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When doves cry

 
 
※  心臓の弱い方は 読まないでください。
 
 
 
タイトルは 言わずと知れた 80年代の プリンスの名曲。
 
 
 
訳があって 久々に聞いてみたが やはり 今聞いても 新鮮ですばらしい曲だと思った。
 
 
物悲しい曲調に 本来は 鳴く鳥ではない ハトの嘆きを歌ったこの曲。
 
 
日本人は 「 ここの文法はこれでいいのか?」とか 「 冠詞がおかしくないか? 」とか
 
英語の歌詞を ザクザク切り刻んで 頭で 理解しようとする人がいるが
 
 
曲と 言葉の雰囲気を だた単に 心で「 感じる 」というのも 楽曲の楽しみ方だと思う。
 
 
 
同性愛を歌った曲だとか 家族愛とか もっともらっしい解釈をつけたがる人もいるが
 
 
この曲が唄う 悲しさを ぜひ ハートで感じてほしい。
 
 
 
 
 
さて なぜ こんな古い曲を 突然 思い出したかというと ある事故が きっかけだった。
 
 
 
 
ある晴れた日の昼下がり リビングで 書き物をしていた私は 家全体に ドンと響く音を聞いた。
 
 
 
 
一体 何の音だろう?
 
 
 
何かが 家にぶつかったような音。
 
 
 
近所の子供が遊ぶ ボールがぶつかったような・・・・。
 
 
しかし 子供の声は聞こえないし しばらく待っても 追加の音は 何も聞こえてこない。
 
 
 
ひょっとして 嫌がらせ?
 
 
 
家に向けて 何かを 投げられたか?
 
 
 
 
一体 誰が? なぜ?
 
 
 
 
ガラスが割れるなど 特に 家に 被害があったわけではなかったが、
わたしは この音の正体を 何が何でも 突き止めなければならないという 気になっていた。
 
 
 
 
外に出て見る。
 
 
 
 
 
特に変化はない。 道行く人も 普通。
 
 
 
 
 
続いて ベランダに出てみる。
 
 
 
 
同じく 平和な 日本の昼下がりの風景が 広がっている。
 
 
 
 
 
気のせいだったのか?
 
 
 
 
 
いや 確かに 音は聞こえた。 何かが ぶつかったような音だった。
 
 
 
 
 
何だったんだろう?
 
 
 
 
 
そして 左方向を向いたとき ガラス窓に 見慣れない 汚れが ついているのが見えた。
 
 
 
 
やはり 何かを ぶつけられたのだ。
 
 
 
 
 
一体 何だというのだ?  私たちが 何か恨みを 買うことをしたのだろうか?
 
 
 
 
下を見る。
 
 
 
 
次の瞬間 息をのみ、 そして わたしは 何が起こったのか すべてを 悟った。
 
 
 
 
 
思わず 両手で口をふさぐが 嗚咽が 漏れる。
 
 
 
なに、わたし、ハリウッド映画みたいなことをやっているんだ、と思うが
 
 
 
涙が 自然に あふれてくる。
 
 
 
肩がすくみ 体の震えがとまらない。
 
 
 
足が 勝手に ガクガクする。
 
 
 
とんでもなく 恐ろしい光景だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
タイルの床に 無残な姿で落ちていたのは 一羽のハトだった。
 
 
 
我が家の ガラス窓に 何を思ったか 超速球で飛んできて激突し
 
 
 
そして 即死していた。
 
 
 
 
 
窓枠には 数枚の羽根と 衝撃で飛び散った 細かい肉片が へばりついている。
 
 
 
 
 
こんな事があるだろうか?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ショックで ほとんどパニックのわたしだったが 1%の現実が見えていた。
 
 
 
ハトが死んでいるのは 子供部屋から見える場所だ。
 
 
 
子供たちに この惨劇を 見せるわけにはいかない。
 
 
 
ラッキーなことに? 二人とも 学校から帰ってきた後 お友達と近所の公園に遊びに行っていた。
 
 
 
子供たちが帰ってくる前に なんとかしなければ。
 
 
 
火事場の馬鹿力で 母は 子供のためなら 途方もないことをしでかすことがあるが、この場合は 例外。
 
 
 
とにかく わたしは アメリカでターキーをまともに見ることすらできなかったほど 鳥類が苦手。 
 
 
 
滞米3年で やっと 小さな鳥の丸焼きが 食べられるようになったぐらいである。
 
 
 
日本にいた頃も 鶏肉についた血が苦手で ケンタッキーでも 骨付き肉は一切食べず、ナゲットばかり食べていた ヘタレである。
 
 
 
まさか さっき死んだばかりの ハトの死体を 処理できるわけがない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
わたしは 夫の会社に 電話した。
 
 
夫は わたしの あまりの動揺ぶりに 子供たちに 何か重大な事故があったのかと思ったそうで 結末を知った時には 別の意味で 腰が抜けたそうだ。
 
 
会社が 幸い 近かったこともあり 夫は 一旦 職場を抜け出し ハトを始末してくれた。
 
 
その直後に 子供たちが帰ってきて 子供たちは何も知らないまま 事なきを得たが
それにしても びっくりした。
 
 
 
以来 頭の中で やたらと鳴り響くようになったのが when doves cry というワケ。
 
 
 
 
ある心理状況になった時、 わたしには ぴったりの洋楽が 浮かんでくることがある。 
 
 
まさに この時が そう。
 
 
 
 
 
 
ハトは 断末魔の叫びを あげただろうか?
 
 
 
彼は 生まれた時に 自分の人生が こんな風に終わりを遂げると 想像しただろうか?
 
 
 
ヒトの人生だって 一寸先は闇。
 
 
 
どんな結末を迎えるかなんて 誰にも わからない。
 
 
 
 
窓ガラスには よっぽどの衝撃だったのか 翼をひらいたハトの形と 体の模様までが はっきりと残っている。
 
 
 
 
 
自然と人間が 共存するには 必ず犠牲が伴なう。
 
 
 
アメリカでも 高速道路で たくさんの動物の轢死体を見た。
 
 
ネズミ、リス、タヌキ、スカンク、キツネ、シカ・・・・。
 
 
あんまりにも見すぎて 1年もたつと 何も思わなくなってしまった。
 
 
目の前の車が リスを轢き、 車がガタンと傾いたこともある。
 
 
 
それでも 今回の件は それらを上回るショックだった。
 
 
 
プリンスの名曲とともに 小さな命を弔いたいと思う。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ハトよ。
 
 
 
頼むから 我が家のクリスマスツリーに 停まろうと思ったとは 言わないでほしい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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