ジョリーちゃんの両親である ジョイスとパトリックは がんばった。
二人とも 決して 裕福とはいえない家庭の出身だったが
パトリックは 高校でアメフト部に入り 名門大学に進学。
リーマンブラーズや ゴールドマンサックスといった大企業を渡り歩き
NY郊外に 大きな一軒家を構えるまでに のし上がった。
数年前には 自ら会社を興し リーマンショックもなんのその。
経営者として ますます 羽振りがよくなった。
娘の バーミツバパーティーは 親戚への
自分の成功物語を 披露する場でもある。
パトリックは ジョリーちゃんのために 地域でもっとも歴史がある
名門クラブの会員になれるよう 彼女が生まれてから13年間
必死で 財力と人脈を築いてきた。
そして ついに ジョリーちゃんが12歳になった去年、
名門クラブの会員権を 手に入れたのである。
（名門クラブの会員になるのは それぐらい大変）
一方 美人妻の ジョイスは 1年がかりで パーティーの準備に 奔走していた。
ドレスは 髪型は 音楽は？
料理は フルコースのどれも 納得のいくものでなければならなかったし
会場の テーマカラーも決めなければならない。
テーブルクロス ナプキンの色は？
センターの花は？
オーダーメイドのドレスを作るために 採寸や仮縫いに
ジョリーちゃんを連れて 走り回る。
ゲストのリストアップに 席順。
お返しの品々。
そして 当日 やってくる 親戚の宿の手配・・・・。
私達が泊まりに来ていた夏の時点でも
分厚い資料を片手に あちこちに打ち合わせへと走り回り
思春期の娘が 「あれは いやだ。 これが したい」というのを
なだめたり すかしたり・・・・。
傍で見ていても 大変そうだった。
私達が 帰った 秋ごろには
プロのカメラマンを自宅によび
バーミツバパーティーで見せるスライド用に
ジョリーちゃん本人と 家族の写真を たくさん撮った。
その写真も送ってくれたが
家の中や 外で あらゆる角度から 大撮影会。
腕を組んで ポーズしたり 妹と肩を抱き合ったり
木にもたれかかったり
ジョリーちゃんは まるで グラビアアイドルのようでした。
招待状を発注したのも 私達が 滞在していたころだったと思う。
ジョリーちゃんの周りでは
同級生のユダヤ人の友人たちが 続々をバーミツバをしており
そのたびに 招待状が届く。
友人たちを まず 「すごい！」と 思わせるには
この招待状のデザインが 決め手になる。
ジョリーちゃんは 友人たちから送られてきた招待状を すべて ファイルにとじ
文字のデザイン フォント 配置 言葉など 全てを 研究しつくしていた。
誰にも 負けたくない。
招待状を受け取った瞬間に なんて素敵なパーティーなりそうなの！と
友人たちを 圧倒したい。
彼女は 私に 膨大な数のカードを見せながら
自分の招待状のアイデアについて 語ってくれた。
「 こういう字体は クールだと思う 」
「 サマンサのは 一般的な招待状のサイズより大きめなの。 わたしのも
これぐらいの大きさが いいかなって 思うんだ～」
「 あぁ これ！ 私のお気に入り。
わたしも こういう色合いにしようと思っているの」
「 そして これが 私の一番好きなベスト招待状！
見て これ！ 私が 人生で見た中で 一番クールよ！」
見せてもらった 招待状は もはや 紙ではなかった。
色とりどりの プラスチックの板で
サイズは Ｂ５ぐらいと 招待状にしては かなり大きい。
文字は 金色で 彫り込まれていて、
しかも 重っ！
これを 数百人の招待客に 郵送するの？？？
こんな風に 友人たちが１３歳で一斉にパーティーをしたら
そりゃ 見栄の張りあいになるだろうし
友達よりも おしゃれに クールにしたいというのは
１３歳の女の子なら 自然な感情かもしれない。
そこで 「うちは うち！」と 歯止めをかけるのが 親の役目だが
こと バーミツバに限っては 親の暴走が 拍車をかける。
つづく
次は写真つきです
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