2015年12月、マレーシアの サイバージャヤで開催された「ROBOT DAY 2015」。学研グループで福岡に本社をおく株式会社全教研が自社開発したプログラミング教育をマレーシアで本格的に展開するにあたり開催したイベントだった。
マハティール元首相も駆けつけ、展示されたロボットやプログラミング教材を見学、オープニングセレモニーにも登壇され、ロボットやプログラムなどの技術教育を充実させていくことが将来に渡ってマレーシアの経済発展につながると熱弁された。
理数科学教育を重視するアメリカなどでは、これまで「STEM」(Science, Technology, Engineering, Math )教育に力を注いできたが、さらにアートとデザインを加えた「STEAM」(STEM+A(art)) が主流の考え方となっている。第一次作業から第三次産業まであらゆる分野で技術革新が加速するなか、STEAM分野で高度な知識や経験を持つ人材はますます必要とされるだろう。STEAM分野での教育が将来にわたりイノベーションの源泉となり、国家に競争力をもたらすということはすでに多くの先進国、中進国が持つ共通認識となっている。
世界各国が取り組み始めたプログラミング教育このSTEAM教育をまさに具現化したのがロボット工学やプログラミング教育ということになる。イギリスでは5歳から16歳までプログラミングが義務教育化され、日本でも2012年から中学校の技術家庭科で「プログラムによる計測・制御」が必修になっている。
インターネットを基盤として、あらゆるヒトやモノ、情報がつながる世界ではあらゆる場所にある、あらゆるモノの中でプログラムが動作することになる。つまりプログラミング技術は全産業分野を支える基礎的な技術となるだろう。
マレーシアで立ち上がるロボット/プログラミング教室マレーシアではすでに複数の民間企業がプログラミング教育を取り入れたロボットやプログラミング教室を運営している。マレーシア初の教育モール「The School」にあるROBOTICSTではVEX製のロボット制作キットを使ったロボット工作やプログラミングを学ぶことができる。1時間45分のレッスンでは毎回違ったロボットの設計図が手渡され、生徒自身でその時間内にパーツを組み合わせてロボットを完成させる。多くの小学生が英語で講師と会話しながら楽しそうにロボット作りに励んでいる。
新市場を目指す日本の教育産業少子化の影響を受け、企業間で熾烈な競争が繰り広げられている日本の教育市場。一方、人口ボーナス期にあるマレーシアなど東南アジアの国々は子供の数が増加するだけではなく、所得水準が向上することで、子供にかかられる教育費も増額傾向が続く。
マレーシアで教育事業に参入するには外資規制があるのでローカル企業との連携が必要にはなるものの、新市場への参入を模索する日本の教育業界にとってマレーシアは東南アジア市場に向かう有力な足掛かりになるだろう。
ロボット教室で学ぶということ海外で暮らす日本人の小中学生にとっても、現地で通えるロボット教室はロボットの仕組みやプログラミングの基礎を学べるだけではなく英語力を身に着ける良い機会となる。「英語を学ぶ」ではなく「英語で何かを学ぶ」。モノを作ったりロボット好きの子供であれば、ギヤやモーターといった部品の名前やロボットの動作を自然に英語で覚えられる。ロボット教室はプログラミングだけではなく、英語でのコミュニケーション能力も鍛えられる一石二鳥の教室なのだ。
人工知能(AI)が人間の知能を超えることで、多くの人間の仕事がコンピュータやロボットに置き換わると言われている技術的特異点(シンギュラリティ)まであと30年。いまの小学生が第一線で活躍する30年後には現在と全く異なる世界が待っている可能性がある。いまロボット教室に通う小学生、プログラミング教育を受けた子供たちはどのような世界を創造するのだろうか。STEAM教育は単に技術要素を学ぶということだけではなく、未来を変える力を育てることになるのかもしれない。
Issued by 「マレーシア ソーシャルナビ 2015」
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