先日,「大絶滅を生き延びた恐竜」の話の時に少し触れましたが,
昨年僕の出した論文は少しセンセーショナルな部分を含んでいました.
それは,B-M境界という最も新しい地磁気逆転イベントの年代値が修正されるかもというものです(B-M境界:Brunhes-Matuyama boundary).
まあ細かい話なんですけど,僕の論文では,
このB-M境界の年代が一般的に言われている約78万年前でなく,約77万年だとしました.
たかだが1万年の違いとはいえ,我々は数千年スケールの前後関係から過去の気候変動システムなどを議論しているわけでして,意外に影響は大きいんです.
けっこう自信作なんですけど,もしかしたら業界に何もインパクトを与えぬままスルーされてしまうかもなあという心配もありました(ます).
ただ,昨年末に発行されたアメリカの大先生の論文でもこの話題が触れられていて,
僕の論文も引用されていました.
(G-cubedという雑誌,僕も2008年にここから論文をだしている)
投稿日は僕の論文の発行以前なので,どうやら査読後に引用を加えてくれたみたいです.
感謝.
先日も紹介しましたが,僕の論文の重要なポイントは,
同じ地磁気逆転イベントの地質記録なのに,火山岩の放射年代値と,他の年代指標(海底堆積物と氷床コア)から求めた年代値が明らかに違うというものです.
アメリカの大先生の見解も僕と同じで,「Ar-Ar法による放射年代値が他の手法よりも古い年代値を出しているのではないか?」というものです.
この論文の共著者には,放射年代法でかなり著名な研究者の名前もありますし,これはナカナカ心強い論文が出たなあと嬉しいです.
(日本人のぺーぺーの論文だけだと話題にならないかもだからね)
さて,この話題のキモは,一般的には圧倒的信頼性を持つ放射年代値だけれども,
現在のAr-Ar法で一般的に使われている標準試料の年代値(Kuiper et al., 2008)は,
実は海底堆積物の年代値から補正して求められていると言うことです.
放射年代値というと,放射改変という絶対的な物理現象を使っているから,その信頼性は高いと考えるのだけれど,実際は元素によってその信頼性・精度は違うということですね.
こういう経緯があって,先日の「大絶滅を生き延びた恐竜」については,
「現時点でU-Pb法とAr-Ar法を使って,6000万年以上前の数十万年の前後関係を決めるのはちょっと厳しいんじゃないかと思うわけです.」
というコメントにつながるわけです.
以上の様な話を,年末年始のヒマな時間を使って和文論文にまとめました.
そして,研究仲間やPD時代の先輩からコメントを頂き修正を加え先日無事に投稿しました.
これから査読があるわけですけど,秋には皆様の目に届くと良いなあと思っております.
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