アルコムのPhilさんのお題からです。 内容的にもとても読み応えのある、人間が本能として持つ「攻撃性」に関する文章でした。
精読するぞ その15
Philさんの日記は友人限定となっている可能性がありますが、興味のある方は友だち申請されると良いかもしれません。
とてもPhilさんのペースに追いついていけないのですが、私はたまに取り組むだけでも相当勉強になります。
オリジナル英文
To write about human aggression is a difficult task because the term is used in so many different senses. Aggression is one of those words which everyone knows, but which is nevertheless hard to define. One difficulty is that there is no clear dividing line between those forms of aggression which we all deplore and those which we must not disown if we are to survive. When a child rebels against authority it is being aggressive; but it is also manifesting a drive towards independence which is necessary and valuable part of growing up. The desire for power has, in extreme form, disastrous aspects which we all acknowledge; but the drive to conquer difficulties, or to gain mastery over the external world, underlies the greatest of human achievements.
人間の攻撃性について文章を書くことは容易ではない。というのは、この言葉がとても多様な局面で使用されるからだ。 攻撃性という言葉自体は誰もが知っている言葉のうちの一つに過ぎない。にもかかわらずこの言葉を定義することは簡単ではない。難しさの一つに、誰の目にも 明からに非難されるべき攻撃性と、生存のために必要とされる攻撃性について明確な境界線がないということがある。 若者が権力に対して反抗することは攻撃的であるといわれる。しかし同時に、成長過程の一つとして必要かつ重要な独立心の表れと捉えることもできる。 誰もが知っているように、力に対する行き過ぎた欲求は悲惨な側面を持つ。一方で困難を克服し、世の中を支配したいという衝動は人間が偉業を達成する際にも 必要とされる。
オリジナル英文
The aggressive part of human nature is not only a necessary safeguard against savage attack. It is also the basis of intellectual achievement, of the attainment of independence, and even of that proper pride which enables a man to hold his head high amongst his fellows. Without the aggressive, active side of his nature man would be even less able than he is to direct the course of his life or to influence the world around him. In fact, it is obvious that man could never have attained his present dominance, nor even have survived as a species, unless he possessed a large amount of inborn aggressiveness.
人類が持つ本能の一部としての攻撃性は動物レベルとしての攻撃に対する防御として必要である。と同時に、知的に何かを成し遂げ、自立し、人間社会において 適度な誇りを持って生きていくためにはなくてはならないものである。 攻撃性、つまり本能の活動的な側面が欠如してしまうと、人間は生活できなくなるだけでなく、とりまく環境に働きかけることすらできなくなってしまうのであ る。人類が、もしこれだけ大きな攻撃性を持っていなければどうだったであろうか。現在のような支配的な地位はもとより、種を存続させることすらできなかっ たことは明らかであろう。
オリジナル英文
It is a tragic paradox that the very qualities which have led to man's extraordinary success are also those most likely to destroy him. His ruthless drive to subdue or to destroy every apparent obstacle in his path does not stop short at his own fellow; and since he now possesses weapons of unparalleled destructiveness and also apparently lacks the built-in-safeguards which prevent most animals from killing others of the same species, it is not beyond possibility that he may yet cause the total elimination of mankind.
人類をこれほど大きな成功へと導いてきた資質そのものが、裏を返せば人類を滅ぼしかねない資質でもある。なんという悲劇的なパラドックスだろう。 自分の前に明らかに障害が横たわっている場合、これを抑え込み、叩き壊してしまいたいという情け容赦のない衝動に人間は駆られる。そして、それは他者を前 にしても踏みとどまることを知らない。 現在、人類は空前の破壊力を持つ武器を手にした。ほとんどの動物は同じ種で殺し合わないよう本能として持っているというのに、人類は明らかにこの安全装置 を欠いてしまっている。人類が人類を滅亡させてしまう可能性はゼロではないのだ。
authorityはきっちり辞書を引けば良かったのですが、「権威」という訳語がいいですね。私は「権力」という一般的ではあるが、ここでは重過ぎる訳語にとらわれていて、childを「若者」とせざるを得ませんでした。
Philさんの訳はいいですね。 「子どもが権威に反抗するとき,その子どもは攻撃的になっている。」 「basis=なくてはならないもの」としました。
「does not stop short at his own fellow」は意味を取り違えていないか不安で、大意をはずさない形で意訳してしまいました。
Philさんが書いてくれていますが、「short」は副詞として次のような使い方があるのですね。
short:(副)急に,だしぬけに