こんにちは、コウダイです。アメリカの大統領選は2016年に入り、いよいよ激化レースの一途を辿っております。オバマや初の女性大統領を狙うヒラリー・クリントン、ユダヤ系であるバーニー・サンダースの猛烈な追い上げ、そしてその中でも派手にレースをかき回すドナルド・トランプ。
最初はピエロのように戦局をかき回すだけだと思われたトランプも今や共和党をおびやかす存在となり、共和党の候補から外れる事となっても第三局として大統領選をあきらめない姿勢を見せている為、共和党も身動きが取れなくなってしまうのが現状になっています。
最近では、元アラスカ州知事のサラ・ペイリンが応援を表明しますます勢いづくトランプ勢力ですが、事実これだけの人数が、過激派ともいえるトランプに同調している事実が存在するのが今のアメリカであり、リーマンショック以降、かつて様々な世界の○○を代表していたアメリカは、もはや存在せず、全く異なるアメリカになってしまっている現実がここにあるのだと思います。
相変わらずのハリウッドは、オスカーアワードを来月に控え、いまだに白人至上主義だといわれているようですが、暗に人種や民族、アメリカの歴史の道を示す映画がゴールデングローブに登場するのは小さな一歩かもしれませんし、例えドナルド・トランプが大統領になったとしてもアメリカの【自由】が制約される事はないと思います。
映画のレビューや批評は専門ではありませんが、4月に公開の決まったレオナルド・ディカプリオ主演のRevenant(邦題:レヴェナント・蘇りしもの)は、アメリカの文化や歴史を学ぶ上でもとても興味深い映画であり、留学において『英語』だけを学ぶのではなく国際感覚やグローバル社会での仕事する上で重要な『文化』を学ぶにおいても非常に良い題材の映画かもしれませんので、さながらレビューっぽく、まとめてみました。
迫力のある映像やディカプリオの演技、坂本龍一氏のサウンドトラックが話題になりがちですが、その昔白人達の行ってきた【事実】が存在し、それを今現在の白人たちがどのような気持ちで見ているのかは、日本人には理解しがたいものがあります。
▼以下はレヴェナントの背景とストーリーを私なりの視点でまとめてみたものです。ネタバレと言われるのかもしれませんが、主人公のヒュー・グラスは実在の人物であり、伝記のようにも語られているものも然り、予告編でも大体登場するので、厳密にはネタバレとは言えないかもしれません。むしろ『何故?』『なんで?』が少しでも解消されるかもしれませんので、ご参考にしてください。
物語は現在のアメリカ合衆国内のサウスダコタを中心とするルイジアナ地域を舞台に、ナポレオンの率いるフランスが多額の借金を返済する為、そして来るイギリスとの戦争の資金源とする為、当時フランスが支配していたルイジアナ地域の土地を売ってしまう、いわゆるルイジアナパーチェス(ルイジアナ買収)が起きた直後。
実質的に領地を拡大する事となったアメリカにの新しい領土に押し寄せるアメリカ人のひとりとして、新たに未開拓の領地を開拓するとともに、良くいえば開墾者であり、狩猟を得意としていたハンター、悪く言えば海賊・略奪行為を生業とする毛皮商人である実在の人物ヒュー・グラスの武勇伝・逸話を基として作られた【実際にあった物語】ではなく【実際の出来事・史実を基にして作成された物語】である。
アイルランド系移民の家系に生まれたアメリカ人ヒュー・グラスは(当時40歳)、サウスダコを群雄割拠、狩猟をしているさなか、グリズリーに襲われ瀕死の状態に陥いる事となる。
ハンターとしての腕が立ち、以前に現地ポーニー族と捕らえられていた言われるグラスは、ポーニー語を操る貴重な人材ではあったが、グリズリーから受けた負傷の為、歩く事はおろか話す事も出来ず、険しい道のりを進むハンター達一行にとって次第に重荷となり、グラスを看取る為に2人の志願者を募り、二手に分かれる事となる。
墓を掘りグラスの死を待つ2人は、残された書記によるとアリカラ族に襲われて逃げてきたと主張しているが、映画ではグラスとポーニー族との妻との間に生まれた息子のホークが一緒に残っている。死を待つ事に耐えかねた1人がグラスを殺そうと手をかけた時、父の命を助けようと息子ホークと揉めあいになり、ホークを殺害。
瀕死の状態で身動きを取る事も出来ずにただ息子の死を目の当たりにしたグラスはその後、生き埋めにされるが復讐心を唯一の生命力に変え、土の中から這い上がり、およそ320Kmにも渡る大自然の雪中をはいずり、草の根や野生のベリーを食べながら、仲間のいる皮商人の駐屯地へと向かうグラスの大いなる旅の記録を基に息子の仇を取る為の復讐劇として描かれている。
残されている史実として旅の途中では、ネイティブインディアンに治療を受け、少しずつ回復するものの、まさか生きて帰ってくるとは夢にも思わなかったグラスの復活劇はその後のアメリカ開拓史に偉大なマウンテンマン(山男)として伝説に名を残す事となる。
注意したいのは、ルイジアナと呼ばれる地域は現在のアメリカ南部ルイジアナとは異なり、2007年12月に独立宣言をしたアメリカ合衆国内の未承認国家・現ラコタ共和国を中心にミシシッピ川流域であり、北はカナダロッキー山脈付近から、コロラド州・ミズーリ州・カンザス州・オクラホマ州等を含めた現在のアメリカ合衆国の三分の一にもわたる巨大な地域である事、そしてその地を制圧していたフランスにとっても未開の地が多く残り、先住民の土地である為、元来からそこに住むネイティブインディアン達とは戦争中であり、白人に憎しみを持つものも少なくなかった。
映画上でもハンター達もとい白人の略奪者達の中には先住民であるインディアンを人質・奴隷としたり、女性に凌辱をするものも多く、ルイジアナパーチェス以前より支配をしていたフランス人ハンター達も、アメリカ人ハンター達と同様に毛皮や奴隷を求めてキャンプをし生計を立てているものも登場する。先住民ネイティブインディアンからすれば全ての白人は敵であり略奪者であるが、中にはアメリカ人に屈服する事を余儀なくされ、ネイティブインディアン同士でも争いが行われていた為、犬猿の仲である敵対部族との闘いに協力するものも現れる事となる。
また荒くれもの集まりでもあり、海賊出身のものも多いアメリカの開拓をする白人ハンター達は先住民ネイティブインディアン達とは常に戦時中であり、ハンターの仕事である 『狩猟』とは、実際に動物を殺し毛皮を手に入れるだけでなく、先住民族たちの街から毛皮や金品を強奪する事もハンティングの一部として含まれる事を理解する必要がある。
実話を基にしたヒュー・グラスの生存劇は1823年はスペインの支配下から独立を果たしたメキシコ独立革命がありメキシコ帝国の誕生した混沌の時代のすぐ後であり、その後メキシコの一部であったテキサスが、植民地支配を進めるアメリカ人の手によってテキサス共和国として独立する、通称テキサス独立戦争がメキシコ対アメリカの構図で行われたのが1836年の事である。
その後、国境線のない時代、アメリカ入植者が勢力を広め、結果としてスペインから独立したメキシコは領土を狭める事となり、アメリカ人を中心としたテキサス共和国は、その後アメリカと併合し、テキサス州となる。1846年には、テキサス独立戦争が引き金となり激化したアメリカ・メキシコ間の戦争が本格的となり、米墨戦争(アメリカ・メキシコ戦争)が開戦となり、メキシコ領土であったカリフォルニア地域、LA他都市を占領し、カリフォルニア共和国が国家独立が誕生、間もなくアメリカと併合され、現カリフォルニア州となる。
意外に感じるかもしれないが、カリフォルニアは歴史上でメキシコ(スペイン)の一部でだった事はアメリカにとっては周知の事実であるが、その前に先住民ネイティブインディアンの土地であり、現メキシコおよび中南米はマヤ文明で有名なマヤ族の土地であった事も忘れてはいけない。
今現在のアメリカはスペインとフランス、イギリスの領土合戦の中、線引きされたものであり、もともと住んでいた先住民達のネイティブンインディアンの存在は動物と同じように扱われ狩猟と呼ばれる虐殺の一途をたどる事となる。あるものは民族の生き残りの為、アメリカに戦士として雇われ、あるものは民族の誇りの為、最後まで白人たちと闘いその命を落とす。
Revenant(レヴェナント)では復讐劇に狂うヒュー・グラスをレオナルド・ディカプリオが熱演する事となるが、復習や報復に命を懸けるのは虐殺された仲間や、さらわれた娘を助ける為に白人たちを襲う先住民のアリカラ族も同じで立場である。しかし、農耕民族・又は半農耕・半狩猟民族であるネイティブの先住民は必要以上の虐殺をせずに(バッファローに関しては捕り過ぎたという諸説もある)、同じ人間であり、苦しむものがいれば実際にグラスが治療を受けたように、手を差し伸べる優しい一面を垣間見る事は珍しくない。
もっとも海賊行為を生業として領土を拡大するアングロサクソン系民族の白人にとってみれば、どこからともなく現れる奇襲をかける先住民たちを、今でいうテロリストのように恐れ、自分の身を守る為に殺していただけと主張するのかもしれないが、略奪行為を行い恨みを買う事は当然でありカルマ的な事であるのは明白である。
ハリウッドでは、どんな歴史大作でもラブロマンスをねじ込む事が多くハリウッド的と揶揄される事もあるが、実在したヒュー・グラスはポーニー族と結婚をしていたという逸話も残っており、混沌とした世界の中でも人種を超えた愛は存在していたのかもしれないし事実、当人たちにしかわからない事は多々あるのだろう。
実在したヒュー・グラスは後の駐屯地に生還したあと、自分を見捨てた仲間を許し、和解されたという記録が残っているが、その後1833年にネイティブインディアンのアリカラ族により凄惨な死を迎えたと史実が残されている。レヴェナントという映画はある意味での大河ドラマであり、イギリスが香港を侵略する事となったアヘン戦争勃発は1840年。日本はその頃、江戸時代後期鎖国政策の真っ最中で、坂本龍馬が生誕したのが1836年、その後幕末へと突き進んでいく事になる。
そもそも、一度死んだとされた人間が究極の生命力を持ってして生還した事が伝説として残っているヒュー・グラスであるが、先住民からしたら神から与えられた土地・家族・仲間・食と金品をむさぼり取る、単なる略奪者の白人のひとりでしかなかったのである。
アメリカ誕生の歴史、そしてカナダやメキシコにまで渡る領土合戦と先住民たちとの軋轢の歴史の知識なしでは、一体何が何故?どうなったのか理解しがたい本作品であるが、美しく過酷な大自然とアメリカの開墾の歴史を物語る実に興味深い作品であり、まさに見る人、人種、言語、世代、立場によって感じる事が大きく異なるものである。
セリフが少なくとも、坂本氏の音楽が奏でる電子音とオーケストラの融合が、緊迫したドラマをつくりあげているが、実際の雪原には風、嵐と雪が溶けてまた凍る自然が織りなす声、雨、雪解けの水が流れるミシシッピ川の激流、そして鳥や動物たちの息、鳴き声、バッファローの大群の作り出す地鳴りのような自然の音だけだったと考えると映画以上に壮絶で過酷で緊迫した環境の中でのサバイバル(生存劇)であった事は間違いない。
日本人であれば、なんとなく歴史で学んでいる事を前提に大河ドラマや時代劇を楽しむ事が出来るように、英語だけでなくアメリ文化・歴史を理解する事で何倍も映画が楽しめるかもしれませんね。
■撮影はカナダのバンクーバー・カルガリーから雪を求めて南米や南極まで出向いたそう。留学先でハリウッド映画の撮影が行われているのも珍しくないかもしれませんね。
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