたいか
といった視点で考え、話をしましょう。
海外生活の数年間を「キャリアの空白」にするのではなく、「キャリアの準備期間」として設計できると、帰国後の選択肢が広がります。

キャリアの優先順位は、変わっていく
ファミリーキャリアの視点では、 キャリアの優先順位はずっと同じではありません。
例えば
- 今回は赴任する側のキャリアを優先する
- 次の転機では配偶者側のキャリアを優先する
といったように、長い人生の中でバランスを取る考え方です。
この視点が共有されていると、「自分だけが犠牲になった」という気持ちが生まれにくくなります。
「家族」の将来を考えるという視点で、夫婦で次のような問いを話してみるのもよいでしょう。
- 今はどちらのキャリアを優先するタイミング?
- 次のキャリアの転機はいつ頃になりそう?
- 将来はどんな働き方をしていたい?
キャリア会議は「答えを出す場」ではない
キャリア会議で結論を出す必要はありません。
大切なのは
- お互いの価値観を知ること
- 双方のキャリアの希望を共有すること
- 期待のズレを減らすこと
です。
海外赴任やその同行は、家族全員の人生の中でも、大きな転機となります。
だからこそ、家族全体のキャリアという視点で考えてみてください。
渡航前にその時間を持つことで、海外生活は
「誰かだけが犠牲になる」時間ではなく、
「家族全員が成長できる」時間になるはずです。
– 寄稿 –
【一般社団法人キャリアコネクト】
一般社団法人キャリアコネクトは、「キャリア支援を通じて、企業も個人も持続的に成長できる社会づくり」を目指す非営利団体で、駐在員パートナーへのキャリア支援や、企業向け研修・講演を行っています。企業にとっても、駐在員パートナーのキャリア支援は、離職防止やグローバル人材の定着につながる重要なテーマです。また、個人向けのサービス 「Career Cafe Connect」では、セミナーやキャリア相談、イベントを通じて、海外経験を将来のキャリアにつなげるサポートを提供しています。
◆編集・ライティング 浅野 藤子、畑 史
◆監修 一般社団法人キャリアコネクト

