作家レイチェル・カーソンが著した「ものみな萌えいずる春」(Silent Spring)という本には次のような一節があります。「アメリカでは、春がきても自然は黙りこくっている。そんな町や村がいっぱいある。いったいなぜなのか。そのわけを知りたいと思うものは、先を読まれよ。」地球は、生命と環境という二つのものが織りなして存在しています。環境のお陰で生命が維持されているといったほうがよさそうです。空気、山、河、海、畑などに依存しているのが人間や動物、植物です。あまりにもそのことが自明なために、人々は環境への依存とか環境との相互の関係に鈍感になっていたということも指摘されます。。前回、DDTという殺虫剤にまつわる私の小さいときの体験をお話しました。この化学薬品によって日本などでは皮膚病などから解放されました。ですがDDTはガン性があり、体の成長や生殖に必要なホルモンの作用を阻害する環境ホルモンとして機能することがわかったために、先進国では全面的に使用が禁止されました。それにもかかわらず、発展途上国ではマラリア対策や田畑での農薬としての使用は今でも続いています。農薬のために猛禽類や水棲生物の減少によって生態系が壊れていくと、今度はDDTに耐性を持つ生物が増えるという結果につながります。DDTの怖さです。DDTは自然界で分解されにくいため、土壌や水循環に長期間にわたり残留し、魚や家畜の食物連鎖を通じて人の体内にも取り込まれます。その一例がベトナム戦争でアメリカが散布した枯れ葉剤による影響です。恐ろしい中毒性の中枢神経疾患という障害で多くの人が悩んでいます。Silent Springという本は、化学物質が環境破壊の元凶であるという見方もされたために、極端な環境保護運動を引き起こしたという批判も生みました。ですが生物と環境が相互に依存しあうという生態系の大切さを訴えたことで大きな評価を得ています。 続きを読む