僕はかなりの上がり症だ.
学会発表などの時には数日前から気が重くなる.
だた,感情が顔に出にくいのと,普段の研究発表では結果を紹介するのみであり,特に感動を呼ぶ必要があるわけではないので淡々と話すことで何とかなってきた.
ただ,英語での発表となると緊張の度合いが違う.しかも淡々となんて話せない.
そこで僕は秘策として,重要な発表(英語)の前には少量のアルコールを含むことにしていた.ちょっと酔いが回ると意外にスムーズに話すことが出来るからだ.
ニュージーランドに来て一ヶ月が立った頃,こちらのGateway Antarctica(意訳:カンタベリー大学南極研究所)で研究発表をして貰えないかと話が来た.
自分の存在や研究について知って貰える絶好の機会だし,僕の研究所とGateway Antarcticaの交流を結ぶ事もこの留学の重要な目的なので,喜んで発表を引き受けることにした.
聞いてみると,発表の場は Gateway Antarcticaが主催する月に一回のセミナーで,南極関連の研究者を一人招いて開かれているらしい.これは予想よりも大きな場かもしれない.
という訳で,これは久しぶりに秘策を用意して,向かわねば.
幸いセミナーは夕方5時からと言うことで,その後のスケジュールにも問題無い.
家から持参した赤ワインを,コーヒーの代わりにこそっと飲んで会場へ向かった.
一人早めに会場入りして,Macをテストし準備を整えると,セミナー担当の学生がやってきた.簡単に挨拶を済ませると,すぐに彼女は会場のセッティングを始めた.
真ん中のテーブルにスナックを並べているので手伝っていたら,次に彼女は冷蔵庫から冷えた白ワインを何本も持ってきた.
あれ?と思っていると,セミナーに参加するスタッフや学生がゾロゾロ入ってきて,挨拶もそこそこにワインやビールを飲み始める...もしかして場所を間違えた?
聞いてみると,こちらではセミナー前には皆でワインなどを飲みながら歓談をする事が多いらしい.知っていれば,わざわざコソコソ赤ワインを飲んでくる必要は全くなかったのに.
さらに,「ワインを飲んだ方が発表は楽だろう?」と,勧められるままにワインを飲んでいたら,発表を始めるまでに随分酔ってしまった.
発表の方はなんとか無事に終わった.
ただ,ちょっと気張って最新の結果を盛り込んだ力作だったのだけれども,クリティカルなレベルの質問は無く,むしろベーシックな部分で既に聴衆の守備範囲を超えてしまったらしい.
もっと一般的な話に持って行った方が良かったか..
とは言え,発表後にもワインを飲み,研究についての話もまあまあ弾んだ.
そして,帰宅する頃には飲み会にでも行ってきたかの様に酔ってしまい,妻に「発表じゃなかったの?」と言われてしまった.
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