そこは真っ暗な闇の中。
おいらの他にはもう一人の男がいた。
彼は夜中にもかかわらず辺りを歩き回り
そして、暗闇から消えた・・・。
その時、おいらはベッドで横になっていた・・・。
ドイツ駐在時代の事。
あまりにも出張続きでドイツにあった自分の
フラットにも帰ってこれない時があった。
なんせ、ドイツ→フランス→デンマーク→ヨルダン
→英国→ドイツの順番で出張してたんで体が
もつわけなかった。
ドイツに帰ってきた時、正直気持ち悪かった。
次の日、体がいうことを利かないうえに高熱をだし
それでも頑張って電話だけ事務所にした。
電話中にどうやら応答不能になったらしく
それを心配した事務所の人がおいらのフラットに
来た。
事務所の人達がおいらのフラットのチャイムを連続で
押し続け、おいらは気がついた。
携帯も鳴り響いていた。
携帯に応答すると、「外にいるから、はよ開けろ!」
重い体を引きずって、フラット入り口のドアを開け
彼らはおいらの部屋まで来た。
そして、車に担ぎこまれ病院へ直行。
病院に着き、症状を聞かれた後に院長の一言。
「今日は泊まりなさい。」
飯なんか食べれへんかった。
その為に点滴をぶち込まれる!
初めての点滴やった。それも、異国の地で。
隣にはお前ホントになんかあったんか?
と、思えるような元気なドイツ人のにーちゃんが
おいらの先に入院しておった。
そして、夜。
にーちゃんはごそごそとなにやら始めた。
そして、個室に入ると「シャーーーーッ!」という
勢いの音と共にシャワーを浴びだした。
そん時のおいらは2本目の点滴を腕に差し込まれていた。
にーちゃんはシャワーを浴びる終わると速攻で着替え
支度をしおいらのいた部屋から出て行った。
残るのはおいら一人だけ。
最後の3本目の点滴を差し込まれた。時計の針は夜中の1時半。
今でも鮮明に覚えている。
それはなぜか。タバコがどうしても吸いたくなった。
「眠ろう!眠ってしまえ!全ては忘れる。」
よけい眠れへんかった。
「羊が一匹、羊が2匹、羊が3匹、羊が・・・3万4千5百!
羊が3万4千5百やって!凄いなー!」
誰もおらん部屋で何独り言いっとんねん!
しかし、タバコは自宅にあった。
売店なんざ開いてるわけも無く、タバコの自販なんか
病院にあるわけでもなく・・・。そこで考えた!
抜け出す!病院を抜け出した。
それは最後の3本目の点滴が終了した瞬間。
ナースが来て、器具を片付けた。
シーンと静まり返った病院を速攻で出た!体が軽かった。
めっちゃ体が軽かった。そりゃそうや、何も食うてへんもん。
外を出るとまだ真っ暗やった。
病院からフラットまでは走って20分の距離。
自分の部屋に入りタバコとライターを取った。
また走って病院に戻った。
病院の入り口でタバコを2本吸った。
「あー快感!」いっとる場合か!アホか俺。
そして病院の部屋に戻った。誰にも気付かれへんかった。
完璧やった!多分やけど・・・。
その朝、何事も無く何も聞かれず無事退院できたおいら。
家に帰ってビックリしたのは体がボクサー体系になっていた事。
必要以上の出張の多さと、あまり飯を食さなかった為に予想以上に
体が引き締まっておった。サッカー仲間にもビックリされた。
嬉しいのかなこれって?
しかしまー、病院抜け出しようバレんかったなとつくづく思った。
ラッキーやったな。
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