自然にはバランスがあるとか、自然には均衡があるといわれます。私たちは、かつてはそんなことを気にしないで生きてきました。「自然は蘇えり復元する力をもっているから、開発の影響なんてちっぽけなことだ、、、」とうそぶくこともありました。勝手な驕りです。わが国にも生息していた珍しい動物が絶滅しました。オオカミもコヨーテもいたといわれいます。今の田舎では、イノシシや鹿が里におりてきて木の皮や野菜を食べつくしています。農家の人々はたいそう困っています。畑の周りに電線を張り巡らしてもそれを飛び越える、人の脅し声を流してもそれに慣れて怖がらないのです。動物は人の知恵を出し抜く力を編み出しています。昆虫は昆虫なりに抵抗力をつけています。病原菌については、薬品に対する抵抗性の問題がでてきました。ある種の病原体に効く農薬をつくりそれを散布するとします。病原体はほとんど死滅しますが、不思議なことに一部のものが生き残り、ふたたび増殖するのです。そして次世代へ遺伝していきます。レイチェル・カーソンは警鐘を鳴らします。「日本のコメ作りは世界農業のなかで最も多くの人手を要し、最も土地あたりに生産高をあげてきた。つまり本来の自然の姿からいえば、最もはなはだしいバランスの破壊を前提にしている。」このことを指摘したのはなんと1964年のことです。彼女がいわんとしているのは、農業に強力でしかも沢山の種類の農薬を使い過ぎていることを心配することなのです。その代償として彼女は、有機農法とかアイガモ農法など非化学的な方法の開拓を訴えます。合成化学肥料を使用しないことに加え、有機肥料の利用が叫ばれています。有機肥料の多くは農産廃棄物、畜産廃棄物、林産廃棄物などを熟成させたものです。ですが有機肥料による単位面積あたりの収量が低い傾向があります。それに伴う価格の高騰も庶民に跳ね返るという課題もあります。この矛盾をどのようにしたら解決できるかが問われています。 続きを読む