渡航前の医療
海外赴任する前に渡航先の医療を知ることが重要!健康診断や予防接種について解説
海外赴任する国によって環境や衛生状況などはさまざま。海外赴任する前に渡航先の医療に関する情報収集が必要となるので、赴任が決まったらすぐに準備に取り掛かりましょう。海外に赴任する前に渡航先に合わせて健康診断や検査を行ない、証明書を発行する必要があります。国によって必要になる医療費もさまざまなので、注意すべき点や海外赴任中の持病に対する対策などについても合わせて解説します。
この記事で書かれていること
海外へ赴任することが決まったら
海外赴任での渡航先が決まったら、すぐに準備に取りかかりましょう。
海外滞在中は、気候や衛生状態などの環境の変化により健康問題などが発生しやすくなります。まずは、健康問題の対策をするために、感染症の流行を含めた渡航先の情報を集めましょう。
1.海外赴任前の医療に関する情報収集
赴任先の収集すべき情報として気候や、大気汚染、交通事情、衛生状態、感染症の流行状況、必要な予防接種、医療事情、出入国制限や要件(ワクチン接種や検査など)があります。
赴任先となる国の情報の収集方法としては、前任者や赴任経験者に聞く、インターネット(※チェック1参照)から医療情報を集めるなどがあるでしょう。
2.海外へ赴任する前の健康診断、家族はどうする?
赴任先が決まったら、すぐに健康診断の受診をする必要があります。もしも、健康診断で再検査や精密検査の指示があった場合は、海外へ赴任する前にできるだけ解決しておきましょう。一般的な健康診断に加えて追加する必要のある項目についても以下で詳しく解説します。
6カ月以上海外に赴任する場合は、健康診断は義務なので、赴任が決まったらすぐに健康診断を予約しましょう。さらに、渡航先によっては就労ビザや就労許可のための診察も必要になります。
帯同成人の健康診断は義務ではありませんが、できるだけ健康診断を受けましょう。女性は、婦人科健診の追加も検討する必要があります。なお、中国に渡航する場合は、居留許可のための検診が必要です。
帯同小児は、乳幼児健診や学童健診で問題を指摘された項目につき、かかりつけの医師に相談しましょう。
海外赴任する本人と家族全員、歯科医のチェックを受けます。もしも治療しなければいけないところがある場合は、渡航する前に治療を終えられるようにしましょう。
予防接種・検査と証明書
海外赴任で渡航する際に必須となるワクチンや検査、推奨されているワクチンなどがあります。ワクチンや検査に関することは、外務省の情報を参考に確認しましょう。
- 推奨ワクチン
海外赴任の渡航先で推奨されているワクチンの接種は受けましょう。医療レベルに問題がある国へ渡航する際は、日本でワクチンの接種を受けます。日本に一時帰国した際に追加のワクチン接種を受けるようにしましょう。
- 黄熱ワクチン
渡航する国が入国時に、黄熱ワクチン接種を義務化しているかを確認する必要があります。黄熱ワクチンの接種が義務付けられている場合や感染のリスクがある場合には、最寄りの検疫所あるいは関連施設で接種を受けましょう。1度黄熱ワクチンの接種を受けると、10日目からワクチンの効果は生涯有効となります。
黄熱ワクチンの接種後27日間は他の生ワクチンが接種できません。黄熱ワクチン以外の生ワクチンを接種する予定がある場合は、まず医療機関でワクチン接種のスケジュールを相談するようにしましょう。
- 新型コロナワクチン
入国するために新型コロナワクチンの予防接種を要求している国へ渡航する場合、必要な接種回数を接種後、接種証明書を取得する必要があります。(※チェック1参照)
- 帯同小児の予防接種
子どもの年齢に合った日本の定期予防接種とおたふくかぜワクチンの接種を受けましょう。子どもが入園や入学する際に要求されるワクチンを接種して、所定のフォームを用いて接種証明書を作成してもらいます。併せて子どものワクチン接種記録を作成しましょう。「英語/日本語母子健康手帳」の利用がおすすめです(※チェック1参照)。
チェック1 |
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海外の医療情報を探す |
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外務省 世界の医療事情 |
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/index.html |
外務省 海外安全ホームページ |
https://www.anzen.mofa.go.jp/ |
厚生労働省検疫所FORTH |
https://www.forth.go.jp/index.html |
日本渡航医学会 |
https://plaza.umin.ac.jp/jstah/index2.html |
Care the world 出産・子育て情報 |
http://www.caretheworld.com/ |
予防接種を受ける・調べる |
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厚生労働省検疫所FORTH 黄熱病の予防接種 |
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/yellow_fever_certificate.html |
厚生労働省検疫所FORTH 予防接種医療機関 |
https://www.forth.go.jp/moreinfo/vaccination.html |
日本渡航医学会 トラベルクリニックリスト |
http://jstah.umin.jp/02travelclinics/ ※海外製のワクチンが必要な場合はトラベルクリニックを受診してください。 |
英文の母子健康手帳を用意する |
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公益財団法人 母子衛生研究会 |
https://www.mcfh.or.jp/ |
- 非感染証明
新型コロナなど特定の感染症の非感染証明を求められる場合があります。その際は、指定の検査方法で証明書を取得しましょう。
海外赴任前の持病への対策
海外赴任中は、生活習慣の変化や治療の中断などにより持病が悪化しやすくなるので、しっかり準備をしておきましょう。海外赴任で渡航する前に準備しておく項目を以下で解説します。
1.主治医から海外赴任前に渡航時の注意を受ける
2.持病のコントロール改善をしておく
3.海外赴任前に英文医療情報を用意する
基本情報となる、自分の名前や生年月日、アレルギー・既往歴。持病の病名や内服薬、データのコピー、体調が悪化した時の緊急対処法などを書いて準備しておくと安心です。
4.発作性疾患やアレルギーがある場合は、緊急カード(Medical alert card)を準備する
先ほど述べたような基本情報に加え、緊急連絡先、緊急時の対応方法について記載したカードを常時携帯しましょう。
5.可能であれば、渡航前に海外のクリニックに問い合わせておく
海外赴任する先にあるクリニックはどんな診療内容なのか行く前に担当医師の情報も合わせて問い合わせておきましょう。現在内服している薬を処方してもらえるかや、処方できない場合の代替薬の確認などもしておく必要があります。
6.常備薬は長期処方
持病で必要な内服薬は長期処方(3カ月程度)してもらっておきましょう。入国時のトラブルを避けるために、持ち込む薬が個人使用である証明書を持参しておくのがおすすめです。一部の薬が持ち込めない場合もあるので、渡航する予定の在日大使館に確かめておきましょう。
これら6つの対策の他に、市販薬や衛生用品の購入、ストレス対策や現地の医療機関を受診するために必要な情報の確認など、健康な海外赴任生活を維持するためにしておくべき準備がまだまだあります。チェック2を参考に対策をしておきましょう。まずは海外赴任して必要になる対策を確認し、漏れのないようにひとつひとつ準備をしておくことが大切です。
チェック2 |
1.渡航に必要な証明書の準備 |
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2.市販薬と衛生用品の準備 |
※デング熱が流行しているところでは、解熱鎮痛剤はアセトアミノフェン系薬剤を持参しましょう。
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3.生活習慣病やストレス対策の準備 |
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4. 海外の医療機関を受診するための準備 |
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5.飛行機搭乗の際の注意 |
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寄稿
海外赴任前の医療対策について寄稿いただいたのは、航仁会 西新橋クリニック理事長である大越 裕文先生。
1981年東京慈恵会医科大学を卒業後、同大病院助手を経て米国留学。日本航空健康管理室主席医師として活躍されました。2008年、現職である航仁会 西新橋クリニック理事長に就任。その他、日本渡航医学会理事や日本産業衛生学会代議員などとしても活躍されています。
※こちらは、2023年12月1日発行の「海外赴任ガイド2024年版」を元に作成しています。紹介内容が原文と異なる場合もあります。