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自由研究の不思議
夏休み最終日 お子様の自由研究は お済みでしょうか?
最近の日本では どこの小学校でも 夏休みの宿題がすごく少ないらしく
我が家の子供たちも ペっラペラのプリント集を少々 持ち帰った程度でした。
枚数が少ないだけではなく 内容も 薄々。
もう 私たちの頃のように ちょっとでもサボると
(まぁ 今考えると ちょっとじゃなかったんでしょうけど)
夏休みの最後に大変なことになる、という時代は終わったようです。
そんななか 今も 残る 自由研究。
夏休みといえば 自由研究。 自由研究といえば 夏休み。
もはや日本の伝統行事?
テーマを考えるのに苦労し
「何をやろっかなぁ~」と思っているうちに
「げっ、夏休み最終週!?」というのは 私だけの思い出でしょうか?
何しろ 何をやってもいい、とにかく自由、と言われても
今のように インターネットなぞ ない時代。
一体 何をしたらいいのか プロの指導を仰げない状態で
小学生の子供が一人で 自由研究のテーマを考えるのは 大変な事だと思います。
唯一頼れるのが親ですが どこの親も
これといったアイデアを持っているわけでもなく、
無い知恵を絞って 必死に何かを考えてやるか、
どこかで聞いた自由研究の二番煎じを さも自分が思いついたように提案するか、
自分の宿題なんだから 自分で考えなさいと突き放すかの いずれかでした。
現代では アレ、簡単。コンピューターに「自由研究」と一言打ち込めばいいのです。
検索すれば あるわ あるわ・・・・。
年齢ごとに区分けされた自由研究のテーマが 山ほど列挙してあります。
台所用品でできる実験や、虫や鳥の観察などは もはや定番中の定番。
さらには お手軽な 自由研究グッズも発売されているようで
それを買って 指示通りに実験したり 作品を組み立てれば
はい、自由研究の出来上がり!
ちなみに こうした自由研究グッズは
すでに 10年ぐらい前から市場に出始めていました。
当時、テレビのニュース番組で特集を作るために取材したのですが、
ある百貨店では 自由研究として提出できそうな工作キットを集めてきて
店頭で講習会を開き、親が買い物をしている間に 子供は自由研究を終わらせる、
という キャンペーンをやっていました。
その日は 粘土で昆虫を作り 昆虫標本を作ろうというものでした。
昆虫の型はキットに含まれていて 粘土を押し込めば
クワガタや カブトムシになるという 大変お手軽な商品でした。
講習会に子供を参加させていた親に話を聞くと
これで夏休みの 懸案の自由研究が終わらせられて助かった、
都会に住んでいて 本当に昆虫標本なんて作れるわけがないし、粘土でも十分、と
子供以上に喜ばれていたのが 印象的でした。
いつの間にか 自由研究は
いかに手軽に 時間をかけずに 見栄えのよいものを仕上げるかに
重点が置かれるようになったような気がします。
しかし 考えてみれば
自由研究ほど 本来の「学び」の要素が含まれている教材はないわけです。
アメリカには 夏休みの自由研究というものが存在しないかわりに 普段の学校生活では一年中
自由研究をやっているといっても 過言ではありません。
いわゆる 「プロジェクト」というヤツです。
プロジェクトには たくさんのステップがあります。
まず、テーマを決める。
大まかなテーマはあっても その中から何に焦点を絞るかというのは
相当、時間を費やして考えなければならない事です。
内容がふさわしくなければならないし、自分が興味を持てるものでなければなりません。
また 計画ばかり壮大ではダメで あくまでも実現可能なものでなければなりません。
次に リサーチをする。
目標に向かって どんな調べ方をすればいいのか、
どこで どんな資料を探せばいいのか、誰に聞けばいいのか。
これは 私たちのような取材職であっても 日々 苦労する 難しい作業です。
図書館や インターネットをさまよえば いろんな情報はありますが
そこから自分に必要な情報を抜きだし それを使って さらに調査をすすめていくというのは
それ自体が 経験を積み重ねることで初めて体得できる 「技能」です。
さらに 結果をまとめるという作業があります。
どんな風にまとめるのか。 冊子風に? 一枚の大きな紙に わかりやすく?
それとも立体的な作品を作って 説明した方がいいか?
スライドを作ったり ビデオにしたり マルチメディアを使えば
研究結果のまとめ方も 無限に広がります。また まとめるという作業をとおして
これまで調べてきた情報を どんなふうに整理して伝えるとわかりやすいかも 考えます。
そして 最後に発表です。プレゼンテーション。
自分が調べてわかったことを さらに他人にわかるように説明することで
人はその知識についての理解を深めます。
自分がわかることと 人に説明できることは また別の次元なのです。
説明の仕方についても 工夫が必要です。
どうやれば わかりやすいか? どう伝えれば 伝わるのか?
もちろん発表後は 級友たちや先生からの質問があります。
そうした質問に答えることも含め、自分の考えをまとめ 人前で発表することが
プロジェクトのクライマックスであり そこまでやって初めて 学んだことが
消化でき、血となり肉となるのです。
ところが 日本では このすべての段階において 子供たちに まったくノウハウがない状態で
学校が家庭に 「自由研究だから」と、丸投げするのです。
熱心な親は 子供と一緒に 野山を駆けずり回って
昆虫や 植物採集をするかもしれません。
図書館にいっしょにいって 調べ物をしたり
必要があれば 誰か専門家に聞きに行く手配まで するかもしれません。
しかし その一方で できれば手軽に
子供だけで 終わらせてほしいという親もいるでしょう。
それに、夏休み後 学校に提出はするけれど 特に発表するわけでもなく、
まして 成績などつけないというのであれば
時間をかける方が無駄、という結論にたどり着く親子が続出しても
おかしくないのかもしれません。
自由研究には 人が生きていく上で必要な技能が たくさん含まれています。
仕事をするにしても 家庭で主婦をするにしても
自分でテーマを決めて それに向かって実現する手段を考え
調べて 情報をまとめるという作業は とても重要です。
生きるためのスキルといっても 過言ではないでしょう。
自由研究をするにあたって その意味を 誰も理解しないまま
この生きるためのスキルの集大成を
単なる 「季節の風物詩」にしてしまった 日本の教育制度に大きな疑問を感じつつ
ツクツクボウシの鳴き声に耳を傾ける 夏の終わりの一日。
自由の意味をはき違えてる?
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