道を歩いていると点々と赤いものが目に入った。
なっ!なんじゃこりゃ〜〜っ!
喧嘩して誰かが血を流したのか?
辺りを見回す。ゲッ!一人の男が口から血を道に
吐き捨てていた!
何食わぬ顔して急ぎ足で追いかける。彼の横に並んだ。
ぐぉーっ!口のまわりが真っ赤やないの!
気がつくと至るところに口から血を吐き捨てる奴らが
いっぱいおるやないの!
病院急いで行かな、手遅れになるであんた達!
檳榔(ビンロウ)ヤシ科の植物
彼らが口から吐き出していた赤い物体の正体。
そう、それは台湾へ仕事で行った時の出来事。
まだ2月の寒い時期に台湾の台中へ行った時、客先の一人が
汗をかきながら口を動かしていた。
ガムでも噛んでいるのかと思って気にもしていなかった。
が!その瞬間彼も口から赤い液体を吐き出した。
なんじゃこりゃ?
一緒に帯同していた台湾の代理店社員に聞いてみた。
この人日本語バリバリ喋れるちょっとタモリに似た背が小さく
気の良いおっちゃん。
そしてビンロウという物をそこで始めて知った。
このおっちゃんの話だとビンロウとはある意味麻薬的な作用が
あるらしく興奮したり発汗作用があったりするとの事。
木の実を口の中に含んで噛み砕く。数秒後、噛みタバコORガムの
ようにクチャクチャと噛みだす。
唾液がみるみるうちに赤くなり、ぺっ!と吐き出す。
唾液は飲んじゃいけないんやって。
あまり食べ過ぎると今度は柑橘系の酸っぱい物が苦手になると
いっておった。
一個試してみろといわれ、口に含んだ瞬間‥‥。
ごめんおいらには無理やこれ。
変な味がして噛み砕く前に申し訳なかったがビンロウに
さようならをした。ゴミ箱行き。
それを平気で客先の連中は噛んでおった。
口のまわり真っ赤っか。
客先には当時若干14歳の少年が1人働いていた。
こいつも中々良い奴で言葉の壁を越える事が出来た。
(ボディーランゲージ)
多分その当時流行っていたのだろう、襟足が長かった。
そして客先のおっちゃんのパシリでもある。
彼はおっちゃんに頼まれ缶コーヒーを買いに行かされる。
おっちゃんはタバコが切れたらしく、襟足長雄くんにパシらせた。
襟足長雄くんが買ってきたのはタバコとビンロウ。
おっちゃんニコニコしながらタバコを吸う前にビンロウ。
一服前の一服。健康に悪そう。
おっちゃんはおいらに「KODOMO、KODOMO」と襟足長雄くんを
指差していた。
だから、襟足長雄くんはタバコも吸えなければビンロウも
噛み砕けるお年頃ではなった。
あれから18年経過している。襟足長雄は32歳。
彼もまたタバコを吸ってビンロウを噛み砕いているのだろうか。
ペッ!て吐き出しているのだろう。きっと。
海外赴任時に必要な予防接種や健康診断が可能な全国のクリニックを紹介しております。