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174. 巡ってみれば

カテゴリ 中東

もう随分と時間が経ったが、およそ1年前、今回の駐在中の個人的な目標の一つを達成した。イラン国内全31州の訪問だ。その州に一日以上滞在することが「訪問」の基準。これをしたからといって、ピューリッツァ賞や植村直己冒険賞を受賞するわけでもなく、自宅の前にレッドカーペットが敷かれる訳でもない。自己満足の世界である。気分は有森裕子、"自分で自分をほめたい"気分だ。初めてイランを訪れてから足掛け12年で達成した。といっても、気がつけばこの駐在中に行かなかった州は3つだけだから、ほとんどはこの3年強の間に訪れたことになる。

31番目は、コフギルーイェオーブユールアフマド州。米国大統領選挙の民主党候補の座を争うブティジェッジ氏もきっと驚くカタカナ表記だ。イランのみなさまも発音しづらいらしく、途中でごまかされることもよくある。

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(コフ...州の州都ヤースージの風景。撮影、筆者)


バスでの最大移動時間は17時間。テヘランから、南ホラーサーン州の州都ビールジャンドへ向かったバスだ。道中、真夜中に通った沙漠でカーテンをそっと開けると、乗っているバスのライトだけが辺りを照らしている外、なーんにも見えない闇の世界。星が、世界の主役になっていた。宮沢賢治だったらきっとこのまま乗客を連れて行くんだろうと、そう思える漆黒の世界だった。

電車での最大移動時間は20時間。ホルムズガーン州の州都バンダレアッバースから、テヘランへ向かった寝台列車だ。イランをほぼ南北に縦断するこの列車は、学生時代から一度は乗ってみたかったもので、イラン在住の友人を旅のお供に、一昨年の正月旅行のクライマックスで乗車した。何度かこのブログでも紹介したとおり、ホグワーツ特急のような寝台列車は食堂車もついていて、走るホテルのようである。ここでの圧巻は、土と低木以外何もない大地に沈みゆく夕日。31州を巡る旅の間、出来るだけ夜行列車に乗るようにしたが、それはこの夕日を堪能するためだといっても言い過ぎではない。一日の仕事を終えた太陽を特に眺めながら食べるキャバーブの、美味しいこと。

"イランには一つの瞬間に4つの季節が同時に訪れる"とは、イランのみなさまが自分の国の大きさを説明する時にたまに言う表現だが、それは言い得て妙である。そう言った本人で31州全てを訪れた人は多分少ないと思うが、この国の南東の端と北西の端へ行った時のことを同時に思い出すと、確かに気候・風土は全く違う。同じ国にいるという感覚を思い起こすのは、正直言って難しい。仕事はテヘランで完結することが多いが、一歩外に出てみて初めて、この国の広さ、奥の深さ、複雑さを垣間見ることが出来た。

テヘランで話してくる人はみな、それぞれに故郷がある。たとえテヘランで生まれ育っていたとしても、まだ行ったことすらない父祖の地、母祖の地の自然を、文化を、彼らは雄弁に語る。そんな時、「その州はこないだ行ったよ」と相槌を打てるようになったのも、大きな収穫の一つである。この旅行の途中、多くのイランのみなさまと言葉を交わした。私はペルシア語しかできないから、どの地方に行っても私の拙いペルシア語に耳を傾けてくれ、一杯の紅茶を勧めてくれた全てのみなさまに、改めて感謝したい。

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(31州制覇を終え、ヤースージュからシーラーズの空港へ向かっている車内で。撮影:筆者)



【ひとことペルシア語174】oishii nist!(オイシイ ニースト) 
:イランで人生で初めての保育園に通っているわが息子(2歳)。かなりの偏食家で、食べるものといえば肉ばかりである。その息子に、例えばブロッコリーとか、あまり好きではない食べ物をあげれば、この言葉を聞くことが出来る。nistは、"~じゃない"という意味。要は、美味しくない、ということ。




*この記事は個人の体験に基づいて記載されており、筆者の所属する組織の見解とは全く関係がありません。

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ブログ紹介

サラームまでの距離

http://blog.livedoor.jp/mizutani67/

イランの首都テヘランに駐在中の筆者が見た、この国の模様を執筆するブログ。駐在先としてあまり聞かないと思われるイランの様子を肌で感じられるような記事を週に一回アップ中です!

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