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駐在員の配偶者に所得がある場合の対応方法

カテゴリ アメリカ

注)この記事はアメリカの駐在員を念頭に書かれています。アメリカ以外の国では異なることも多くありますのでご注意ください。

今年も申告書シーズンが無事完了しました。会計業界の皆様、大変お疲れ様でした。ぜひ暖かくなった春の日差しの下、疲れ切った心身を回復させましょう。

人事部の担当者さんや駐在員さんたちも申告書の対応お疲れ様でした。質問書や納税の対応が無事完了されたことを祈っております。

とりあえず休みましょう・・・。日本のGWがうらやましい・・・。

さて、今回の記事では駐在員の配偶者に所得があった場合の対応について考えてみたいと思います。

近年共働きが一般的となり、帯同する配偶者の方が赴任地国で引き続きお仕事をされるケースも増えてきております。

厚生労働省の統計によると、2019年の時点で1,245万世帯が共働き世帯となっているようなので、駐在員になった方の配偶者がお仕事されていることは何ら不思議ではない時代となっていると言えると思います。(男性雇用者と無業の妻からなる世帯は582万世帯)

図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移
令和2年版厚生労働白書ー令和時代の社会保障と働き方を考えるー図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移を掲載しています。

アメリカの確定申告は夫婦合算が一般的となっており、駐在員の配偶者に所得があった場合は合算して申告することになります。

合算して申告する際にどのような対応方法があるか見ていきたいと思います。そして、それぞれのメリット、デメリットを考えてみます。

勤務先企業の対応

色々なお客様を見させていただいた中で、在米日系企業では主に以下のような対応が取られることが多いようです。

何もしない

確かな統計はありませんが、恐らく「何もしない」企業が現状では一番多いように見受けられます。

駐在員規定等で配偶者の所得にかかる現地での税金に関する規定がない場合は、特に何もしない企業がほとんどかと思います。

「何もしない」場合のメリット、デメリットについて考えてみたいと思います。

メリット 会社の担当者と駐在員の双方に手間がかからない。 駐在員と配偶者にとって、現地での税金を会社に負担してもらえる。

「何もしない」場合、当然ですが申告書を提出して完了となります。「何もしない」わけですので、作業も発生しません。

駐在員と配偶者にとっては、会社が全て現地での税金を負担してくれるのでお得になります。

デメリット 配偶者の所得にかかる税金を会社が負担することで、会社の税コストが増える。 他の駐在員と比較し公平ではない。

配偶者に所得ある場合、当然ながら所得税が発生します。現地での税金は全て会社が負担する場合、配偶者の所得にかかる税金も全て会社が負担することになります。

駐在員と配偶者の税金を会社が負担する場合、会社が税額補填として駐在員の給与所得を認識しなければなりません。そうするとグロスアップが必要となりますので、更に会社の負担額は増えることになります。

また、他の駐在員との公平が保たれない可能性も考えられます。

単身赴任でアメリカに駐在している方の場合、日本で仕事をしている配偶者の所得にかかる税金はもちろん本人負担です。同じ駐在員という立場ですが、配偶者の税金の取扱に差が生じてしまいます。

Tax splitを行う

駐在員規定に「配偶者の所得にかかる現地税金については、個人負担とする。」等の規定が定められている場合は、Tax splitと呼ばれる計算を行うことなります。

このTax splitは、駐在員の所得にかかる税金と配偶者の所得かかる税金を分ける計算となります。

Tax splitを行う場合のメリット、デメリットも見ていきましょう。

メリット 会社は配偶者にかかる税コストを回収することができる。 他の駐在員との公平性を保つことができる。

会社としては、配偶者の所得にかかる税金相当分のコストを回収することができます。

また、他の駐在員との公平性を保つことができるようになります。

デメリット Tax split対象者の確認や計算に手間がかかる。 駐在員と配偶者からの税金相当分の回収業務が必要になる。

確定申告書を提出した後に、人事部の担当者はTax splitの対象者を確認しなければなりません。また、計算も自社で行う場合、計算の手間もかかることになります。

通常の業務だけでも大変な状況なことが多い中で、更に業務が増えてしまうことになります。

(実務上Tax splitを実施している会社は、確定申告の作成を依頼している会計事務所に外注していることがほとんどのようです。)

また、計算実施後に駐在員から税金相当分の金額を回収することになります。

この税金相当分の徴収業務も発生するので、担当者の業務が増えることになります。

合算申告ではなく個別申告とする

アメリカでは、納税者が結婚している場合、原則「夫婦合算申告」で確定申告を行うことになります。

しかし、夫婦それぞれで確定申告を行うことも可能です。(夫婦個別申告)

事前に駐在員の配偶者に所得があることを会社が把握している場合、駐在員の確定申告を「夫婦個別申告」で行うよう規定されている会社もあります。

この場合、駐在員本人分は会社が会計事務所の申告書の作成を依頼し、配偶者は自身で夫婦個別申告として確定申告を行うことになります。

メリット 会社の担当者は手間がかからない。 配偶者の所得にかかる税金分の税コストが増えない。

会社としては、各々確定申告を行ってもらうことになるので、担当者の手間は増えないことになります。

また、配偶者の所得にかかる税金分の税コストも配偶者本人負担とすることで、会社の駐在員にかかる税コストが合算申告よりかからないことになります。

デメリット 配偶者自身で確定申告を行わなければいけない。 事前に会社が把握していなければならない。

会社のサポートが受けられないため、配偶者分の確定申告を自身で行わなければいけなくなります。

アメリカの確定申告は当然英語なので、不慣れな方にとっては非常に負担の大きい作業となると思います。また、会計事務所に依頼する場合、当然費用が発生します。

また、駐在員の勤務先企業は事前に配偶者が働いていることを把握しておく必要があります。こちらを把握していない場合、確定申告書の作成を依頼された会計事務所は夫婦合算申告で確定申告書を作成してしまうかもしれません。

まとめ

今回の記事では、在米日系企業のよくある対応について書いてみました。

配偶者がアメリカでお仕事される際には、事前に勤務先企業の駐在員規定を確認されることをお勧めいたします。駐在員規定がない場合は、ぜひ人事部のご担当者に確認をしてみてください。

確認しないままお仕事を開始されると、後々面倒なことになりかねません。

駐在員の配偶者がお仕事されることについて、税金のコンサルティングが必要な企業担当者様は「お問合せ」からぜひご連絡ください。

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