内陸部へ入植した開拓民の帰国への逃避行は困難を極めます。混乱の中で家族はお年寄りや病人を残し、また子どもを現地の人に預けて命を助けようとします。そうした子どもは「残留孤児」となります。
「大地の子」という山崎豊子の小説に、残留孤児となった松本勝男という主人公の生き方が描かれています。彼の家族は信濃から開拓団に入って満州の奥地に入ります。父親は徴兵され、勝男は中国人農家に売られて酷使されることになります。勝男は逃げ出し、やがて小学校教師の陸徳志に救われます。子どもがいない陸夫妻は勝男に一心という名をつけ、実の子のように愛情を注いで育てます。