私の通勤の足はバスである。私の利用路線はビクトリアのバス路線の中でも利用客が多いせいか、本数も多く、深夜まで運行しているのでとても便利だ。
バスに乗って職場の最寄のバス停に着くまで15分~20分程だが、本を読むには中途半端なのでたいていバスの中の様子を観察(と言ってもただ眺めているだけ)しているのだが、乗客を見ると
カナダは移民の国だ
と思う。乗客の割合は白人50%、アジア系30%、その他20%くらいだろうか。バスの中では英語以外の言葉を耳にすることもよくある。また服装にもお国柄がよく出ている。日本でも外国人を見かけることはあったが、こちらで通勤するようになって、初めてムスリムの女性を間近で見かけるようになり、ムスリムと一口に言ってもずいぶんちがうもんだなと感じている。
私がESLコースに通っていた時のクラスメートの女性は中近東(多分イラン)出身だったが、スカーフをかぶってなかったし(自国でかぶっていたかまでは不明)、服装も私たちのようにシャツとジーパンだった。(もしかしたらムスリムじゃなかったのだろうか??)
次に会ったイラク出身の女性は、体を隠す服装(頭はスカーフで隠していた)だったが、顔は隠していなかった。自国ではインテリ層に属していたが、ご主人を政府に殺され、子供を連れてカナダに亡命してきたそうだ。彼女は仕事探しで苦労していた。というのも面接に行っても採用の条件としてスカーフを取って、動きやすい服装をして欲しいと言われるからだそうだ。彼女にとって外でスカーフを外したり、体の線を出す服装をすることは考えられないらしく、なんとか今の服装のままで働けるところを探したいと言っていた。
通勤途中でよく見かけるのは、スカーフで頭髪を隠してはいるものの服装は普通というパターン。とは言え肌を見せるのはだめなのか、スカートや短パン、半袖を着ていることはない。スカーフの素材もいろいろだ。
最近バスで見かけるようになった女性は、裾広がりな服(ドレスみたいに踵まで丈がある)にスカーフ、顔はベールをたらし目の部分以外全て隠している。彼女の服装は私がイメージするイスラム女性そのものである。基本的に誰がどんな格好をしていても乗客は気にしないが、初めて彼女がバスに乗ってきたときは周囲がハッとしたのを感じた。彼女の周りだけアラブの香りがするようだった。
彼女はいつも同じ男性とバスに乗ってくるのだが、彼の服装はシャツにジーンズと至って普通なので余計に彼女の装いが目立つのかもしれない。あれだけ全身覆っていたら暑くてつらそうな気もするが、服の素材をよく見ると麻のようなシャリ感があり湿気の少ないカナダでは案外快適なのかもしれない。
不思議なもので、あれだけ隠されていると中身が妙に気になってくる。ベールを外したらどんな感じなんだろう?(目元だけでも綺麗な人だいうのはわかるが)あの裾広がりの長い服の下には何を着ているのだろう?(これが俗に言う「ちらリズム」の魅力なのだろうか)
バスにはよくインド系の人たちも乗ってくる。(ターバンを巻いているのでそうだと思うが、もしかしたらイスラム系かもしれない)この前は3人のターバンを巻いた老人が途中から乗ってきて、バスの前にある長めの椅子に座ると自国の言葉で夢中になって話を始めた。そこだけ見ているととてもカナダにいると思えない、インドのどこかを旅行をしているような気持ちになり、なんとなく彼らを見ているとターバンの巻き終わりの位置がそれぞれ、左、真ん中、右とちがっているし、ターバンの高さも全然ちがうことに気がついた。個人的な趣味なのか何か特別な意味があるのかわからないが、少し意外な発見だった。
単調だが案外楽しめるのが通勤時間だ。
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