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心の支えるとなることば その47 「はじめにことばがあった」

私の父親が亡くなったとき、机に日記がありました。それには「今日は誰と会って誰と話をしたか」というエピソードを必ず記されてありました。この日記から本人は96歳になっても人と会話することを気にしていたことがわかります。人と会うこと、そしてことばを交わすために散歩を欠かさなかったことが伺えるふしもあります。

人との出会いや対話は人間の基本的な行動といえます。それについて思い出すのは、母親などとの接触がなくて育てられた赤子とその後の成長の姿です。不幸にして施設に入れられて育った子どもには感情の表現が少なかったりすることが報告されています。また、「アヴェロンの野生児」として森の中で発見された子どもは、全く言語がなく動物のような行動をして注目されました。発見当時は11歳くらいだったようですが、その後の成長は困難だったといわれます。

マーチン・ブーバーという人が、「我」と「汝」が語り合うことによって世界が拓けていくという難しいことを提唱しています。わたしとあなたとの出会いのことです。それは友達や恋人との出会いでもいいのです。「人は独りではない 」ということです。相手と自分を関係性として捉えること、すなわち対話によってその「永遠のいぶき」を感じとることが不可欠だとブーバーは語ります。相手という精神的存在と交わるためには、相手を単なる対象として一方的に捉えてはいけないのだと教えます。

「はじめにことばがあった」。ヨハネという人が書いた福音書の冒頭のことばです。ことばによって互いに「わたし」を主張できます。そして「あなた」も理解できるのです。ことばが可能にする意思や感情の伝達は、私たちに与えられた恩寵といえましょう。ことばはまさに霊と智恵の泉です。

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教育学博士:成田校長(めいほうかん高校)のブログ

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明蓬館高校の校長にして教育学博士の成田滋校長が、アメリカウィスコンシン州の院生時代や教育、自身の子育てに関してつづります。

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