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祖国を想う

 
 
(日本に帰国して1か月ほどたった 8月の末に書いたものです。)
 
 
 
自宅のソファで 寝そべっていた。
見たい番組があるわけではないが なんとなくテレビをつける。
ワーワーくだらないことを言っているが 窓の外には 夏の青空が広がっている。
 
 
 
白くはためく洗濯物。 降り注ぐ 蝉の声。
通りのざわめき。 車の行き交う音。 じっとりと汗ばむ肌。
 
 
 
あぁ 日本に帰ってきたんだと思う。
そして 自分の脳みそが 芯からリラックスしているのがわかる。
 
 
 
アメリカでも テレビを見ながら寝そべっていたことはある。
でも 今考えると アメリカにいた間は 何をしていても どんな時でも
やはり どこかで 緊張していたんだと思う。
 
 
 
もう わけのわからない トラブルに 巻き込まれることはない。
自宅のトイレが逆噴射したり 突然 水道の水が 茶色になることもないだろう。
その結果 理解のない大家にかけあったり 
やる気のない水道局に 電話をする必要もない。
見知らぬ人に嫌がらせをされたり、有色人種だからと馬鹿にされることもない。
 
 
 
なによりも もう 英語を話さなくてもいい。
 
 
 
 
突然 話しかけられることも 
いきなり降りかかった ものすごく複雑なトラブルを 説明する必要もない。
 
 
 
 
 
こんなに 気楽なことがあるだろうか。
 
 
 
 
 
 
お店の人に話しかけて「ゲッ 外国人」という顔をされることもないし
何よりも あらかじめ言いたいことを頭の中で整理して交渉に臨まなくても 
とりあえず口を動かしながら 文章を考えられるのがすばらしい。
 
 
 
発音を気にすることもなければ 
あの単語のアクセントはどっちだったけと あわてる必要もない。
 
 
 
母国語だけを話していればいい幸せ。
どこを見ても 自分と同じ人種の人々に囲まれている安心感。
 
 
 
 
自分はもう黒髪の異邦人じゃない。
 
This is where I belong.
 
 
 
 
日本への不満はある。
家が小さい。 人が多い。 どこでも混んでいる。プライバシーがない。道路が狭い。
働いても働いても たいして裕福になれないし、政治もどうなっているんだか。
 
 
 
でも どこかの国のように 汚職だらけで政府が破たんしているとか
警察が 市民を殺すとか テロや暴動で 外に出ることができないとか 
そんな国ではない。
 
 
 
とても 平和で 安全で 便利で 清潔な国。
 
 
 
 
 
でも この国が 住みにくいと、わたしには 日本は合わないと
海外に移住するという道を 選ぶ人がいる。
 
 
日本では できないような仕事をしていたり 
日本では認められなかった能力を 開花させている人もいるだろう。
すばらしいことだ。
 
 
 
しかし そんな「勝ち組」は ほんの一部で
大半は 社会の澱のように 底に沈んで ひっそりと暮らしている。
 
 
 
小さな日系人社会で暮らし 日本の家族とも疎遠で 
現地社会からは ほとんど存在を認識されていないような人たち。
 
 
 
気楽といえば 気楽だし
日本にいるよりは 広い家に住むことができて 
いい暮らしができているのかもしれない。
 
 
 
でも 自分の母国である日本や 日本人から逃げ回って 暮らしている人を見ると
他人事だけど どこか悲しみを感じるのを禁じ得ない。
 
 
 
 
日本に住みたいとは思わないといいながら 帰国しますという私を見る目には
うっすらと涙が浮かぶ。 私との別れに泣いているのではない。
日本に帰るという言葉が 彼らの涙腺を刺激する。
 
 
 
NYで知り合った 85歳のおばあさん。
英語は完璧で 職を持ち 多くのアメリカ人から尊敬されている。
アメリカ人のご主人は やさしくて 生活は裕福の部類に入るし 二人とも健康だ。
彼女の自宅には たくさんの人が集まり いつもにぎやか。 でも 彼女はいう。
 
 
 
もう一度 日本に帰りたい、と。
 
 
 
 
本当はもう 日本に帰ることはできないだろう。
体力的にもそうだし 日本にはご家族も家もない。
ご両親は当然なくなっているし ご兄弟も他界したそうだ。
アメリカでは お子さんたちが近くに住み しょっちゅう行き来をしているようだけど
時として 祖国への愛は 家族へのそれを上回るのだから 不思議だ。
 
 
 
こんな国のどこがいいのだろうと思っていても 祖国とはそういうものだ。
 
 
 
たとえ どんなに日本食が手軽に食べられても 
どれだけたくさんの日本人の友人がいても かなわないものがある。
 
 
 
日本にいるという その実感。
 
 
 
 
どんどん遠のいていく彼らが 帰ってくる場所が 
この国に まだ あればいいなと思う。
 
 
 
 
 
故郷が癒してくれる。
 
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