隕石衝突.
それは宇宙空間から隕石が飛来して地表に衝突するという劇的なイベントで,その証拠というと当然ながらクレーターが真っ先に思い浮かぶ.しかし,クレーター地形は浸食・植生などの影響によって時間を経ると失われ,やがて見つけることが困難になっていく.
約80万年前におきた隕石衝突イベントもその一つで,インドシナ半島のどこかに隕石が衝突したと推定されているが(Prasad et al., 2007 JGR),クレーターの正確な位置は分かっていない.では,一体どうして隕石衝突がおきたことが分かるのだろう?
実は,隕石衝突イベントの際には,その衝撃で通常地上では見られない珍しい鉱物などが作られる.マイクロテクタイトもその一つで,衝突の際の高温で上部地殻が融解し生成されるガラス玉のような鉱物だ.隕石衝突の際には,このマイクロテクタイトがクレーターを中心としてかなりの広範囲に飛び散る.
過去20年ほどの間に,インド洋から西太平洋,そして遠くは南極に分布する約80万年前の地層から続々とマイクロテクタイトが発見され,その分布からインドシナ半島で隕石衝突があったことが明らかになってきた.
最近,僕はこのマイクロテクタイトを調べている.西赤道太平洋の深海約4400 mから採取された約80万年前の泥を弱酸で洗い,ふるいにかけて顕微鏡を覗くと実に可愛いマイクロテクタイトがコロコロでてくるのだ.
下の写真は初めて見つけたマイクロテクタイト.直径が0.5 mmほどで,じっくり見れば肉眼でも確認できる.
実は,僕は隕石衝突を研究しているのでは無く,地層中にこのマイクロテクタイトがどのくらい散らばっているかを調べている.隕石衝突で飛び散ったマイクロテクタイトの一部は,海洋に落下し海底面に層となって堆積する.一方,海底には底生生物と呼ばれる様々な生き物がいて,この海底面をかき混ぜている(これを生物擾乱と呼ぶ).従って,一旦堆積したマイクロテクタイトもこの生物擾乱よってかき混ぜられて地層中に散らされる.そこで,僕は逆に地層中でのマイクロテクタイトの分布を調べて,この生物擾乱層の厚さを調べているのだ.これには更に目的があるのだけれども,それは別の機会に.
ともかく結果としては,深海の堆積物は約9 cmほど生物擾乱によってかき混ぜられていることが分かった.
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