「日本人学校とインター校はこんなに違うのか」
クアラルンプールのインターナショナルスクールに6才の長女が通い始めたときの最初の印象だ。9才の長男は日本で小学校に通い、マレーシア移住後もクアラルンプール日本人学校に通っているので、日本の小学校には慣れていたものの、親子留学でいざ長女がYear1でインター校に通い始めると学校運営の仕方や教育方針、授業の進め方など多くの点で経験がないことの連続だった。
担任教師からWeekly Updateが届く入学後、最初に驚いたのは担任の先生から保護者宛てに頻繁にメールが送られてくることだ。入学して間もない1~2週間は特に毎日のように今日の出来事や明日の予定、必要な持ち物などのお知らせがメールで送られてきた。さらに毎週金曜日にその週の出来事をまとめたWeekly Updateが届き、レターや教室内の写真などがGoogle Driveで共有される。
宿題についても、その目的や内容が丁寧に書かれているので、家庭でどのような準備や子供への助言が必要なのかがわかる。先生からのコミュニケーションのおかげで、学校と家庭が一体感をもって子供と接することができる。日本人学校にはなかった感覚だ。
慣れない宿題の内容に戸惑う先生から丁寧にコミュニケーションが行われるわけだが、それでも子供に出されている宿題の内容がよくわからないことがある。例えば「服の生地やデザインについて学ぶので、家庭から好きな生地を持ってきてください」また後日、「世界の国の伝統的な服の写真を持ってきてください」という宿題が出された。日本の小学校や日本人学校ではそのような宿題が出されたことはなかったので「それってどんな宿題?どんな授業??」となる。長女本人もよくわかっていないので、この時はよくわからないままとりあえず英語の説明文通りに生地や写真を持っていかせることにした。
後日、1学期の終わりに学校を訪問した時に、この時の宿題の内容がようやくはっきりした。「服の生地やデザインについて学ぶので、家庭から好きな生地を持ってきてください。」という宿題のアウトプットはこちら。2人1組になって、服のデザインを考え共同作業で作り上げたそうだ。
こちらは「世界の国の伝統的な服の写真を持ってきてください」というの宿題のアウトプット。クラスにはマレー系、中華系、アジア各国だけではなく、ヨーロッパや北米の出身の子もいて、まさに多国籍。写真を見ながらいろいろな国や文化があること、自分の国ではどのようなときに伝統的な服を着るのかを話し合ったそうだ。
多民族クラスでのYear1(一年生)の始まり方このように長女が通うクラスでは多様なバックグラウンドをもつ生徒がいることが前提なので、生徒同士で話し合わないとお互いの理解が進まない。まずは自分を表現したり意見を言ったり、クラスメート同士で積極的にコミュニケーションを取りお互いの違いを理解するところから始まった。
改めて先生からのメールを読み返すと、先ほどの宿題も生徒1人1人が持つ個性や自分の国や文化を尊重することを学ぶためアクティビティだったことがわかる。
また、これらの宿題やアクティビティを通して、「自ら調べること」「仲間と相談しながら行う共同作業の大切さ」「自分の国や文化を説明できる力」「デザインセンスや表現力」などを養うことも目的にしているという。
生徒も先生もコミュニケーションから始まる生徒が多民族なら父兄も多民族。親世代が受けてきた教育内容もかなり違うと想像される。親が経験してたことであれば何となく想像できるけれど、マレーシアのインター校ではどのような目的でどのような授業が実施されているのかを明示的に父兄に示していかなければ、学校と家庭の連携もできないし、父兄からの理解も得られない。だから先生も父兄とのコミュニケーションを重要視しているのだろう。先生と生徒、生徒同士、そして家庭も交えて多民族環境でのコミュニケーションの大切さを学ぶ機会となっている。
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Issued by 「マレーシア ソーシャルナビ 2016」