ギリシャ

ロンドン生活中は本当にいろんなところに出張しましたが、先入観と大きく異なったのがギリシャ。

そう、財政破綻で崩壊しかけた国。

あの時の代表の発言なんかを見ていて、「この国大丈夫か？」とかよく感じたものです。

で、実際にパートナーさんに会うため数度出張したり、そのパートナーさんの社長とロンドンで数度ディナーをご一緒しましたが、浮かび上がって来る姿というのは、人々は勤勉。でも政府が。。。

でした。

政府に関するどうのこうのはここでは割愛しますが、とにかく行政も含めて、とても多くの問題があると感じました。

一方、まちの様子ですが、アテネでは夜の帰宅の渋滞は７時くらいから始まる感じて、これはドイツの４時とか５時より遅いと感じました。つまり、人々はそれくらいの時間まで普通に働いているってこと。

実際、我々のパートナーの事務所も夕刻６時過ぎても人が働いていて、なんかロンドンより長時間働いているのではという印象を持ちました。朝は少しだけ遅いかもしれませんけどね。

で、うちのパートナー会社のSさんですが、これが私がロンドンで出会った人々の中でもっとも信頼できる素晴らしい人格者でした。

過去１０年以上のお付き合いの中で支払い遅延も全くなし。従業員との話では、会社創業以来、給与の遅配も一回もないそうです。３０数年間。財政や経済が不安定な同国にあってこういう事実もある。

つまり、国のイメージとはあくまで漠然としたものであって、こういう勤勉で素晴らしい人たちが実際に頑張っているのだという事実があるわけです。

Sさんとディナーの時に「今までビジネスをやって来られて一番しんどかったのはいつですか？」

と伺ったら、

「それはもうあのギリシャ危機の時です。父の時代から頑張って築いた全ての資産や会社を一夜にして失うという、あの恐怖は今でも忘れられません。１ヶ月くらい全く寝れませんでした。なんとか破滅を回避するために、１ヶ月間でマルタ、サイプロス、ブルガリア、スロベニアなど５カ国に急いで会社を設立し、実際に従業員を雇い、実体としてビジネスをセットアップしました。それはもうまさに寝る暇もないくらいの事態でしたが、少しの睡眠時間でも全くねれないという状況でしたね。」

私と同年代、ロンドンの有名大学で学び、ギリシャに戻って自らビジネスを立ち上げ、３ヶ国語以上を操り、かつ自家用飛行機を自ら操縦するというSさん。

ロンドンでは、ご子息と３人で素晴らしいシーフードレストランでディナーをしたこともありありと蘇る。ちなみにご子息もキングスカレッジでお勉強とのことでした。

同じ能力、同じ才能でギリシャに生まれることと、日本に生まれるたらどうなるのか。

一方では、一定のビジネスをやるには海外の大学に行かせるのが当然と考え、一方はそうでない。

一方では、必然的に複数ヶ国語を苦労しながら身につけて、一方はその必要は大きくない。

一方では、ビジネスをやるには自国だけでは成立しないので、必然的に複数国と直接ビジネスをやることになるが、一方だと直接的には概ね国内のビジネスの範囲だけで仕事を覚えていく。

言葉の苦労は想像を超えるし、異なる国で自らの事業を立ち上げるなんていうのはもう最高難度のビジネスレベル。

素晴らしい、世界に誇るワインが往々にして、非常に厳しい環境、つまり表土が浅く、常に渇水気味の地表であるがゆえに、岩をも砕く勢いで、地中深く根をはり、凝縮した果汁を蓄えて、それを醸すことで、人を魅了し「偉大」と言われるワインに変貌していくのに対して、養分や水分が多い、根の張りやすい土壌では、薄っぺらな凡百のワインしか生まないのに似ていると、ディナーの帰路にふと考えたりした。

そういう意味でも自分の海外生活はたった２年であっても自らを少し成長させたのではと振り返って思う。

今でも尊敬してやまないギリシャのS氏。

国政が安定し、ビジネスが繁栄されることを遠い地から祈っている。

おわり。