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子どもを伸ばす「親力アップ法」
Question
思春期の子どもがアメリカ赴任帯同をきっかけに勉強に興味をなくしてしまいました。どのように接したらいいか迷っています。
Answer
日々の事を家族で話す
「子どもが勉強に興味をなくした」とのことですが、この解決法を心理学から考えていきます。
今まで慣れ親しんだ環境を離れ、生活状況が“根こそぎ”変わってしまう体験を「根扱ぎ(ねこぎ)体験」と言います。根扱ぎ体験での反応は、わくわくする人や不安でしかたがなくなる人など人それぞれで、新しい環境に適応していく過程やスピードもさまざまです。そのため、今まさに根扱ぎ体験の渦中にいるお子さんも初めての経験ばかりで戸惑うことが多く、適応するまでに多少の時間を要するでしょうが、自分なりの段階を経て成長されていくことでしょう。
根扱ぎ体験の中で重要なことは、「家族間のコミュニケーションが不変の存在として感じられること」。
そのことによって、子どもの心は支えられ、適応力を身につける準備が整うのです。そのため、その日あった出来事や気持ちなどを話しながら一緒に振り返る時間を持つことをおすすめします。
Advice
まずは子どもを認める
人の欲求について、アメリカの心理学者マズローは、「人はさまざまな欲求を抱えている存在であり、生理的欲求(一次的欲求)が充足してから、何かを達成し他者に認められたいという社会的欲求(二次的欲求)に移行する」と考えました。人間の要求は5段階で、次元の低いものから順にあげると、「生理的欲求」、「安全の欲求」、「所属と愛の欲求」、「承認の欲求」、「自己実現の欲求」から成り立っており、健全な人間形成にはこれらの欲求が適度に満たされていく必要があると言われています。
では、子どもが勉強したいと思うときのモチベーションはどの階層にあるのでしょうか。これは「承認の欲求」や「自己実現の欲求」といった高次の階層と関係しています。
根扱ぎ体験をしている中でこの高次の段階に達するためには、その前段階の要求が満たされているかも注意する必要があります。
つまり、勉強になかなか身が入らない場合、まずは新しい環境が本人にとって安全であることが分かり(安全の欲求)、友人との関わりや学校への所属感が確認でき(所属と愛の欲求)、周囲から認められ(承認の欲求)、自分らしさを発揮できる場面が増えてくること(自己実現の欲求)が大切なのです。
そのため、子どもの欲求を自己実現へと発展させられるように、家庭においてどんな些細なことでもいいので承認の機会を増やし、自信をつけてあげられるとよいでしょう。
生活自体も勉強と認識を
勉強とは何か、という問いを家族で話し合い、共通の認識を持つことも、焦りを計画に変えるきっかけになるでしょう。
つまり、将来子どもが社会に出た時に役立つ知識や経験を身につけるための勉強は、学校での勉強だけではないということに目を向けてみるのです。異文化での新しい環境下で、子ども自身が課題を発見・整理し、ひとつひとつ解決していくことは、課題発見、問題解決能力を養う勉強です。学校での勉強に一時的に興味が向かなくても心配する必要はありません。
また、異文化圏への適応という状況は、実生活で使える知識を獲得し応用する実践力を養うチャンスです。アメリカの教育学者デューイは、「知識とは環境に適応して生きていくためのひとつの道具」と唱えました。道具として役に立たない知識は絶えず修正され、役立つ知識を判別するためには、試行錯誤を重ね、自分で実験的に検証していくことが不可欠です。
「人が何か問題にぶつかったとき、いままで培った知性を働かせて原因をさぐり、状況に対処する合理的方法を模索こと」。
このように、能動的に未来を作り出していく知性のあり方を創造的知性と言います。この創造性を発揮するためには、まず行動することが前提になります。その際に重要なことは、子どもが行動できている間は、失敗であっても行動そのものを承認し、結果よりもプロセスを含めて褒めてあげることです。失敗はあらかじめ想定された可能性であり、ネガティブ評価を与える必要はなくむしろ解決法を創造する段階では不可欠なエッセンスなのです。
目標と手段を分けて考える
さて、行動することをより自由に感じるようになったら、目標を設定することで目下の状況だけにとらわれず長期計画を持つことができ、広い視野で課題を捕らえられるようになります。この目標設定の際に大切なことは、「目標と手段を分けて考えさせること」。目標=達成しようとしている事柄、手段=目標を実現させるためにとる方法です。
これを明確にすることによって、目標が大きなものであれば手段はひとつではなく複数みつかり、またある手段でうまくいかなくても他の選択肢を検討し再挑戦することができるのです。
目標の大きさについては、新しい環境へ移転したばかりの段階では、勉強課題においても生活課題についても短期間で達成できるような小さな目標を設定し、ひとつひとつ達成することで自信をつけ、少しずつ大きな目標へと発展させていくことがよいでしょう。行動力がついたころに、「3年後には?」「帰国したら?」「進学したら?」といった長期で達成するような大きな目標を設定します。
そして、いくつかの可能性と手段について家族で話し合うことで、子どもは視野を広げ、モチベーションを支えることができるでしょう。
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東京インターハイスクール
学習コーチマネジャー 山本亜希子
日本で大学卒業後にカナダの大学院で教育学(成人教育)を専攻。
東京インターハイスクール:東京都渋谷区にある通信制インターナショナル・スクール
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