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世界制覇を逃した日本の輪ゴム

 
 
アメリカで大流行中の silly bandz(シリーバンド) の続編。
 
    ※ これまでの記事はこちら  シリーバンド(1)  シリーバンド(2)
 
 

これまでの記事を読んで 何人かの方が 指摘されたように 
このヒット商品は 実は 日本で 考え出された。
 
 
 
2002年、東京・浅草橋にある「アッシュ(h)コンセプト」という 
従業員11名の 小さな会社が 
世界で初めて この型つき輪ゴムを製造販売した。
 
 
 
きっかけは おしゃれなデザイナーたちが 
「愛着のわく、捨てられない、かわいい輪ゴム」を作りたいと提案。
手始めに 動物の形をした「アニマル・ラバーバンド」を考案した。 
 
 
 
日本人らしく 素材には すごく こだわった。 
通常の3倍の強度を持つシリコンを使用することで 
型崩れを防ぐとともに 半永久的に使える「高品質輪ゴム」を実現した。
 
 
この商品は 現在も 楽天などで販売している。
 
 
 
イメージ 1
 
 
 
これまでにない 高級輪ゴム。 パッケージにもこだわりが感じられる。
お値段は 6本で315円から。
100本100円の輪ゴムの常識をやぶり 1本50円という価格設定だ。
輪ゴムの存在意義を変えてやるという気概すら 感じられる。
 
 
わたしも 日本にいた頃 ロフトや東急ハンズで この商品を見た。
おしゃれな高級文具が出始めていたころで 
「かわいいな、でも輪ゴムは わたしはあまり使わないし、
 それに ちょっと高いな」、と 気になったが 買わなかった。
 
 
 
 
ところが 海の向こうで この輪ゴムを 高く評価した人がいた。
それは NYの近代美術館「MOMA」。 
輪ゴムに形があるというコンセプトをいたく気に入り 
なんと、ミュージアムショップで販売したいと 言ってきたのだ。
 
 
アッシュコンセプトは 当時 起業したての新しい会社だった。
それが いきなり NYから引き合いが来たのだ。 
最初の取引先が 世界のMOMAなんて 快挙ではないか!
 
 
 
しかし ここからが 日本の中小企業の悲しいところ。
 
 
 
「あのMOMAが認めたデザイン!」と 大喜びで日本に戻ってしまった。
 
 
 
この会社に限らない事だが 日本人は 海外で認められると
日本に戻って「世界が認めた」と宣伝し、国内でさらに売ろうとがんばる。
日本人相手に 自慢しまくる。
故郷に錦を飾るとはいうけれど、
目の前に世界への扉が開いているのに なぜ そこに戻るんだ・・・・。
 
 
 
もちろん アメリカでの販売委託先を決めるなどし 
アメリカ市場に 進出するつもりはあったと思う。
他の外国の企業とも取引を始めていたようだ。
 
 
 
しかし 信じられない事に
アメリカで意匠権(産業デザインを保護する権利)を
申請しなかったという 大チョンボを犯していた。
 
 
 
事実関係は直接確認していない。しかし この空前のブームを前に 
意匠権が現在 この会社にないのは 事実のようだ。 
朝日新聞に掲載された社長のインタビューを見る限りでは 
申請したのに認められなかったというより 
そもそも そんな事考えてもいなかったように 私には 読めた。
 
 
 
つまり 現在 アメリカで発売されている輪ゴムは すべて「コピー商品」と言えるが、それを訴える権利はなく、また どんなに輪ゴムが売れようと この会社には 
ビタ一文入らない。
 
 
 
 
 
こんな悲しい事があるだろうか。
 
 
 
 
 
戦略の失敗は これだけではない。
そもそも 動物輪ゴムのような 「産業デザイン」は 芸術品と違って 
売れてナンボ 量産できてナンボ 大衆に受け入れられてナンボだ。
しかし、彼らは 「輪ゴムの芸術性」に こだわりつづけた。
これも まずかった。
 
 
 
 
一方のアメリカでは 
この輪ゴムを見て 「おもしろい」と思った人間が 他にもいた。
従業員たった5人の オハイオ州にある小さな会社の社長だ。
こちらの社長は この商品が このままでは売れない事に気付いていた。
何とか 売れる方法はないだろうかと 知恵を絞った。
 
 
 
 
そして アメリカで 
この商品の 「誇り高き理念」は メタメタにされた。
 
 
 
高級文具?       いやいや 子どものおもちゃで 充分だろ。
高級シリコン?     輪ゴムなんだから 別に 高級でなくていい。
              それより質を下げてもいいから 値段も下げよう。
耐久性?        そんなもの 子どもに必要なし!
すぐれたデザイン?  下世話でも おもしろいもの 作っちゃえ!
 
 
 
 
挙句の果てに 
商品名も 「おバカ輪ゴム(silly bandz)」に 変えられてしまった。
 
 
 
 
エコ? 高品質? 
いやいや、捨てられても 落としても平気な おバカ輪ゴムですから!
 
 
 
 
こうして 日本の動物輪ゴムからは 数段落ちる素材で、 
ありとあらゆる形が 作られるようになった。
今では この会社以外にも たくさんの会社が似たような輪ゴムを作っている。
 
 
 
日本では 8年間の間に 動物と恐竜シリーズが デザインされただけだが、
アメリカでは ブームも手伝って 毎週のように新しいデザインが登場している。
 
 
 
といっても もはや何でもありの状態が続く シリーバンド。
デザインとも呼べないような 物体がいろいろある。
 
これは 一体 何の形でしょう???
 
 
 イメージ 5
イメージ 6イメージ 7
 
 
 
 
答えは サーフボードに カヌー、テントウムシ。
 
 
中には どっちが左右で どっちが上下か わからない物体もある。
 
 
 
イメージ 8
 
アルマジロ?
 
 
 
価格競争が激しくなり
高級シリコンというわりには すぐに形が崩れて 切れてしまう 
安物のシリーバンドも 出てきている。
 
同じデザインでも クオリティーの差は歴然で、この通り。
 
 
 
イメージ 9
 
 
シャキンとしたトンボと ブヨブヨのトンボ。
 
 
しかし 価格競争には限界がある。
やはり 最後はデザイン勝負だ。
 
 
子供たちの間で トレード(交換)するという遊び方も提案したので
めずらしいデザインを作れば また 買ってもらえる。
希少価値のある輪ゴムは1本で 2本と交換できるというルールもあるそうだ。
 
 
一筆書きにできるものならば なんでも輪ゴムにできるのだから 
こんなに無限の可能性を持つ商品はない。
 
 
 
こうして アメリカ人が
創造力を駆使して作ったデザインの数々・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
イメージ 10
 
                                     (amazon.comより)
 
 
「水着シリーズ」だけど 大人向けには 「下着シリーズ」と言ってもいい。
 
 
西部劇シリーズというアメリカらしい パッケージもあった。
 
 
 
イメージ 2
 
 
 
 
そして今、一番 娘が気に入っているのが コレ。
 
 
 
 
 
イメージ 3
 
 
キターッ!! 自由の女神。
 
 
 
 
 
やっぱり 発想が ぜんぜん 自由でおもしろい。
こんな風に 輪ゴムで NYやアメリカ名物を作ったら 
おみやげにもいいだろう。
 
 
 
と思ったら、そんな消費者マインドは とっくに読まれていたようだ。
 
 
 
 
イメージ 4
 
 
ザ・アメリカシリーズ
 
 
 
 
日本の中小企業には 
高品質の すばらしい商品を作っているところがたくさんある。
しかし 上から目線を承知で言わせていただくと 
彼らには 決定的に欠けているものがある。
 
 
 
 
それは 世界と勝負するだけの 「国際感覚」だ。
 
 
 
 
ビジネスは難しい。
海外での展開となると なおさらだ。
 
 
 
良いものを作れば 世界中どこでも それが 日本で評価されるのと 
まったく同じ基準で 受け入れられるかというと 全然違う。
車だって アメリカ市場向けは 同じ車種でも デザインや色、
内装を変え、ブランド名まで変えて 調整している。
ましてや 生活に密着した細かい商品であればあるほど、
アメリカ人のメンタリティーを理解し 
そこにうまくハマるビジネス展開をしなければいけない。
 
 
 
この輪ゴムの場合 日本人のこだわるような 長く使えるとか 
高級素材を使っているなどというコンセプトは 
アメリカでは まったく通用しなかったということだ。
 
 
いや、日本でも売り上げが伸び悩み
アメリカで今 日本人がよろこんでシリーバンドを買っているのだから
国内市場でも 売り方やコンセプトが 完全にズレていたのだろう。
 
 
 
例の日本企業の社長は アメリカでの シリーバンドブームについて
「それでも 型つき輪ゴムにみんなが親しんでくれたらいい」と言うが、 
商売人としては 負け犬の遠吠えでしかない。
意匠権さえあれば 今頃 たいへんな売り上げを記録していたのだから。
 
 
その一方で 実は 彼らが意匠権を持っていなかったからこそ 
型つき輪ゴムは こんなおもしろい商品に生まれ変わり、
アメリカの子どもたちに受け入れられたともいえる。
 
 
日本とアメリカの中小企業の明暗を分けた「輪ゴム」。
あなたは どちらを買いますか?
 
 
 
イメージ 11
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