海外滞在中の子供の教育
海外での幼児教育は義務教育ではない?アメリカの幼児施設の特徴を紹介
多くの国では幼児教育は義務教育ではないため、制度や施設の利用状況など国によってさまざまです。まずは、赴任地での幼児教育とはどんなものがあるのかを調べておくことが大切です。今回は、アメリカの幼児教育の特徴について詳しく紹介します。海外赴任先で子どもにどのような幼児教育を受けさせるのか、夫婦でよく話し合い準備をしておきましょう。
この記事で書かれていること
海外赴任先で幼児教育を行うときに大切なこととは?
多くの国で幼児の教育は義務ではなく、国や地域で制度が大きく異なります。まずは現地の幼児教育事情を調べましょう。
在留邦人が選ぶ教育施設はアメリカまたはイギリスのシステムに影響を受けていることが比較的多いので、表①に示すアメリカのシステムも参考にしてください。
表①アメリカでの就業前児童を受け入れる教育施設の概要
名称 |
受け入れ 年齢の目安 |
日本の類似した 施設の例 |
特徴など |
|
プレイ グループ |
Play Group |
0歳〜3歳 |
乳幼児育児 サークル |
親と一緒に乳幼児を遊ばせる育児サークルを指し、だいたいプリスクールに上がる3歳児までとなります。親が主体となってプログラム作りをしており、育児情報の交換や、親同士のつながりの場として参加している人も多いよう。また、図書館や公共のコミュニティセンター、教会の一室などの場所で運営しており、参加費はおやつと場所代程度です。 |
プリスクール |
Preschool |
2歳半〜4歳 |
幼稚園 |
就学前の幼児教育一般を指し、日本でいう幼稚園に近いです。2歳児からのトドラークラスや、5歳児のキンダークラスを設けているところもあります。開園時間は正午までで、延長しても午後3時までが主です。預ける日は週3日、週5日などから選びます。私立の場合がほとんどで、教育方針はさまざまです。 |
ナーサリー |
Nursery School |
|||
プリキンダー ガーテン |
Pre-Kindergarten |
3歳〜4歳 |
幼稚園 (年少、年中) |
Pre-KまたはPKとも呼ばれます。キンダーガーテンの前の段階に当たり、多くが3時間のプログラムですが、それ以上のものもあります。キンダーガーテンに上がる前に、もう少し社会性を伸ばす準備段階として、貧困層の3歳児および4歳児の子どもを中心に設置されている場合が多いです。 |
キンダー ガーテン |
Kindergarten |
5歳 |
幼稚園 (年長) |
一般的には小学校に上がる前の5歳児が対象ですが、いつの時点から通うかは学区によって異なります。午前と午後のいづれか半日のところや、全日のところもあります。たいていの場合は、エレメンタリースクールの建物に併設されているため義務教育だと勘違いされやすいですが、必ずしもそうではありません。公立の小学校に併設されている園では地域の税金によって運営費の大部分がまかなわれています。学区によっては条件が整えばスクールバスがでますが、一般的には親が送迎します。 |
デイケア |
Day Care Center |
就学前 |
保育園 学童保育 |
働いている親が預けている場合がほとんどなので早朝から夕方まで開園し、週末も開いているところがあります。キンダーガーテンが終わった後、学童保育をしているところも。チェーン化していたり、大きな病院や会社に付属していたりするなどほとんどが民間で、貧困層の家庭には補助金が国や州から出されます。 |
また幼稚園は主に日系、国際系、現地幼稚園に分けられます。それぞれの特徴も踏まえておくことが大切です(表②)。
表②主な幼稚園の特徴
日系の幼稚園 |
日本語 |
日本人学校や補習授業校併設の幼稚部、および日系私立の幼稚園です。日本人の子どもたちのための日本人保育者の指導による幼稚園ですが、アシスタントは現地の人を雇っている場合もあります。現地のイベントを祝うと同時に日本の文化、習慣、伝統を通したカリキュラムや行事(七夕、発表会、運動会、節分、ひな祭り、など)に重点がおかれており、在留邦人が多い都市部に集中しています。 |
インターナショナル系の 幼稚園 |
特定の言語 |
インターナショナルスクールの幼稚部、私立が多いです。多くは2歳児から受け入れていますが1歳半からなど学校によって対象は異なります。そのため詳細について個別の確認が必要です。 |
現地の幼稚園 |
現地語 (+英語など) |
現地の子どもたちが通う園で公立と私立の選択肢が考えられます。現地語と英語、英語と日本語のバイリンガルな園もあります。 |
現地で情報収集するためにはどうしたら良い?
主な情報源は施設のホームページ・SNS、現地在留邦人向け情報誌、日本人会の婦人部ほか、住宅探しの際に現地不動産に問い合わせるのも良いでしょう。いずれも現地到着後の情報収集となります。
情報が集まってきたら、説明会に参加するか、直接訪問して見学をおすすめします。確認したいポイントは通園のルート、所要時間、園付近の目印や設備や衛生面、保育料です。その他、クラスに空きがあるか、外国語(主に英語)を理解しない子どもの受け入れはどうか、日本人はどれくらいいるか、体験保育や慣らし保育があるかなども問い合わせましょう。
また入園の際に海外では「出生証明書」を頻繁に求められます。日本では正式なものはないので「パスポートのコピー」を提出しましょう。予防接種証明書は母子手帳に記載されている記録を英訳して提出します。その国や園で必要な予防接種が済んでいないと入園許可が下りないこともあるので要注意です。
子どもが慣れるまではどうする?
入園当初は体調や表情の変化などに注意が必要です。もし、子どもが辛そうなときには慣らし保育を利用したり、親が一緒に園に通ったり、安心材料となるぬいぐるみを持たせたりするなどし、園の協力も得るようにしましょう。疲れがたまっているときには休むことを試してみると良いかもしれません。
海外の幼児教育を経た保護者の口コミ
海外の幼児教育は、どうだったのかを2つ紹介します。
-
イタリアのNさん
幼稚園に突然入れるのはかわいそうだと思って、最初はリトミックの体操教室のようなところに入れることに。そこではイタリア語が耳に入ってくるものの、基本的にはことばに関係なくからだを動かすのが目的でしたので、現地の子どもたちと運動をとおして触れ合いながら、さらには楽しみながら新しい国に慣れていきました。
-
アメリカのOさん
日本に帰ってきて靴を脱ぐ生活に慣れるのに時間がかかりました。たとえば、ソファに靴のまま腰かけるとか、女の子なのに座るときはあぐらをかくなど。これもやはり現地の幼稚園で学んだ習慣だったようです。
引用:海外子女教育振興財団「月刊『海外子女教育』」2014年3月号より
※こちらは、2023年12月1日発行の「海外赴任ガイド2024年版」を元に作成しています。紹介内容が原文と異なる場合もあります。