赴任先での生活や文化

アメリカ帯同で「キャリアが止まる」と感じる理由

パートナーのアメリカ赴任に帯同することが決まったとき、期待と同時に、不安を感じた方も多いのではないでしょうか。

私自身も駐在帯同者として4か国の引っ越しを経験しました。特に最初の赴任では、それまで続けてきた仕事を辞め、友人も家族もいない土地で新生活を始める中で、「自分のキャリアはここで止まってしまうのではないか」と感じたことを覚えています。

パートナーの仕事や周囲の環境が変化していく一方で、自分だけが立ち止まっているような感覚に、不安や焦りを抱くこともありました。

けれど、海外生活の中でさまざまな人と出会う中で、「キャリアが止まった」と感じる背景には、帯同者ならではの環境や思い込みがあることにも気づきました。本記事では、アメリカ帯同で「キャリアが止まった」と感じてしまう背景と、その捉え方について考えていきます。

なぜ「キャリアが止まった」と感じてしまうのか

上を見つめる女性
Photo by Sean Kong on Unsplash

アメリカへの帯同に伴い仕事を離れると、それまで積み上げてきたキャリアが一度途切れたように感じることがあります。

特に、日本で同僚や友人が仕事を続けている様子を見ると、自分だけが立ち止まっているように感じてしまうこともあるでしょう。また、「仕事=社会とのつながり」と感じていた場合、その役割を手放すことで、自分の居場所が揺らぐような感覚を持つこともあります。

こうした感情は決して特別なものではなく、多くの帯同者が経験する自然な反応です。

英語環境で感じやすい“見えない壁”と期待とのギャップ

カフェで話す男女

アメリカでの生活では、日常的に英語でのコミュニケーションが求められます。言葉そのものだけでなく、思うように伝えられないもどかしさや、以前の自分とのギャップといった、外からは見えにくい“見えない壁”を感じることもあります。

たとえば、言いたいことがすぐに言葉にできなかったり、自分の考えを十分に表現できなかったりする場面が続くと、そのギャップに戸惑いを感じることもあるでしょう。

日本では当たり前にできていたことがうまくできないという経験は、自己肯定感にも影響を与えやすく、「自分の本来の能力が発揮できていないのではないか」と感じてしまうこともあります。

また、日本では長い時間をかけて英語を学んできたという背景から、「ある程度はできるはず」という期待を自分自身に持っている場合も少なくありません。その分、実際に現地で生活してみて思うように使えないと感じたときに、想像以上に落ち込んでしまうこともあるのではないでしょうか。

しかしそれは、単に能力の問題ではなく、英語環境の中で生活するという変化や、自分自身が持っている期待とのギャップによるものでもあります。

あなたのキャリアは本当に止まっているのでしょうか?

山頂に座る女性
Photo by Denys Nenozhai on Unsplash

「キャリアが止まっている」と感じるとき、私たちはつい「仕事をしていない=成長していない」と考えがちです。

しかし、環境を変え、新しい生活に適応していく過程そのものも、決して小さくない経験です。異文化の中で生活すること、人との関係を築くこと、自分の価値観を見つめ直すことは、目に見えにくいかもしれませんが、長いキャリアの中で確実に意味を持つ時間です。

キャリアを「職歴」だけで捉えるのではなく、経験の積み重ねとして捉えることで、見え方が少し変わるかもしれません。

渡航前の今だからこそ、考えておきたいこと

アメリカへの帯同が決まったばかりの時期には、渡航準備に意識が向きがちですが、その前に一度立ち止まり、「自分のキャリアをどう考えるか」に目を向けておくことも大切です。

どのような時間にしたいのか、何を大切にしたいのかを言葉にしておくことで、渡航後の過ごし方や選択に納得感が生まれやすくなります。すぐに答えが出なくても構いません。考えること自体が、その後のキャリアを主体的に捉える一歩になります。

キャリアが止まっているように感じるとき、その不安はとても自然なものです。大切なのは、その気持ちをなかったことにせず、自分が何を大切にしたいのかを少しずつ言葉にしていくことではないでしょうか。

アメリカへの帯同前には、不安や迷い、知りたいことがいくつも出てくるものです。そんなとき、同じような経験をした人と話したり、帯同者を支えるコミュニティや団体とつながったりすることで、少し気持ちが整理されることもあります。

実際に、駐在帯同者を支える活動やコミュニティはさまざまな形で存在しており、安心して気持ちを話せる場を見つけることは、海外生活を支える大きな助けになることもあります。私がアメリカで運営に携わるHub Parkでも、駐在帯同配偶者の方々の思いに寄り添いながら、安心して対話できる場を大切にしています。

一人で答えを出そうとしなくても大丈夫です。新しい環境の中で感じる迷いや立ち止まる時間も、誰かと話しながら少しずつ整理していけばよいのだと思います。その時間も、きっとこれからの自分につながっていくはずです。

– 寄稿 –

上野真衣子

【Hub Park】

アメリカの非営利団体Hub Park共同設立者。海外にルーツを持つ人々や駐在帯同者を含む、海外で暮らす人々のキャリアや生き方をテーマに、プログラム運営や情報発信に携わる。米国・日本での人事経験やキャリア支援の経験をもとに、個々の状況に応じたキャリアの考え方について発信している。

【公式サイト】https://hubpark.org/

【Instagram】https://www.instagram.com/hubpark_washingtondc/

【Facebook】https://www.facebook.com/hubpark.org/

駐在帯同に伴うキャリアやアメリカ生活にまつわる不安や悩みについてのご相談は、info@hubpark.orgで受け付けております。

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