海外赴任前に準備しておきたい!学校選びのポイントと受験のこと
海外赴任が決まり家族帯同を選択した場合、気になるのは子どもの進学のことではないでしょうか。そこで今回は、学校の選び方や受験準備、情報収集のポイントを中心に紹介します。もちろん実際に準備をはじめる際には、希望する進学先について個別にしっかり確認する必要があります。とはいえ、突然1校1校調べるのは大変です。まずはここで大きな枠組みをつかみ、適宜、相談機関や学校から情報収集して準備を進めましょう。
この記事で書かれていること
英語?苦手な科目?何を大切にするかを考える
学校選びの大きなポイントは、子どもが海外から持ってきたものを、どのように生かしていくか。そして、不足しているところをどのように補うか、という点です。帰国後も英語力を伸ばしていきたい、となればネイティブの先生による授業がある学校、英語でのディベート大会がある学校、留学制度がある学校などを探してみましょう。
一方、社会や国語など現地校で履修していない教科を伸ばしたい、という場合には、帰国生向けの補習など、学校のフォロー体制をチェックします。そのほか、さまざまな部活が選べる、理系科目も英語で学べる、国際バカロレア資格が得られる、あるいは帰国生が多く在籍し、海外経験を共有できる仲間が得られる、と言った特徴も学校選びのポイントとして挙げられます。
情報収集のメソッドをつかんでおく
帰国生受入校の情報収集は、イベントへの参加がおすすめです。春〜夏に帰国子女教育専門機関、帰国生受入校、学習塾等が学校説明会を開催しており、ここ数年オンラインでも実施されています。また各校で学校見学ができる説明会やイベントを実施しているので公式WEBサイト等で確認してみてください。一時帰国などを利用して行ってみると良いでしょう。
大まかな一年のサイクルとしては春〜夏に学校説明会・見学会等のイベントがあり、入試は年明けに多いです。ただし海外現地入試が秋に実施されるなどのケースもあるので、こちらも各校のスケジュールをよく確認してください。また情報収集の際には、学校の特色、アクセス、部活動、帰国生への配慮などをチェックしましょう。
加えて受験科目も確認します。帰国生枠とは言え、しっかり科目試験を課す学校もあれば、帰国生に配慮して英数のみ、作文・面接のみ、とする学校もあります。科目が多いなら学習塾等で対策を打つ必要も出てくるので、志望校について確認しておきましょう。おおまかなトレンドとして、英語は変わらずウエイトが大きく、英語資格のスコアをもっていると有利にはたらくケースもあります。また数学・算数のウエイトも増えつつあります。イベントへの参加以外では帰国生受入校を多数まとめた学校案内やフリーペーパーの活用ほか、随時、教育相談にのってくれる相談機関・団体があるので、こちらを利用してください。
知っておきたいキーワード
ここで、知っておきたいキーワードをおさらいしておきましょう。
英語資格関連
英語資格のスコアは帰国生入試の出願時に要求されることが多いです。よく利用される資格は以下の通りです。
- 実用英語技能検定(英検)
- TOEFL iBT
アメリカのETSが運営する英語試験です。
- IELTS academic(アイエルツ アカデミック)
イギリスのブリティッシュカウンシル等が運営している英語試験です。なおIELTS General Trainingは日常的な英語力を測るもので受験では利用されません。
- TEAP
上智大学と日本英語検定協会が共同開発した英語試験です。
- ケンブリッジ英語検定
ケンブリッジ大学英語検定機構が運営している英語試験です。
海外の統一試験
スコアの提出が大学の帰国生入試などで求められます。
- SAT(Scholastic Assessment Test)
アメリカの大学入試で利用される標準テスト。2021年に制度に変更があったので、今後の利用は要チェックです。
- ACT(American College Testing)
こちらもアメリカの大学入試で利用される共通テストです。
- GCE
イギリスの大学入試統一試験です。
大学入学資格関連
大学入学に関する資格やプログラムを紹介します。
国際バカロレア(International Baccalaureate)
国際バカロレア機構が認定した教育プログラムです。このうち、16歳〜19歳を対象としたDP(DiplomaProgramme)が国際的に大学入学資格として広く認められています。日本国内で取得するにはIB認定校に入学しカリキュラムを履修する必要があります。国内ではインターナショナルスクールほか、一条校(学校教育法第一条に規定されている学校)でも認定を受けている学校があり、後者の場合、日本の卒業資格も得られます。7・8時限まで授業があるなど非常に忙しいので、部活との両立はなかなか難しいでしょう。また学費は通常の高校より一般的に高めです。
海外の大学入学資格
主要国の大学入学資格が国内大学の帰国生入試で利用できる場合があります。例えばドイツのアビトゥア資格や、フランスのバカロレア資格などがあります。
ダブルディプロマ
卒業すると日本の高校卒業資格に加え、カナダなど海外の高校卒業資格も同時に得られるプログラムです。ダブルディプロマコースを設ける学校に入学し履修します。国際バカロレア同様に授業が多いので部活等の両立は難しいでしょう。こちらも学費は通常の高校より高めです。
大学受験を見据えると
現在、日本国内の大学でも英語で学位をとることができる学部が増えてきています。国際関係学部が多いですが、理系学部での募集もあり、世界各国の留学生とも交流できます。こう言った学部の入試では、TOEFLなどの英語資格のスコアの提出が必要です。よって小中学生で帰国した場合は日本での英語保持が鍵となります。
この時、受験対策が目的であれば学習塾での資格対策が考えられますが、小中学生から大学受験までの長いスパンで英語を保持する、となると一度受験と切り離して考えることも大切です。子ども自身の海外経験を踏まえて、英語で会話する機会が豊富な英会話教室を利用したり、ネイティブの授業がある帰国生受入校を受験したりするなど選択肢はいろいろあります。自然に英語力を保持・伸長した先で資格試験のスコアを上げていけると良いでしょう。
また、多くの大学で実施している総合型選抜入試でも、英語資格のスコアが審査対象となるので、やはり英語力をしっかり磨き続ければ有利に働くでしょう。加えて総合型では小論文や面接のウエイトが大きく、これまでの経験や活動、これからの展望など、自分自身をアピールする必要があります。こちらについては、これから始まる海外生活も含め、じっくり経験を積み重ねながら考えます。例えば現地校に通う間、エッセイなどの課題にしっかり取り組む、海外滞在中のできごとや考えたことを記録しておくなど工夫できると良いでしょう。焦らず取り組んでいきましょう。
海外大学への進学
帰国生受入校の情報を集めていると、海外大学への進学実績も目にとまるでしょう。もし海外大学進学を検討する場合、まずは条件を整理しましょう。入学方法もそうですが、ビザ・滞在方法、そして費用などを考えると、日本の大学よりもハードルは高いです。渡航する国・地域によっても違いはあるので、そういった具体的なことを早めに整理して、実現できるかどうかをまず考えます。
加えて志望理由も整理してみましょう。英語で学位を取りたい、と言うことであれば、先に述べたように日本国内の大学でも選択肢はあります。また卒業後の就職や大学院進学についても、海外を希望しているのかどうか、よく考えてください。
就職となれば、当然ながら専門性を持ったネイティブに囲まれて働くことになります。英語力はもちろん、異文化に適応する力、孤独な環境に耐える力などが必要です。日本とは環境が一変するので、その点、厳しい視点でも考えておきます。何より日本で進路を考える以上に、長いスパンでビジョンを描いておきましょう。
※こちらは、2023年12月1日発行の「海外赴任ガイド2024年版」を元に作成しています。紹介内容が原文と異なる場合もあります。