世界銀行が毎年発行している「Doing Business (ビジネス環境の現状)」にはStarting a Business(起業のしやすさ)という項目がある。調査対象となっている189か国において、起業時の会社設立に関する規則や制度を比較評価し順位付けした結果、2015年の調査ではマレーシアは14位、日本は81位だった。
マレーシアでの会社設立は比較的容易
実際にマレーシアで会社設立の手続きを調べてみると、起業しやすい国だということがわかる。会社の設立手続きは比較的容易で、多額の資本金を用意する必要がない。会社設立登記の手続きは、一般に日本でいう司法書士のような役割を持つ会社秘書役(Company Secretary)という資格を持った者が登記書類の作成、登記の手続きを行う。会社秘書役会社や弁護士事務所に依頼すれば、手続きを行ってくれて、会社設立登記する段階までであれば通常1か月もかからないで完了する。
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外資活用に積極的なマレーシア政府
マレーシア政府は、経済成長の牽引役として外資の活用にも積極的であり、2009年以降サービス産業の自由化を発表しそれまでの外資の資本規制を緩和した。現在、製造業、流通・サービス業では、一部を除き、100%外資が認められている。このような投資環境もあって、現在マレーシアに進出している日系企業の数は、1,400社を超えている。逆に外国人が日本にやってきて起業するといった場合、相当ハードルが高いだろう。言葉や商習慣の問題もあるが、書類上の手続きだけみても外国人にとって容易とは言えない。このあたりも「起業のしやすさ」ランキング調査の結果に反映されていると感じる。
ASEANでトップレベルの投資環境
経済成長を続けるASEAN諸国のなかで、マレーシアは起業する環境としてトップレベルにある。先ほどのランキングに加えて、日本人が外国でビジネスをするうえで重要な指標となる平和度や親日度などを見ても他のASEAN諸国と比べて相対的に高く評価できる。インドネシアの2.5億人やフィリピンの9839万人の総人口に比べると、マレーシアの2972万人は少なく見えるが、富裕層や中間所得層などに区切った顧客セグメントで考えれば、決して見劣りする人口ではない。マレーシアに進出したうえで、そのノウハウ・実績を生かして他のASEAN諸国にも広げていくという考え方も有効だろう。
シンガポールとの比較ではコスト面で有利
各種ランキングの指標はシンガポールが最も高いものの、シンガポールはすでに物価が高くオフィス・店舗の賃貸料や人件費を考慮すると、資金力のないスタートアップの企業にとっては、初期投資がかかりリスクが高くなることが想定される。クアラルンプールとシンガポールの月額基本給を比較すると、約2倍もの差がある。
総合的にみてバランスのよいマレーシア
このようにASEAN諸国の中で起業する国、進出する国を比較検討する場合、マレーシアはトップレベルのビジネス環境と位置付けられる。
2015年度にマレーシアに進出されている日系を対象に実施したアンケートによると「投資先としてのマレーシアの魅力」のトップ3は親日度、語学力、政治の安定となっている。
実際、ASEAN諸国の中でビジネス環境、生活環境などを比較検討したうえで、マレーシアが最もバランスが取れた国と判断して進出決めたという起業家も多い。今後、日本の人口減少にともないマーケットが縮小していくビジネス領域では、アジア全体をマーケットとしてとらえて進出する企業、あるいはアジアでの起業を目指す起業家が増えていくことが想定されるが、その際にマレーシアは有力な選択肢の1つになるだろう。
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