我が研究所は大学院組織も併設していまして,当然大学院生もいて講義もあります.
と言っても学生数は教員よりも少ないと思いますが.
まあ,下っ端の僕は講義の受け持ちはほとんどありませんが,上司の先生は「地形学」の講義をもってまして,受講生もちゃんといます.
先日,この講義の一環として東京西部の地形学巡検があったので参加させて貰いました.
東京都市部というのはほぼ人工物に覆われてしまっていて,元の地形を想像することはなかなか無いと思いますが,実は非常に変化に富んでいて,よく見るととても面白いです.
東京の東部・西部ともに色々と特徴がありますが,今回は研究所がある西部の話.
東京西部の地形は大きく分けて,以下の四つに区分されます.
・狭山丘陵,多摩丘陵,浅間山など(数十万年以前の古い相模川水系の礫層)
・武蔵野面(8万年ぐらい前の温暖期の扇状地)
・立川面(3万年ぐらい前の扇状地)
・現河床低地(最終氷期以降)
巡検では,武蔵野面からスタートして,立川面に降りて,途中で取り残された古い地形面である浅間山を見たあと,現河床面まで行くというコースでした.
スタートは西国分寺駅南口.駅を出た後一路南へ,武蔵野面と立川面の境界を目指します.
段丘崖は雑木林になっていることが多く,とても駅から徒歩10分とは思えませんね.
段丘崖の下には国分尼寺跡がありました.
こういった史跡は湧き水が豊富な段丘崖の下にあることが多いんですね.
段丘を覆うローム層の下位にある礫層が透水層になって,地下水を通している訳です.
下の写真は現在の国分寺.この向かいには国分寺跡があります.
ここから「お鷹の道」という湧水が流れるキレイな遊歩道を歩きます.
昔ながらの家並みとキレイな湧き水が用水路を流れる東京都とは思えない風景.
生け垣の上には蛇(たぶんアオダイショウ)が居ました.
さらに歩き続けて,国分寺駅を目指します.途中渡った野川の上流部.
ここから一旦武蔵野面に上がって,国分寺駅南口に出ます.そして,東側に下って交差点を渡ると,レンタカー屋さんの裏手に東京では珍しく自然の露頭が観察できる場所があります.
(ちょっと見にくいですが)カメラキャップの上が火山灰層.
東京軽石(TP)という約6万年前に起きた箱根火山の噴出物です.
さて,更に東に行って,貫井神社で湧水を見ます.ここでもローム層の下から地下水が湧き出ているのが分かります.
そして,巡検も終盤.ここから進路を南にとって府中方面に進みます.
野川を再び渡って,浅間山へ.
野川は礫層の上を流れているので,河床には川の大きさに似つかない大きな礫があります.
疲れていたのか,浅間山の良い写真がありません.
浅間山では,山を構成している礫を観察しまして,多摩川水系には存在しない丹沢山地の奥から供給されたと思われる火山岩礫を見ました.
そして,最後.
東京競馬場に向かい,最後に立川面から現河床低地へと降りました.
現河床面もダラダラと多摩川に向かって傾斜していますが,もう段丘崖はありません.
このコース.半日歩きっぱなしですが,東京の地形を体で知るとても良い勉強になります.
興味のある方はぜひ長い散歩と思って,体験してみて下さい.
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