みみの小学校で今度、親の集まりがあるということが分かった。
私はそこで思いついた。
"そこで私、スピーチさせてもらおう”
なんで日本人の子供が入ってきたの?という疑問を持っている人もいるだろう・・。
でも、聞いては来ない。
なんだかタブーだと思っているかのように・・・。
なんか怪しい家族だと思われているのではないだろうか。
幼稚園の頃は、通いだして数日経っていたのにもかかわらず、
「旅行ですか?」とトンチンカンな質問をしてきたお母さんがひとりいた。
「これから仕事を探すのですか?」と聞かれたこともあるけど。
違う!ここにある日本企業に、転勤で来ているんです!
私が、自分から皆さんに説明すれば???
きっと私の気持ちを分かってくれるハズだ。
私は朝、校長先生にお願いした。
先生は快くOKしてくれた。
そして、文章を作り、私のフランス語のドミニック先生に見せて直してもらった。
”みなさん、こんにちは。私はみみの母親です。
今日は少し説明をさせてください。
ブザンソンにはひとつだけ日本企業があります。スタッフは地元の方ですが、1人だけ日本人スタッフが駐在しています。
そして、それは私の夫です。
私達の前に駐在していた人はいましたが、今まで子供がいる家族が駐在したことは一度もありませんでした。
私達は数年、ブザンソンに住みます。
みみは、ブザンソンに来た時、全くフランス語が話せませんでした。
しかし、今は学校の中での会話はだいたいできると思います。
でも、もちろん皆さんのお子さんと同じようには話せません。
しかし、フランスは、みみにとって第二の故郷です。
私はみみに、フランスを好きだと思ってもらいたいし、私自身もフランスも沢山知りたいと思っています。どうぞ宜しくお願いします。”
みたいな感じの文章を作った。
ドミニック先生は、
「あなたは本当に勇気がありますね。」とおっしゃってくださった。
当日・・・・・
私は、大勢の父兄の中に座っていた。
前で校長先生がお話をしていたが、何も頭に入らない・・・・・。
ただただ、ずっと頭の中で考えてきた文章を繰り返し暗唱していた。
しかし・・・なんと校長先生は
「では、これで終わりです。解散。」
と締めくくってしまった・・・。
”え?!!!”
びっくりする私・・・。
父兄が帰って行く方向とは逆に私は校長先生のいる前へと・・・。
「先生、私、お願いしましたよね・・・?」
「ああ、、、忘れてました。」
ええ・・・忘れてた・・・?
怒りと・・・悲しみと・・・が一気に襲ってきた。
どんな思いで文章を作ってきたかわかる・・・???
帰り道・・・私は無言・・・娘は後ろからついてきた。
どうして?どうして、いつもこうなのだ?
前に進もうとしても何も生まれない・・・。
数日後、今度はクラスの集まりがあるということだった。
私は、どうせなら、大勢に伝えたかったのだけど、クラスでも仕方ない、スピーチをしようと決めて担任の先生に頼んだ。
クラスの集まりの当日もやはり私はずっと暗唱・・・!
先生は最後のほうに私にチラっと目をやり、
「みなさん、このクラスには外国人もいます。仲良くしてくださいね。」と言い、
「それではこれで、終わりです!」と・・・・・!
ええ???!!また??!
違う違う!!!そうじゃないのだ!!!
先生!違います!
私は、前に進んで、
「先生、私、スピーチしてはいけないのですか?!」とちょっと涙目で訴えた!!
「え?!ああ~?!ごめんなさい、私、勘違いしていました!
皆さん!ちょっと待ってください!」
(私がうまく伝えられてなかったってことなのだろう・・。先生はいい人。)
しかし、何人もの人は気がつかずに行ってしまった。
私は動揺したまま、スピーチを始めた。
しかし、こんなになんでもうまくいかないこと・・・そして大勢のフランス人の前でフランス語でスピーチをするということ・・・。
私は、、スピーチを始めてからだんだん、、、悲しくなってしまった。
ちゃんと伝えようと思うのに、涙が出そうだ。
そして、頭の中が真っ白・・・!
私は左手の中でぐちゃぐちゃになったスピーチの文章の紙を取り出し、それを読み始めた。
しかし、時々前を見ると・・・
子供に”ちゃんと聞きなさい!”と注意しているお父さんとか、優しい目をして見てくれているお母さんとか・・・が目に入った。
なんとか話終えたら、ひとりのママが寄ってきて
「私は時々パリで仕事をする時に日本人とも仕事をするわよ。みんないい人よ。」
と言ってくれた。
先生は
「そのうち・・・折り紙とかクラスでするのもいいですね。」と
言ってくれた。
これで・・・何か変わるかしら・・・?!
翌日、迎えに行った私に、ひとりのお父さんは私に握手を求めに来て
「大変ですね。何かあったらなんでも言ってくださいよ!」と微笑んでくださった。
しかし・・・期待とはうらはらに・・・それだけ・・・。
あとは変わった様子はなかった・・・。