ある山間部に小さな集落があって、そこでお年寄りになってしまった人々がひっそりと畠を耕して生計をたてています。子どもたちは山を下りて仕事をし、もはや跡を継ぐ者がいなくなりました。土が痩せているために、人々は秋になると落ち葉を集め堆肥をつくります。こうして有機土壌をつくりそこに芋などを植えます。堆肥によってできる野菜は美味しいことを知っています。畑仕事で最も大事なこと、それは良い土をつくることに尽きます。ここにたとえ話があります。人が播いた一粒の種が道ばたに落ちてしまいました。すると鳥がきて食べてしまいました。別の種は土の薄い石がごろごろするところに落ちました。すぐ芽を出したのですが、そこは土が深くないので、日が上ると枯れてしまいました。また他の種はイバラの中に落ちました。するといばらが伸びて、ふさいでしまい実を結びませんでした。幸い他の種は良い地に落ちました。そしてはえ育って、ますます実を結び、三十倍にも百倍にもなりました。教育とは人を育てることに尽きます。教育の土壌とは一体何でしょうか。家族、学校、地域社会、そして教育を大事にする人々の精神性です。学問を大事にする風土と志がこの国を支え発展させてきました。人には固有の価値や能力があり、それを延ばして社会を幾重にも形成していくという役目があります。等質な考えではなく、異なる考えをよしとする精神性が求められています。 続きを読む