早いものであっという間に大統領選挙の年となりました。4年前の狂乱?をよく覚えているのですが、時間が経つのは本当に早いものですね。
まだ投票日まで時間がありますが、2024年の大統領候補が出揃いましたので今の段階での各候補者の税に対する政策を見ていきたいと思います。
駐在員にも影響があるかもしれませんので、予め準備しておきたいですね。
2024年7月末現在、詳細なTax planは発表していないのですが、選挙演説などで様々なアイデアをお話されています。主な内容は以下の通りです。
Tax Cut and Jobs Act (TCJA)の延長・恒久化 法人税の更なる減税 全ての輸入品への10%又はそれ以上の関税+中国への更なる関税(最低60%) 所得税の減税 Tax Cut and Jobs Act (TCJA)の延長・恒久化2018年に施行されたTax Cut and Jobs Act(通称TCJA)ですが、2025年12月31日で期限が切れる時限立法となっています。こちらの法律を恒久化することを提案しています。
TCJAが無効になった場合、以前の税法に戻るため何もしないと増税という結果になります。
(おさらい)Tax Cut and Jobs Actとは?2017年12月に成立し、2018年1月から施行された税制改革法案になります。このTax Cut and Jobs Actで何が変わったのか簡単におさらいしたいと思います。
法人税率施行前:法人税率は累進税率で、最高税率は35%でした。
施行後:一律21%に変更になりました。
個人所得税施行前:税率が10%から39.6%までの7段階でした。
施行後:税率が10%, 12%, 22%, 24%, 32%, 35%, 37%の7段階に変更され、全体的に税率が引き下げられました。
標準控除と個人控除施行前:標準控除は単身で$6,350、夫婦合算で$12,700でした。また、個人控除として一人当たり$4,050が控除されていました。
施行後:標準控除は単身で$12,000、夫婦合算で$24,000に倍増し、個人控除は廃止されました。
Child Tax Credit施行前:子供一人につき$1,000の税額控除が適用されていました。
施行後:控除額は$2,000に増額され、そのうち最大$1,400が払戻可能になりました。
州および地方税(SALT)控除施行前:納税者は州および地方税を控除することができました。
施行後:SALT控除は$10,000までに制限され、高税率州の納税者に影響を与えました。
他にも細かい論点はたくさんありますが、上記が主なTCJAの施行前と施行後の変更点になります。
法人税の更なる減税TCJAの施行前、連邦の法人税率は最高35%でしたが、TCJAによって、法人税率は21%まで引き下げられました。
今回の選挙戦では21%の法人税率を更に20%に下げることを提案しています。
非公開ではありますが、各界の実業家達との会合で更なる法人税の減税について言及していたようです。
トランプ元大統領の提案には関税について多くの言及がされています。先日、所得税を廃止し、関税からの税収で所得税分の税収をまかなうといった発言もありました。
(こちらは各方面から現実的ではない旨指摘されています。)
共和党が発表している文章にも、とにかくアメリカの産業を保護するという保護主義的な内容が記載されています。中国との対立もあり、アメリカの輸入品への関税が高くなることが検討されています。
関税を増やすことで確かにアメリカの産業が保護されるかもしれませんが、結局物価が上がることにつながるので一般の消費者(特に低所得者)にはメリットがあまりないかもしれません。
所得税の減税現在、レストラン等で支払われるTipsは課税対象となっていますが、こちらを非課税にするアイデアがあります。更に詳細は明かされていませんが、TCJAの恒久化と更なる減税を計画しているようです。
ハリス副大統領の政策(民主党候補)現職であるバイデン大統領の選挙戦撤退を受けて、ハリス副大統領が実質民主党からの大統領選候補となりました。(7月現在、正式な大統領選候補ではありません。)
バイデン大統領の閣僚として、現在の政策を引き継ぐと考えられていることから提案されている予算案を見ていきたいと思います。
法人税の増税法人税を21%から28%に増税を検討しています。また、Global Intangible low-taxed income (GILTI) taxの税率を10.5%から21%に増税を検討しています。
譲渡所得・配当への課税$1 million以上の課税所得を持つ納税者の長期譲渡所得と配当所得に対し、総合課税で課税をすることを検討しています。(現在は分離課税)
Child Tax Credit等Child Tax Creditを恒久化し、全額Refundable(還付可能な税額控除)にすることを検討しています。また、金額を$3,600又は$3,000への変更を検討しています。
個人所得税$400,000以上の所得を持つ納税者のNet Investment income taxとMedicare taxの増税を検討しています。
また、単身者で$400,000以上、夫婦合算で$450,000以上の所得を持つ納税者の税率を39.6%へ変更することも検討しています。
$400,000未満の納税者については、TCJAを延長することを検討しています。
ハリス氏の2020年大統領選時の提言現在副大統領職であるため現在の政策を引き継ぐと考えられていますが、今後を占うためにも以前どのような提言をしていたかを知っておくことも意味があると思います。
2020年の大統領選時にどのような提言をしていたか簡単に見ておきたいと思います。
LIFT the Middle Class Act:低所得者・中産階級を対象に還付可能な税額控除を提案していました。(単身者へ$3,000、夫婦合算の納税者へ$6,000) 法人税率:法人税率を35%に戻すよう提案していました。これはバイデン大統領の提案する28%よりも更に高い数字となります。 譲渡所得・配当への課税:譲渡所得と配当への課税を総合課税とすることを提案していました。この時は特に所得金額での制限等は言及されていませんでした。 Financial Transaction Tax:Wall Streetで行われる株取引に課税を提案していました。 所得税の増税:上位1%の納税者の税率を39.6%とすることを提案していました。 Medicare for All Funding:$100,000以上の所得を持つ納税者に対して、4%の更なる課税を提案していました。 TCJA Repeal:TCJAを廃止することを提案していました。 税務からみた駐在員への影響トランプ元大統領が当選した場合駐在員の税コストへの影響は未知数ですが、原則減税の方針ですのでコストの上昇は考えにくいかと思います。在米の日系企業におかれましては、関税の動向が最も気になるところかと思います。
ハリス副大統領が当選した場合、やはり増税は避けられないものと考えられます。現職のバイデン大統領は再三$400,000未満の納税者には増税しないことを明言していますが、ハリス氏の場合過去の提言を見ても増税を念頭に置いていることがうかがえます。
仮に$100,000以上の納税者に4%の増税が行われた場合、多くの駐在員も対象となる金額であるため一定のコスト増が見込まれます。
まとめ誰が大統領になるかで、今後各所に影響がありそうです。
また納税者に影響がありそうなニュースがありましたら共有させていただこうと思います。
The post 2024年大統領選挙の税金への影響を考えてみた first appeared on 国際人事・駐在員のためのアメリカ税務情報.