理系の文章を鍛えたいと思い、『日経サイエンスで鍛える科学英語』という本を購入しました。
何とWeb上でも公開されていますね!なかなか良い本なので購入したことはあまり後悔しておらず、逆にWeb上で原文や日本語訳がテキストとして入手できるので重宝しそうです。
ただし、日本語訳は翻訳を超えて、日本語の読み物として相当読みやすいように手が加えられていると思います。翻訳者のほか、リライターがいるのか、どういう体制で日本語化しているのか興味があります。
例えば今回紹介する記事で、題名はオリジナルの「Enceladus: Secrets of Saturn's Strangest Moon」から「土星の月エンケラドス 噴泉の謎」となっていて、オリジナルにない言葉が入っています。その他にも翻訳を超えた意訳は多々見られます。
その点は注意しながら、早速練習です♪ 土星で6番目に大きい月であるこのエンケラドスがなぜこれだけ注目を集めているのか、Wikiからも抜粋しました♪ ロマンを感じる内容です~
Enceladus: Secrets of Saturn's Strangest Moon / 土星の月エンケラドス 噴泉の謎
カッシーニ探査機の観測により、エンケラドゥスの南極付近の表面で活発な地質活動をしている証拠と思われるひび割れが見つかり、"Tiger Stripes"と名づけられた。エンケラドゥスの表面はこのひび割れから噴出する新しい氷によって絶えず塗り替えられていくと考えられている。さらにひび割れから噴出し ているものが氷の粒子および水蒸気であり、地下に液体の水が存在し貯水池のような役割を果たしている可能性があることをNASAの研究者が発表した[3]。この地質活動を起こす熱源は不明であるが、内部の放射性物質の崩壊や、潮汐力によるエネルギーなどが考えられている。
エンケラドゥス (衛星) - Wikipedia
原文の英語
Enceladus: Secrets of Saturn's Strangest Moon
By Carolyn Porco
When the Voyager 2 spacecraft sped through the Saturnian system more than a quarter of a century ago, it came within 90,000 kilometers of the moon Enceladus. Over the course of a few hours, its cameras returned a handful of images that confounded planetary scientists for years.
Even by the diverse standards of Saturn’s satellites, Enceladus was an outlier. Its icy surface was as white and bright as fresh snow, and whereas the other airless moons were heavily pocked with craters, Enceladus was mantled in places with extensive plains of smooth, uncratered terrain, a clear sign of past internally driven geologic activity.
At just over 500 kilometers across, Enceladus seemed far too small to generate much heat on its own. Yet something unusual had clearly happened to this body to erase vast tracts of its cratering record so completely.
試訳
エンケラドス:土星でもっとも不思議な月の秘密
キャロライン・ポルコ
ボイジャー2号が土星圏内を通過したのは1/4世紀以上前のことだが、この時、月エンケラドスから90,000km以内まで達していた。その数時間に渡ってカメラが捉えた一握りの映像は、何年間も惑星科学者たちを悩ませるものだった。
複数ある土星の衛星を説明するにはいろいろな見方が必要だとしても、エンケラドスについては説明がつかなかった。凍りついた地表は新雪のように白く明るく、その他の大気を持たない月はクレーターだらけだというのに、エンケラドスの地表のあちらこちらでクレーターどころか、どこまでも続く滑らかな平原で覆われていた。それは明らかに過去の内部で起きた地質学的な活動を示している。
エンケラドスはわずか500kmちょっとの直径しか持たず、自分自身で熱を発生するにはあまりに小さすぎるように思われた。だが、明らかに通常では考えることのできない何かが起こり、ここまで完全にクレーターどもの痕跡を消
し去ってしまったのだ。
お手本の日本語訳
土星の月エンケラドス 噴泉の謎
今から四半世紀以上も前,探査機ボイジャー2号は土星系を駆け抜け,衛星エンケラドスまで9万km弱の距離に接近した。その数時間の行程でカメラがとらえ,送信してきた数枚の画像は,惑星科学者を長年にわたって困惑させ続けた。
多様な土星の衛星の中でも,エンケラドスは際立っていた。大気を持たない衛星の表面はクレーターで覆われ,ひどいあばた面をしているものだが,エンケラドスの氷で覆われた表面は新雪のように白く輝き,平坦でクレーターのない大平原が広がっていた。これは,かつてエンケラドスでその内部が引き起こす地質活動があったことを物語っていた。
直径500km程度のエンケラドスはあまりに小さすぎ,活動源となるような十分な熱を自らは生成できないとみなされていた。それにもかかわらず,クレーターを広範囲にわたって完全に消し去るような不可思議な出来事が,明らかにこの天体で起こっていたのだ。
「Enceladus was mantled in places with extensive plains of smooth,...」においてin placesとあるので地表全体がスムースではないのでは思い、「エンケラドスの地表のあちらこちらで」としました。
お手本ではこのin placesのニュアンスはあまりいれられていませんね。実際にはクレータらしきものもありますね。オリジナルの著者がin placesを使った意図をさらに考えてみたいと思います(ちなみに、下写真はWikiより、地球との大きさ比較のため人為的に並べられています)