クリスマス明け、ふと家を出るとこんなことになっていた。
一日で積もり過ぎ。
おかげで武道の練習はキャンセル。
外出もできないので今日は早く寝ようかなと思った矢先、深夜一時に電話が。
「今すぐ○○学校に来れるわね?」
あ、赤十字からだ。
深夜なので今からは、、と一瞬戸惑ったが、即答でYes。
急いで準備に取り掛かったところ、再び電話が。深夜組は人数が揃ったので朝7時~昼3時のシフトに変更してくれと頼まれ、快諾。
だが、なぜだかそのまま徹夜してしまい、朝6時に出発。実は僕は09年にすでに米国赤十字社が課しているトレーニングを修了し、正規ボランティアとして登録されIDも持っているにも関わらず、(しかもその後約15時間のトレーニングも受けている)実際に現場で働くのはこれが初めて。
今まで何回か出動要請を受けたことはあったのだが、次の日がテストだとか、一週間泊り込みで働いてくれとか無理なケースが多く毎回断っていた。
電車で数駅先の駅まで行き、雪道をえんやこらと歩くこと数分、中学校に到着。
今回の大雪のために家を出なければならなくなった方々のための避難所(シェルター)を、赤十字が学校の講堂に設置。
僕が到着時、避難されてきた方々は計62名。その方々を赤十字のスタッフ1名、ボランティア4名でサポート。
僕は今回初めてだというのに、ほとんど何も説明は無し。
着いた途端いきなりスタッフ(リーダー)から指示がきて働き始める。
逃亡癖があるおじさんを見張る役は大変だった。
おじさんが避難所から逃げ出さないようにぴったりマークしつつ、彼の愚痴の相手をする。
どうやらおじさんの話によると、彼の家の屋根が今回の大雪で抜けてしまったそう。
「俺の家はもうなくなった。もう金も大事な書類も全部雪の中だ。もう全てがダメだ」
おじさんの顔を見ているだけでかわいそうになってきた。
暖かいコーヒーを作って、ゆっくり話を聞いてあげることくらいしか僕にはできない。
一時間が経過したところで、ボランティア4名が一斉に帰宅。
次のボランティア隊はいつくるのかと思ったら、僕以外全員遅刻(寝坊?)らしい。
ということでいきなりサブリーダーに指名され、ここからが大変だった。右も左も分からないのに質問攻めにされ、本部との連絡などてんやわんや。
しかし、他の経験豊富なボランティアが到着するやいなや、今度は急に暇に。
役職も在庫係に一気に格落ち。
在庫係の仕事は、
1. ホームレスの方々が決められた分量以上の食料を取らないように監視
2. 現在残っている食料や水の分量をチェックし報告
3. 食べ残しなど拾って捨てる
ようは、一番下っ端の掃除係みたいなもの。
仕事が急に楽になりプレッシャーは無くなったのだが、なんだかすごく寂しい感じが。。。
まぁ組織としての仕事が少なかったおかげで、一人一人の方々の世話をすることに時間を割くことになった。
避難されている方々全員と仲良くなり、帰り際は「もう行っちゃうの?明日も来るんでしょ?」と口々に言われ、避難所を去る時は後ろ髪を引かれる思いでつらかった。
避難所で二泊目のおじさんは、簡易ベッドのせいで腰痛がひどいと言っていた。シャワーも浴びれてないそうだ。かわいそうでしょうがない。
入ってくる情報によれば市は夜通しで彼らの家の修復作業をしているそうだ。少しでも早く彼ら全員が安心できる場所に戻れることを願うばかりである。
今回働いてみて、赤十字の充実した装備・ネットワークには感心させられた。
バスで各避難所まで配給される食料はサンドイッチ&ブリトーだったが野菜も肉もたっぷりで栄養がしっかり考えられているのか、かなり美味しかった。またどうやって運んできたのか分からないが食べる時にしっかり温まっているのも驚いた。さらにはベジタリアン用の野菜だけのメニューもあった。
飲み物はスポーツドリンクに加え、紅茶からコーヒーが余りあるほど何種類も用意されているし、暖かいお湯もすぐに手に入る。
各人に配られる救急セットもかなりの充実ぶり。歯ブラシや剃刀など様々なグッズが入っていて、小旅行に持って行くのに良いのではと思う。
赤十字ブランケットもデザインがかっこいいので、こんなことを言っては本当に避難することになってしまった方に失礼だが、このブランケットをもらいに避難所にお世話になってもいいと思ってしまったくらいだ。
無線や電話で必要な物資を本部に連絡すると、大雪にも関わらず遅れずに配給バスが到着したし、何よりリーダーである赤十字のスタッフはかなり優秀だった。
見知らぬ人と同じ部屋で風呂にも入らず数日暮らさなければならないということもあり、当然ストレスが溜まりイライラして怒り出す人もいるのだが、その度にスタッフは冷静に対処して全体の場の雰囲気を和ませていた。
こんなことを言ってはいけないのかもしれないが、一つの事実として、こういう避難所に来られる方々の大半は低所得者である。
見た目が怖そうな方々もいらっしゃったし、こういう方々を説得するのは非常に大変なことだ。ちょっと間違えればこちらが危険な目に合うことも十分想定される。スペイン語や中国語しか話せない方もいらっしゃったが、一人一人に非常に丁寧に対応していた。
僕らボランティアへの仕事の割り振り方も非常に的確。
まず、初めに会った時に過去の経験(たとえば今まで赤十字ボランティアは何度やったことがあるの?とか)を聞かない。仕事をいきなりやらせて、それでその人がその場で何ができるかすぐ判断して次の仕事を割り当てる。
今日その場に集まったメンバーの特徴を最短距離で見つけ出し、適材適所に振り分ける。
いくら過去に100回ボランティアをしてようが、新米の5回しかボランティアしてないけど筋が良い人の方が優れているなんてことは良くある。
僕がすぐに在庫係に降格したのも、僕があたふたしている姿を見て「この男、掃除以外何にもできないな」と判断したのだろう。
特にボランティアという、毎回メンバーが変更する一時的な戦力を使いこなすにはこういう能力がないとだめなんだと思う。
素晴らしいリーダーシップだった。
僕が今回働いた避難所は、今回の大雪でNYに設置されたいくつもの赤十字避難所の中でも小さい方に入るかもしれない。
でもおかげで全体の仕事が見れて、大変素晴らしい経験になった。
やはり数あるボランティア団体の中でも赤十字を選んで良かったなと思った。
あとはみなさんが一日でも早く家に帰れますように。
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