最近、終身雇用の崩壊について経団連会長やトヨタ自動車社長の発言があり話題になっています。また、年功序列についてもAI関連の新入社員に1000万円以上の初任給を提示する企業が現れるなど、その綻びが話題になっています。今後一般会社員の老後についてかなり厳しい状況になりつつある状況です。みなさんは、以下のような疑問をお持ちではないでしょうか。
ぼくは新卒で日本の大手企業に就職し、その後の会社人生のほとんどを海外で過ごしました。そんなぼくが、日本企業もしくは日本社会のシステムと海外のそれを比較・評価しながら100年人生、定年延長、新卒一括就職、副業(複業)、年金制度の継続性のキーワードを念頭に置いて老後の生活について、お話ししていきたいと思います。
最近の日本の雇用条件についての動きについて etirement_05これまで一般的に考えられてきた定年後の生活の(好ましい)イメージは、以下の通りだと思います。
子供たちは教育を終え、すでに就職している。
退職後、それなりの金額の退職金を受け取り、ローンを終えた持ち家に夫婦二人で暮らす。
基本的に退職金は貯金に回して、厚生年金で生活費を賄う。
介護が必要になれば、退職金と貯金を使い、老人ホームに入り、余生をおくる。
または、持ち家を譲って、子供に介護してもらう。
それが、長寿命化(100年人生)、終身雇用・年功序列の崩壊、公的年金制度への不信感などにより、不確定になりつつあります。まず、厚生年金の給付開始は65歳になり、さらに今後の日本の高齢化・少子化を考えると厚生年金を含めた公的年金全体のシステム自体の継続性に疑問が持たれています。
また、昨今、話題になっている終身雇用の崩壊により、自ら望んでも定年まで同じ企業で就労し続けることができるかも定かでなくなり、たとえ、就労できても年功序列の崩壊により、退職金および就労中の預貯金の確保も不確実になります。これは退職後の老後の生活設計に影を投げることになるでしょう。
前述のように新卒社員の一括・同一条件での就職は、情報処理技術者とくにAIエンジニアの確保のためにまず、賃金の面での条件のばらつきが見られ始め、この傾向は今後一層加速されると思われます。
本来、新卒一括就職、定年制、年功序列などの制度は日本特有のものであり、今後は他の国々が持つ平均的な制度への移管が想像される。
そのような環境の中で、中高年の労働者は生涯学習等により、常に自分の社会的な価値の向上に努める必要性に迫られ、かつ副業による収入の確保等
収入のマルチソース化がリスク軽減のために求められるようになる。
また、このような雇用の不安定化は一般企業の従業員にとどまらず、国や地方自治体の職員にも波及していく可能性がある。その理由はAIを始めと知るIT技術の進歩により、単純な事務作用がRPAにより自動化され、これまでの様に多くの職員を必要としなくなるからである。
公的年金制度の不安定さ同様、日本の公的医療保険、公的介護保険も公的年金制度同様、少子高齢化により、そのシステムの存続自体が危険に晒される可能性がある。
これらの公的システムは近い将来の根本的な改革(多分にそれは受給者に痛みを伴う。)無には存続しえないと考えられる。
また、退職後、老後の生活を安定させるには、貯蓄の充実、退職後の収入の確保、就労時の副業の継続と並んで、支出の削減も重要である。
具体的な手段としては、生活費の高い都市部での生活をあきらめて、比較的生活費の安い地方の中小都市での生活、または思い切って物価の安い東南アジア等の国外移住等が考えられる。