先日、筆者の専門分野において最も大規模な学会が開催されました。アメリカをはじめ、世界から研究者・産業界の技術者が集まります。
日本の教授、学生による発表もありました。はるばる米国まで渡航されて発表されるだけあって総じて内容は優れていました。一方、日本人に共通する問題として、「表現力の乏しさ」が感じられました。
一般的な日本人にとっては英語で発表すること自体がハードです。多くのNativeの方々、Speakingにおける文法間違いなどに対しては寛容と思います。しかしながら、「表現力」が乏しいとどうしてもコミュニケーションが限定されてしまいます。表現力に乏しい発表に対して聴衆が強い関心が保てるのは稀です。
日本人の方でも発表が上手な方もいらっしゃいます。問題は、表現力に関するまともな教育が日本ではなされないため、表現力の良しあしが個人に依存しすぎてしまうことだと思います。
どのような点が問題なのでしょうか。日本人が陥りがちな問題として以下があげられます。
?発表の際に、スライドばかりを見て聴衆をほとんど見ない。また声が小さい
?いきなりディテールの話に入るために、なぜその研究なのかが弱い
?結局のところ何を聴衆に対して主張したいのか(Take home message)が弱い
?詳細の正当化のために、枝葉の情報が多すぎる
これでは、何のために発表をしているのかと疑念を持たれてしまいます。
筆者の所属する研究グループではNative学生も含め、スポンサー会議の前に何度も発表練習して表現力を鍛えます。実験や解析結果に主眼をおくのではなく「ストーリー」を伝えることが重視されます。実験・解析結果を踏まえた発表者の主張を伝えるのです。
また、研究の動機を効果的に伝えるためには、「現状は○○であるが、××に問題がある。それを解決するために研究△△が必要である」、というようなSwales movesとよばれるIntroductionが有効です。
聴衆にはスライドではなく発表者自身を主に見てもらうように努めます。発表者自身がスライドばかり見ていたら、聴衆は自分を見てくれません。またスライドに情報が多すぎると、主要なメッセージが弱くなるし、文字や図面が小さくなります。
こうした表現力に関する問題意識を指導者(教授など)が強くもつ必要があると思います。これは、英語での発表に限った話ではないですよね。さらには、学会発表に限らず、Writingにも当てはまります。本件、以前紹介した本「The art of being a scientists」にも詳しく書かれています。
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