海外赴任時に必要な予防接種や健康診断が可能な全国のクリニックを紹介しております。
健康管理・安全対策
環境の変化に対応
健康管理も仕事のうち
いつでも、どこにいても健康に気をつけることは大切だが、海外出張中は特別の配慮が必要である。体調を崩したり病気になったりすると、本人もつらい思いをするが、業務上も仕事が滞るなどさまざまな影響を及ぼしかねない。日本国内なら誰かがカバーできるようなことも、海外では手配できない場合が多い。健康管理も仕事のうちと心得るべきだろう。
そのためには「バランスのとれた食事、適度な運動、充分な睡眠」など日常の生活習慣を守ることが大切である。気候・風土、食習慣、衛生状態など現地の環境にたいする注意が必要なことはいうまでもない。
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気候・風土は多種多様
気候・風土は国や地域によって大きく異なる。一般に熱帯地方は高温・多湿だが、中東やアフリカの一部は高温・乾燥地域となる。温帯地域でも大陸の内陸部では想像以上の熱波や寒波に襲われることもある。
熱帯地域ではホテルやレストランなどの冷房が効きすぎているところが多い。長袖の上着が必要な場合もある。ホテルによっては冷房を切って寝るようにしよう。屋外の熱気と屋内の冷房の温度差で、体調を崩すこともある。
ミネラルウオーターも要注意
食習慣や衛生状態での要注意は飲料水である。途上国では伝染病の感染源となり、先進国でも飲料水が原因の下痢症になることがある。ホテルの水で「飲めます」と書いてあっても、水道の水は飲まないほうがよい。必ず一度沸騰させた湯冷ましや、ミネラルウオーターを飲むようにしよう。飲み物に入れる氷も同じである。
ただし、外国ではミネラルウオーターも要注意。日本で名の知られているものは比較的安心だが、国によっては炭酸入りのものが通常のミネラルウオーターとして売られている場合がある。炭酸入りは「Carbonated」、そうでないものは「Non-Carbonated」と書いてあるので、必ずチェックする。
生ものは口にしない
食中毒にも気をつけたい。東南アジア地域ではできるだけ生ものは口にしないで、完全に火の通ったものを食べるようにしよう。南国特有のフルーツ類は、食べ過ぎると胃が熱をもち、吐き気を催すこともある。屋台などで切り売りしているフルーツ類やフレッシュジュース類も要注意。
医者にかかったら証明書を
食事の前やトイレの後などに、手をまめに洗うことも食中毒の予防には欠かせない。もし体調がおかしいと感じたら、すぐホテルのフロントなどに相談する。健康保険加入者が現地で医療機関にかかった場合、帰国後に医療費を健保組合に請求できるので、証明を書いてもらうこと。
怖い伝染病
熱帯や亜熱帯地域では、蚊や虫に刺されないようにする。マラリア、フィラリア、デング熱、日本脳炎、ペストなどを媒介する危険がある。温帯地域にも毒虫や毒蛇がいる。不用意に草むらや茂みに入らないこと。犬や猫などペットの毛につくノミやダニが、病原体を媒介することもあるので注意しよう。
予防接種
「国際予防接種証明書」
海外出張や海外旅行に出かけるとき、大半の日本人は予防接種についてあまり気にしていないようである。しかし、中南米やアフリカのサハラ砂漠以南の諸国では、入国時に黄熱予防接種完了の「国際予防接種証明書」(イエローカード)の提示を求められることがある。東南アジアでも、国によっては日本脳炎やポリオの予防接種が必要な場合もある。
自己防衛の手段
成人の場合は、出張先国や地域によって接種したほうがよいワクチンの種類が異なるが、世界全域で推奨されているのはA型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病の4種類である。A型肝炎は飲み水で感染し、途上国では特に注意を要する。B型肝炎は血液や体液を介して感染する。破傷風は日本でも感染することがある土壌に潜む菌が病原体である。狂犬病は犬だけでなくリスやコウモリなどの小動物も保菌している。
これらの病気にかかる可能性はきわめて少ないが、予防接種は自己防衛の手段と思えばよい。接種しておけば安心して渡航できる。
予防接種は1か所で
予防接種はワクチンの種類によって、完了まで数か月かかる場合もあるし、体調がいいときに受けるのが絶対条件である。まずは当該国や地域の感染症情報を集め、必要なワクチンの種類や、接種をいつ、どこで、何回受けるかなどを決めなくてはならない。
CDC(米国疾病研究所)や国立感染症研究所などのホームページを検索すれば、感染症危険地帯やワクチンなどの最新情報が確認できる。また、かかりつけの医師に相談するか、近くの保健所に問い合わせればよい。
自宅か勤務先の近くで受けられると便利だが、ワクチンを常備している医療機関は限られる。ワクチンごとに接種場所を変えると期間や手間もかかるので、一か所ですむところを選びたい。
途上国ではリスクも
予防接種は出国前に受けておくのが理想だが、インフルエンザb菌ワクチンなど、日本では接種できないものもある。必要な場合は現地で受けることになるが、途上国での予防接種はリスクが高いので要注意。外国人へ接種経験のある医療機関で受けるようにしよう。
海外の医療事情と医療保険
ホームドクター制
医療事情は国や地域によって異なるが、先進国では専門分野が細かく分かれ、ホームドクター制がとられている場合が多い。ホームドクターとは「かかりつけの医師」のこと。一般的な病気の診断や治療、健康管理のほか、専門分野の診断が必要なときや症状が重い場合は、専門医や総合病院の紹介・取次も行う。
ホームドクター制であっても、新規の患者を診察することはいうまでもない。海外出張中に病気になった場合は、診察・治療をしてくれるし、病気によっては専門医や総合病院も紹介してくれる。
医薬分業制
海外では医師の処方箋に従い、患者が薬局から薬を購入する医薬分業が主流となっている。原則として薬局では、医師の処方箋がないと抗生物質を含んだ軟膏類も販売しない。処方箋がなくても購入できるのは風邪薬、胃薬、ビタミン剤くらいである。それらの薬も現地の人の体格に合わせてあるから、欧米諸国では日本人には強すぎることが多い。
常備薬
安心のためには、出張中の常備薬として日本の薬を持参したほうがよい。胃薬、風邪薬、頭痛薬、傷薬、虫さされ用の薬、包帯、絆創膏くらいは用心のためにも必要だろう。渡航先によっては、防虫スプレーなども用意したい。
海外の医療保険
先進国と途上国とでは、医療保険事情が大きく異なる。アメリカとヨーロッパ諸国でもかなり違う。アメリカは公的健康保険制度がなく、民間の医療保険が普及している。ヨーロッパなどの先進国は公的健康保険制度があり、保険金の一部を雇用企業が負担するなど、日本の健保制度と似通ったシステムになっている。
ただし、海外出張の場合は、海外旅行傷害保険や海外駐在員総合保険などでカバーするのが一般的である。
治療費払い戻し制度
日本のほとんどの健康保険には海外で支払った医療費に対して、規定の金額を払い戻す制度がある。必要書類をそろえて、加入している健保組合に提出すれば戻ってくる。
欧米の病院などで病気やケガの治療を受けると、国によっては日本の10?20倍の治療費や入院費を請求されることがある。もしものためにも、必ず保険に加入しておこう。また、治療を受けた場合は、領収証を保管しておくこと。
インターネットの医療相談・医療情報
近年はインターネットで、医療相談や医療情報をいつでも手軽に検索できる。外務省や検疫所のホームページ(HP)にアクセスすれば、海外の医療情報が見られる。
「インターカルテ」のHPでは、無料で世界51都市の最新医療情報が検索でき、会員登録すれば多彩な医療サービスが受けられる。的確な医療アドバイスだけでなく、問診に答えると患者の症状が英語でプリントされる。それを現地の医師に見せれば、微妙な自覚症状のニュアンスまで伝えることが可能になる。ほかにも日本の医療法人や財団法人のHPがそろっており、海外からでもアクセスでき、世界中の日本語が通じる医師のリストなども見つかる。
安全情報の収集
役立つ経験者の話
海外出張が決まったら、まず出張する国(地域)・都市の治安や犯罪の状況などを知っておく必要がある。関連するガイドブックやパンフレットなどに目を通して最低限の知識を吸収しておこう。出張先に関するインターネットのホームページなどで、必要な情報を入手するのもひとつの方法である。出張先の言葉がわかる人は、そこで発行されている新聞や雑誌なども読んでおこう。有力な情報源となる。出張経験のある人の現地の治安情勢などについての話も役に立つ。
領事サービスセンター
一般的な安全情報については、外務省の領事サービスセンターの情報が信頼できる。世界各国の犯罪事情や治安情勢のほか、伝染病など保健・医療分野の安全情報もホームページ上で提供している。
企業の危機管理
近年、世界各地でテロや誘拐事件などが頻発していることもあって、多くの企業・団体が安全対策や危機管理に力を入れている。それぞれ独自のマニュアルを作るなどして意識の啓発に取り組んでいる。出張前にマニュアルの説明会や研修会、講習会などがある場合は、できるだけ参加して予備知識を身につけておこう。
専門業者に依頼
出張者の安全を守るため、企業や団体が危機管理の専門業者に依頼するケースも増えている。サービスの内容は、危機管理体制の構築や危機管理マニュアルの作成、渡航先の危険情報の提供、シミュレーショントレーニングなど多岐にわたっている。
在外団体の安全活動
日本在外企業協会や海外建設協会、国際協力事業団などでも、企業・団体などに危機管理や安全対策の情報提供、マニュアルの配布などを行っているので、上手に活用したい。
出張先での注意事項
夜間の外出は避ける
出張先での外出は避けられないが、用件はできるだけ昼間済ませるように心がける。少人数での夜間外出やひと気の少ない街への外出は、できるだけ避けたい。出かける前に、ホテルのアシスタントマネージャクラスに「安全」についてアドバイスしてもらうのもひとつの方法。行き先がはっきりしている場合はタクシーを利用したほうがよい。
置き引きに注意
身の回り品の取り扱いにも注意が必要。荷物の置き引きなどが多発している都市では、電車やバスなどの乗り物の中が危ない。街中で、すりやひったくりに遭わないように、都市によってはできるだけ歩道の真ん中を歩くことも必要。レストランなどでは、荷物をイスの背に掛けたりテーブルの上に置いたりするのも無用心である。
現金とカードは分けて持つ
現金は、できるだけ分けて持ち歩いたほうが安全である。大きな現金は身につけ、バッグの中の財布には最低限必要な紙幣と小銭を入れるなどの工夫が必要。また、現金とクレジットカードを一緒にしない。
貴重品はセーフティボックスへ
まとまったお金や航空券、パスポートなどの貴重品はホテルのセーフティボックスに預けておく。ただし、パスポートがないと身分を証明できないので、必ずコピーを持ち歩く(コピーは白黒でもよい。表紙と1頁目の見開き、当該国の入国記録・ビザのページ)。
異性の接近に警戒
ホテルや路上などで見知らぬ人が用もないのに近づいてきた場合は要注意。下心があると思って間違いない。特に海外で知り合った日本人異性には注意したい。国や地域によっては、ホテルの従業員などにも警戒したほうがよい。
「抵抗」より安全の確保を
武器で脅かされても抵抗や反抗はしない。抵抗が命取りになる場合もある。悲鳴を上げただけで殺された、などという人もいる。現金を渡すなど、まずは安全が確保される方法を考えよう。
不審者は近づけない
現地で麻薬などの薬物を所持していたら、まずは重刑と思ったほうがよい。街中で気が付かないうちに買い物袋の中に麻薬を入れられていた、などということもある。不審者は近づけないよう十分な注意が必要である。
緊急時に備えて
出張先で緊急事態に遭遇したときは、慌てず冷静に行動するようにしよう。さまざまな情報が錯綜するので、テレビやラジオ以外に日本大使館や日本の本社などにも問い合わせ、より正確な情報を入手するように心がけたい。避難する場合は単独行動を避け、大使館や本社の指示に従って行動する。
緊急時に備えて、個人の連絡先を記入したメモを常に持ち歩くようにしよう。パスポートやIDカード、航空券、現金、契約書など貴重品や重要な書類は一か所にまとめて、いつでも持ち出せるようにしておくと安心である。貴重品のリストを作っておくとあとで役に立つ。
事務所・工場での備え
緊急時には、出張先の事務所や工場などにある携帯電話やFAX、小型無線機、トランシーバー、パソコンなどの通信手段を有効に使いたい。テレビやビデオはMULTI(最低限PALとNTSC両用)を選ぶとともに、CNNなどの有料回線と契約しておくと安心できる。ラジオやラジカセは、短波も受信できるもの(3~5バンド)で、できれば周波数指定・自動追跡装置やタイマー付きのものがよい。
インターネットテレビ電話も便利
通信も一般電話、携帯電話だけでなく、CATVなどの有線回線も確保しておきたい。プロバイダは出張先の国、日本、アメリカなどいくつかに分けておくと安心できる。出張先の事務所のスタッフが手分けして契約しておくのもひとつの方法である。インターネットテレビ電話などもあると便利である。
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